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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2007/07/15 (Sun)
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて

席に座り
バスの一番柔らかいところを
かじるわたしたちは
軽くなった分、どこか許された気がするけれど
内緒の話をしている時みたいに
口に広がる幸せは
いつも恥ずかしい

窓を開ける
景色だけがあり
他には何もないことを
ひきつづき景色と呼んだ
毎朝生まれ変わり
それでもわずか百数十センチの背の高さから
地面に落ちることを恐れなければならない
良かった、わたしたちは
窓に開けられることがなくて

それからともすると
降車ボタンは赤く光り
わたしたちを降りていく人が
少しずついるのだった
 
 
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2007/07/15 (Sun)
玄関に傘が一本
ギロチンのように
あった
昔こんなもので
人が酷い目にあったのだ
と信じられないくらいに
静かな朝だった
やがて傘は
扉を開けると
仕事机のような格好になり
走って行ってしまった
そのことをいくら説明しても
わたしの言っていることが
言葉であると
誰も信じてなどは
くれてなかった
 
2007/07/13 (Fri)
水底に
動物園はあった
かつての
檻や
岩山を
そのままにして
いくつかの動物の名は
まだ読めたけれど
散り散りの記憶のように
意味を残してなかった
あなたは月に一度の
刊行物を待つ
かのように
郵便受けの方を
眺めている
穏やかな日和
園内を見て歩く
二人の手は
同じくらいの体温で
繋がっていた
動物園を沈めたのは
ぼくだ
 
2007/07/13 (Fri)
キリンは新婚カップルの取材を担当した
ツルとカメは生き証人として
動物園の歴史を書いた
シロクマは環境問題に
ゾウは動物虐待の実態に
鋭い論調でメスを入れた
羊たちは眠れない子供のために
ただひたすら自分たちのイラストを描いた
月刊「動物園」は
一年と数ヶ月で廃刊となった
編集長のゴリラの投げた灰皿がライオンに当たり
怒ったライオンが隣にいたインパラを
食べてしまったからだった
インパラは朝から喉が痛いと言っていた
ライオンは歯磨きの時に
目を瞑る癖があった
母親に逸れて久しかった

2007/07/09 (Mon)
静かな言葉に騙されて
武器を売り続けた

いくつもの春を泳ぎ
疲れれば
もの言わぬ記号に似ていた

河口に人の死体が流れてくる
知らない人ばかりだった

知っていたとしても
損傷が激しくてよくわからなかった

武器は尖ったところなど
ひとつもないのに
簡単に人を傷つけるのだった
 

2007/07/09 (Mon)
一年ぶりにルゾンに行った
エリーはまだいた
胸元の開いた黒いドレス
すっきりと鎖骨があった
その間からはるか遠く
エッフェル塔が見えた
エリーは携帯で撮った
子供の写真を見せてくれた
子の父である日本人は認知したが
養育費は払ってくれてなかった
家庭があった
エリーにも子供と二人きりの家庭があった
他に何もいらないのにね
エリーは言った
他に何もいらないのにね
マニラにエッフェル塔はなかった
この国にもあるはずなかった
2007/07/03 (Tue)
デパートに難破船が漂着する
甲板をいじくり
あなたは指の先を切った
立体駐車場から汗など
生活、の匂いがする
立体であることはいつも淋しい
家具売り場でかくれんぼをしている間に
誰にも見つかることなく
僕らは大人になった
屋上から見おろすと
高さと命の境目は曖昧に続き
人は空を飛んではならなかった
気がつけばエレベーターしかないデパートで
夏が未完のまま終わっている


2007/07/03 (Tue)
列車の出入り口近く
一番混みあうところ
何かの手違いか
小さな花が咲いてる
どんなに混んでも
人は花を踏まないようにしている
もしこれが花ではなく
うんこだったとしても
誰も踏まなかっただろう
ゆっくりと死んでいくように
毎日を生きている、その
表層の薄い膜のようなところに
花もうんこもある
何かの手違いで
踏みつけられてしまうまで
2007/07/02 (Mon)
ある日ふとあなたは
わたしの優しい母となり
慣れないヒールの高い靴を履いたまま
図書館のカウンターのはるか内側
シチューを煮込んでいる

戸外、三角ポールの静かな
駐車禁止区域に来館者は
車を次々と止め
それでもあなたは笑い
笑い返し
順番にシチューを振る舞い
わたしは背表紙の古い小説の本と
海と間違えて
海洋生物の生態について、を
借りたのだった

本当はわたしがあなたを
産んであげたかった
と、いつまでも言いそびれている
いつかやがて夜になり
瞼と嘘の区別がつかなくなっても
あなたが夢の中で死なないように
見ていると思う
2007/06/30 (Sat)
つぶれたステーキハウスの駐車場に
制服を着た男の子と母親らしき人が立っていた
二人でじゃんけん遊びをしていた
昨日も同じところにいるのをバスから見た
違う遊びを楽しそうにしていた
毎日あのように園の送迎を待っているのだった
一昨日は見なかった
同じ時間に同じ場所にいたのかもしれないが
それを見ている自分がいなかった
喪服を着て違う方面へと向かうバスに乗っていた
その夜は妻に葬儀の話を少しした
特に知っている人でもなかったので
妻は、お疲れさま、とだけ言った
もうその話をすることもないだろう
もししたとしても
平等にやってくる死と同列に並べられ
もはや誰の葬儀かもわからなくなっているのだ
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *