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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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49
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2007/02/17 (Sat)
咳をしたらたまたま側にいた
隣の課のえむさんが
フルーツのど飴をくれた
えむさんがフルーツのど飴を好きだなんて
初めて知った

えむさんは僕より十歳くらい下の女の子だけど
背は僕より十センチくらい高い
キリンさんのように人より頭ひとつ高くて
時々窓から外を見ている
きっと十センチ上の空には僕の知らない風が吹いていて
えむさんにしか見えない草原が見えてるのだろう
でも人と接するときは上から見下ろすようなことはなくて
なるべくその身体を折りたたむように話す
そして小さなお菓子を勧めてくれたりする

えむさんはこの春に結婚して退社する
婚約者はえむさんより五センチ背が高いそうだ
もうお腹の中には二人の赤ちゃんがいる
順番間違っちゃったね
ってからかうとアハハと笑った
セクハラまがいの失礼な言葉だったのに
アハハと笑った
えむさんの笑顔はいつもいい匂いがする

それから一ヵ月たって隣の課にいくと
えむさんの机の周りは小ざっぱりと片付いてて
えむさんは後任の人に引継ぎをしていた
いつものようにその高い背を折りたたんで
もしかしたらえむさんとは
これから一生話をすることもないかもしれない
つまらない感傷かもしれないけど
えむさんも僕もそれぞれに大切なものを知ってる
大切なものに順番なんてないことも

えむさんがひょいと首を伸ばして
窓の外を見た
誰も見たことのない草原が
明日窓の外からなくなる


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2007/01/12 (Fri)
信号機が故障したので
シマウマがやってきて
代わりの信号になった
白と黒しかない縞模様で
シマウマは精一杯頑張った
多少の混乱はあったものの
車も歩行者もそれに従った
強いものは弱いものをかばい
弱いものはさらに弱いものをかばい
そして誰もが
シマウマを見守り続けた
「優しさ」という言葉では
何も説明できない
そんな日がかつてあった
これからもある
あるはずだ
2006/10/30 (Mon)
夜中、リビングに降りると
テーブルがひとりで
テレビを見ていた
外国の戦争映画だった
たくさんの人が
次々に命を落としていった
リアルなくらい
みな清潔な最後だった
突然テーブルがすすり泣いた
空爆された建物の瓦礫の下に
テーブルの脚らしきものが見えたのだ
2006/09/24 (Sun)
象の飼育係をやめて
バスの運転手になった
象の目は悲しげだ
と言うけれど
乗り降りする人たちも
体のどこか一部が悲しげだった
遠くに行きたかったのだろうか
数頭の象が停留所にいた
知らない顔ばかりだった
乗れないことがわかると
次のバスを待つかのように
みな同じ目をして
うずくまった
2006/09/22 (Fri)
東京行きの列車が
一番線のホームに到着する
 あれに乗ればトーキョーまで行けるのね
娘は言った
 うん、行けるよ
 行きたいな、トーキョー
 この間の日曜日みんなで行ったじゃないか
 うううん、行ってないよ
 大きなデパートで買い物しただろう
 だって、あれ、シンジュクだったもん
その口調も表情も
大人をからかってるふうではなかった
この季節に吹き始める涼しい風が
娘や僕の頬をなでて
遠くに去っていくのがわかる
 シンジュクだったもん
もう一度娘は言った
今度は幼い僕を
からかっているかのようだった


2006/08/17 (Thu)
僕らは空気を育てた
空気を育て空気と遊んだ
外を連れて歩くと
人はそれを風と呼んだ
空気は僕らを食べて育った
食べられて僕らは
その大きなお腹のようなところで
何度も生まれかわった
何度生まれかわっても
手をつなぐことができた
ある日僕だけが
生まれかわらなかった
君は何度も生まれかわり
僕は何度も生まれかわらなかった
君は小さな石に僕の名を刻んだ
お墓みたいだ
僕は笑ったが
マタニティクリニックへとゆっくり歩く
君の後姿が
朝の空気を伝わってくる
2006/08/03 (Thu)
押入れの中で目覚めると
いつものように優しくなってる
手も足もおもいっきり伸ばして
指先の細かい部品までもが
思いやりに溢れている
感謝の言葉は誰に対しても
正確に発することができる
決して争わない
というプログラムは
本当はそんなに難しいものじゃない
けれどそのコードを
自分たちに書き込む術を知らないので
たくさんの人たちが困っている
メガネをかけた少年が
庭で六月の紫陽花を見ている
これから何度その名を呼ぶのか
およそ百年の後
自分が生まれるときには
もうとっくにいないというのに
2006/07/29 (Sat)
砂糖にたかっていたアリを
靴で踏みつけた
おまえは家の子ではない
アリの巣から拾ってきたのだ
前の夜、酔った父は言った
群れは乱れ右往左往し
数十匹は難を逃れ
数十匹は幸せな表情を浮かべたまま
潰れていた
ある夏の終戦記念日
どうして黙祷のように
目を閉じてしまったのだろうか

2006/07/20 (Thu)
飛び込むと
その先には砂漠が広がっていた
課長がいて
砂粒をひとつひとつ数えていた
課長
声をかけてみた
砂漠では名前で呼んでください
と言われたけれど
課長は課長だったので
知っているなかから
生まれて初めて覚えた名前で呼んだ
課長はにっこりと微笑み
僕の名前を読みながら
決裁にはんこを押してくれた
改めて聞くと
美しい名前だった
それから
今日の天気のことや
正しい魚の煮付けの作り方を
教えてくれた
僕が教えてあげられるものは
何も残ってないので
砂粒を数えるのを手伝った
暑いね、と汗を拭った
課長のハンカチの柄を
いつまでも忘れないようにした

2006/07/01 (Sat)
バスに小川が乗ってきた
どこにも流れることのできない小川は
だらしなく床に広がった
立っている人は足を濡らした
座っている人は足を濡らさないように
座席の上に膝を抱えた
大学病院
駅入口
学園前
次々と乗客は降り
小川だけが終点まで乗った
終点は春の野原だった
降りた小川は春の野原を流れた
バスは一匹の魚になると
水の流れにとび込み
運転手だけが後に残された
やがて運転手は製紙工場で働く女性と結婚し
わたしは産声を発した
わたしがもの心ついて
最初に手を振った人だった
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* ILLUSTRATION BY nyao *