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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2008/03/27 (Thu)
背もたれが
椅子を飲み込んでいく
水槽の言葉で人は話す

たとえ古くても
あなたが好きだ
いつも日なたに
消えてなくならないから

またひとつ閉めらる
ガラスの窓がある
そして代わりに
石を積んでしまう
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2008/03/27 (Thu)
僕の頭の上に
女王様が巣をつくった
重みに耐えていると
紅茶の良い香りがする
きっと紅茶を飲んでるんだろう
「まあ、きれい」
きれいなものは誰が見てもきれいだ
僕はずっと
死んだように目を瞑ってる
2008/03/22 (Sat)
コピー機の隣に
幼なじみが立っていた
靴を片方なくしてしまったと
挿絵のように
静かに泣いていた

右手を左手首のあたりに添えるしぐさは
昔と同じ感じだった
野で摘んできた白い花を
複写して見せた
それから今度都合の良いときに
たくさんの靴を買いに行こうと約束して別れた

あの日の白い花が
ヒメウズだと数年後に知った
もう誰かのために
泣かなくてよかった
2008/03/22 (Sat)
薄く繋がる皮膚の下に
どこまでも空は広がっていた
その空の下には
同じくらいの大きさの街があった
その街で確かにわたしは
皮膚の持ち主だった
だから夕べ
知り合いの人たちに
なるべくたくさん
さよならの手紙に書いた
 
2008/03/17 (Mon)
アシカが来る
明日来る
手作りの案山子を抱えて
遠くはるばる
明石海峡をわたってくる
足からくる
お菓子屋とガス屋の間を
通り抜けてくる
明るい春の陽射しを浴びて
皮膚がゆっくり乾いていく
世界はふと呼吸を止めて
子どものように
少し傾いてる
アシカがアシカである証など
アシカには必要ないことだ
2008/03/15 (Sat)

父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはなかったし
実際に楽しそうには見えなかっただろう

それよりも僕は父の布団に入ることが好きだった
休みの日は早起きして父の布団にもぐりこんだ
良い匂いがした
いま思えば体から分泌される汗とか
そんな類の匂いだったわけだけれど
丁度良い温かさが気持ちよかった

そんなところまで遺伝したのだろうか
休みの日になると娘は朝早く起きて
布団にもぐりこんでくる
正確にいうと僕の、ではなく
妻の布団の中なのだけれど
いい年して恥ずかしいね
とからかっても
知らん顔で寝たふりをする

いい年して恥ずかしいね
いつものようにからかうと
これで最後にするから
小さな声で返事があった
そんな最後の日が僕にもあったはずだった
娘のほっぺたを突っついてる妻にも
今度の火曜日、卒業式

2008/03/13 (Thu)
 
 
街外れのバス操車場の裏に
遊園地はひっそりとあった
中心には音楽を鳴らしながら上へと向かう
ゴンドラのようなものがあった
一番高いところに着いても
近くにある民家の壁や窓しか見えなかった
他には狭い敷地をレールで一周する乗り物や
ロープと丸太で作られた簡単な遊具や
ウサギなどの小動物を触れる広場
などがあるくらいだった
遊園地に連れて行って、と
街の子どもはみな親にせがむけれど
一回行ってしまうと他の楽しい遊びに夢中になった
平日は人影もまばらだった
休日になると大人たちで少し賑わった
乗り物の操作をすることができるのだった
大人たちは列を作って自分の順番を待った
子どものころの
つまらない、という思い出しかないのに
大切なものを愛おしむような手つきで
スイッチを押した
天候の悪い日は休園だった
古びた乗り物に雨はよくなじんだ
誰が世話をしているのか
夏にたくさんの百合が咲く一画があった
勝手に生えているのかもしれなかった
 
 
2008/03/11 (Tue)

小さな神様が
春の雨に打たれていたので
傘をさしてあげた
神様はありがとうを言って
釣竿を垂れると
雨粒の中から
虹色の魚を釣ってくれた
魚は苦しそうに跳ねていたけれど
自分は誰も苦しませることはない
と神様は優しかった
雨が上がって
建物の向こうに本物の虹が見えた
昔、このあたりにも
大きな空襲があった
2008/03/07 (Fri)
ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている

手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる

春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何をすべきだったのか
忘れる遊びに忙しい

離れたところ
裏木戸が風にあたって
古めかしい
ひとり言をしている
2008/03/05 (Wed)
金物店の前の交差点に
洗濯機が横たわっていた
横断中に大型の車にでも轢かれたのだろうか
歪に凹んだ体や散らばった部品に
朝いっぱいの陽射しを浴びて
きらきらと言葉のように光っていた
生死の確認はするまでもなかった
車は避けてとおり
集まり始めた野次馬が
その様子を遠巻きに眺めていた
やがて警察の人と
市の土木作業車がやってきて
きれいに片付けていった
遺失物なのか廃棄物なのか
恐らくそんな話になるはずだが
未明に一人で横断歩道を渡る洗濯機の
行先も理由も
最後まで誰にもわかることはないのだ
翌日、新聞紙の地方版に
事実関係のみの記事が小さく載った
その隣には
県内で今年初めて黄砂が観測された、と
やはり数行あった


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* ILLUSTRATION BY nyao *