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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/04/29 (Mon)
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2011/10/29 (Sat)


魚屋に雪が降る
並んでいる電信柱たちは
パンのように沈黙する
台所の窓辺にサボテンを置いて
今日は何をして過ごそうか
外のアスファルトが
小さな音をたてる
きみの体温も静かに温かい
 

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2011/10/28 (Fri)


交差点で男が信号待ちをしていた
信号が変わるまでの間
男はピアノを弾いていた
肩に蝶が止まった
その衝撃で
男もピアノもバラバラに壊れた
信号が青になると周りの人たちは
慌てて男とピアノの破片を持って渡り
再び組み立てた
ありがとうございました
と、礼を述べてピアノは去っていった
後に残された男は
誰かにもらった桃を
ひどく不味そうに食べた


2011/10/27 (Thu)
 

窓を開ける
雲が見える
昨日のことのように
上り坂を下る人がいる
解熱剤でも飲んだのか
郵便局の職員が
自転車に乗っている
 


2011/10/26 (Wed)
 
 
朝顔が咲いていた
夏の日だった
もらい物だろうか
テーブルの上に
クッキーの缶があった
食べても良いか妻に聞いた
食べても良いと妻は言った
何事もなかったように
パトカーがサイレンを鳴らして
大通りを走って行く
  
 
 
 
2011/10/25 (Tue)


それは、わたし
眠たい壁の一種
舌の裏で
縄跳びをする子供たち
名前の回数だけ跳んで
空想のまま
その間、冷蔵庫に向かって
嘘をつき続ける
アフリカ行きの
切符を手に入れるために
秒針を引きずって歩く時計
それは、わたし
横断歩道の近いところで
生きる順番を間違えてしまった
風船は空白となり
隙間という隙間を埋める
メリットは口笛で触れること
消防署の方から来ました
そう告げて
戸口に立つ郵便ポスト
飛び込むのは、わたし
アフリカの朝焼けまで
貧しい息継ぎを繰り返す
それは、きっと、わたし
 


2011/10/23 (Sun)
 
 
植物群が眠っている
僕の知らない言葉の中で

息を吐き出すように
近所の商店街は
ゆっくりと潰れていった

帰りたい、と父が言う
他にどこに帰るの、と母が言う
帰りたい、と僕もふと思う

帰ろうか、父さん
いつか、帰ろうか
帰ろうか
 
 
 
2011/10/22 (Sat)
 
 
何も無いところに
雨が降り始めている
父はもう誰とも
目を合わさなくなった

僕は今日、やっと
台所の隅でテレビになれた
独り言のように
延々と番組を流し続けた

すべての放送が終わると
父と僕の亡骸は
鉛筆や消しゴムなどと一緒に
筆箱に捨てられた
  
  
 
2011/10/21 (Fri)
 
 
今日、世界は晴れている
引用句を継ぎ足してつくられた飛行場から
貨物便が離陸した
生き物の涙や汚れたシーツ等を積載して

至るところに扉をノックする人がいて
人にノックされる扉があって
何ひとつとして戦争はない
扉は人を殺さない

日向で犬が人の真似をしているけれど
具体的なことは校正で削除されている
もしくは最初から書かれていない
  

 
 
 
 
2011/10/19 (Wed)


青く、白く沈む、夜
そしてそれに属するものたち
 
今日は鶴を折った
 
どうして妻に、そんな
嘘をついてしまったのだろう
  
 


2011/10/17 (Mon)
 
 
影を連れて出かける
ふとした拍子に
私と繋がっている唯一の
糸のようなものが切れて
影はどこかに飛んで行ってしまった
影の無い私は
午後三時くらいの腕時計を見る
  
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *