プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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背もたれが
椅子を飲み込んでいく
水槽の言葉で人は話す
たとえ古くても
あなたが好きだ
いつも日なたに
消えてなくならないから
またひとつ閉めらる
ガラスの窓がある
そして代わりに
石を積んでしまう
椅子を飲み込んでいく
水槽の言葉で人は話す
たとえ古くても
あなたが好きだ
いつも日なたに
消えてなくならないから
またひとつ閉めらる
ガラスの窓がある
そして代わりに
石を積んでしまう
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僕の頭の上に
女王様が巣をつくった
重みに耐えていると
紅茶の良い香りがする
きっと紅茶を飲んでるんだろう
「まあ、きれい」
きれいなものは誰が見てもきれいだ
僕はずっと
死んだように目を瞑ってる
女王様が巣をつくった
重みに耐えていると
紅茶の良い香りがする
きっと紅茶を飲んでるんだろう
「まあ、きれい」
きれいなものは誰が見てもきれいだ
僕はずっと
死んだように目を瞑ってる


コピー機の隣に
幼なじみが立っていた
靴を片方なくしてしまったと
挿絵のように
静かに泣いていた
右手を左手首のあたりに添えるしぐさは
昔と同じ感じだった
野で摘んできた白い花を
複写して見せた
それから今度都合の良いときに
たくさんの靴を買いに行こうと約束して別れた
あの日の白い花が
ヒメウズだと数年後に知った
もう誰かのために
泣かなくてよかった
幼なじみが立っていた
靴を片方なくしてしまったと
挿絵のように
静かに泣いていた
右手を左手首のあたりに添えるしぐさは
昔と同じ感じだった
野で摘んできた白い花を
複写して見せた
それから今度都合の良いときに
たくさんの靴を買いに行こうと約束して別れた
あの日の白い花が
ヒメウズだと数年後に知った
もう誰かのために
泣かなくてよかった


薄く繋がる皮膚の下に
どこまでも空は広がっていた
その空の下には
同じくらいの大きさの街があった
その街で確かにわたしは
皮膚の持ち主だった
だから夕べ
知り合いの人たちに
なるべくたくさん
さよならの手紙に書いた
どこまでも空は広がっていた
その空の下には
同じくらいの大きさの街があった
その街で確かにわたしは
皮膚の持ち主だった
だから夕べ
知り合いの人たちに
なるべくたくさん
さよならの手紙に書いた


アシカが来る
明日来る
手作りの案山子を抱えて
遠くはるばる
明石海峡をわたってくる
足からくる
お菓子屋とガス屋の間を
通り抜けてくる
明るい春の陽射しを浴びて
皮膚がゆっくり乾いていく
世界はふと呼吸を止めて
子どものように
少し傾いてる
アシカがアシカである証など
アシカには必要ないことだ
明日来る
手作りの案山子を抱えて
遠くはるばる
明石海峡をわたってくる
足からくる
お菓子屋とガス屋の間を
通り抜けてくる
明るい春の陽射しを浴びて
皮膚がゆっくり乾いていく
世界はふと呼吸を止めて
子どものように
少し傾いてる
アシカがアシカである証など
アシカには必要ないことだ


父は毎日仕事で帰りが遅く
平日は構ってもらえなかった
父は日曜日になるとキャッチボールをしたがり
僕はよく公園に連れて行かれた
普段からあまり活発な方ではなかったので
あまり楽しくはなかったし
実際に楽しそうには見えなかっただろう
それよりも僕は父の布団に入ることが好きだった
休みの日は早起きして父の布団にもぐりこんだ
良い匂いがした
いま思えば体から分泌される汗とか
そんな類の匂いだったわけだけれど
丁度良い温かさが気持ちよかった
そんなところまで遺伝したのだろうか
休みの日になると娘は朝早く起きて
布団にもぐりこんでくる
正確にいうと僕の、ではなく
妻の布団の中なのだけれど
いい年して恥ずかしいね
とからかっても
知らん顔で寝たふりをする
いい年して恥ずかしいね
いつものようにからかうと
これで最後にするから
小さな声で返事があった
そんな最後の日が僕にもあったはずだった
娘のほっぺたを突っついてる妻にも
今度の火曜日、卒業式


街外れのバス操車場の裏に
遊園地はひっそりとあった
中心には音楽を鳴らしながら上へと向かう
ゴンドラのようなものがあった
一番高いところに着いても
近くにある民家の壁や窓しか見えなかった
他には狭い敷地をレールで一周する乗り物や
ロープと丸太で作られた簡単な遊具や
ウサギなどの小動物を触れる広場
などがあるくらいだった
遊園地に連れて行って、と
街の子どもはみな親にせがむけれど
一回行ってしまうと他の楽しい遊びに夢中になった
平日は人影もまばらだった
休日になると大人たちで少し賑わった
乗り物の操作をすることができるのだった
大人たちは列を作って自分の順番を待った
子どものころの
つまらない、という思い出しかないのに
大切なものを愛おしむような手つきで
スイッチを押した
天候の悪い日は休園だった
古びた乗り物に雨はよくなじんだ
誰が世話をしているのか
夏にたくさんの百合が咲く一画があった
勝手に生えているのかもしれなかった


小さな神様が
春の雨に打たれていたので
傘をさしてあげた
神様はありがとうを言って
釣竿を垂れると
雨粒の中から
虹色の魚を釣ってくれた
魚は苦しそうに跳ねていたけれど
自分は誰も苦しませることはない
と神様は優しかった
雨が上がって
建物の向こうに本物の虹が見えた
昔、このあたりにも
大きな空襲があった


ぼくの隣
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている
手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる
春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何をすべきだったのか
忘れる遊びに忙しい
離れたところ
裏木戸が風にあたって
古めかしい
ひとり言をしている
静かなきみのポケットに
たぶん幼い
春が来ている
手を入れれば
指先に形のない手触り
必要な幸福は
それで足りる
春になったら
そう言い続けて
ぼくらは今
何をすべきだったのか
忘れる遊びに忙しい
離れたところ
裏木戸が風にあたって
古めかしい
ひとり言をしている


金物店の前の交差点に
洗濯機が横たわっていた
横断中に大型の車にでも轢かれたのだろうか
歪に凹んだ体や散らばった部品に
朝いっぱいの陽射しを浴びて
きらきらと言葉のように光っていた
生死の確認はするまでもなかった
車は避けてとおり
集まり始めた野次馬が
その様子を遠巻きに眺めていた
やがて警察の人と
市の土木作業車がやってきて
きれいに片付けていった
遺失物なのか廃棄物なのか
恐らくそんな話になるはずだが
未明に一人で横断歩道を渡る洗濯機の
行先も理由も
最後まで誰にもわかることはないのだ
翌日、新聞紙の地方版に
事実関係のみの記事が小さく載った
その隣には
県内で今年初めて黄砂が観測された、と
やはり数行あった
洗濯機が横たわっていた
横断中に大型の車にでも轢かれたのだろうか
歪に凹んだ体や散らばった部品に
朝いっぱいの陽射しを浴びて
きらきらと言葉のように光っていた
生死の確認はするまでもなかった
車は避けてとおり
集まり始めた野次馬が
その様子を遠巻きに眺めていた
やがて警察の人と
市の土木作業車がやってきて
きれいに片付けていった
遺失物なのか廃棄物なのか
恐らくそんな話になるはずだが
未明に一人で横断歩道を渡る洗濯機の
行先も理由も
最後まで誰にもわかることはないのだ
翌日、新聞紙の地方版に
事実関係のみの記事が小さく載った
その隣には
県内で今年初めて黄砂が観測された、と
やはり数行あった