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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/12 (Thu)
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2007/12/18 (Tue)
時計は空を飛んだ
時間のことなどすっかり忘れて

町工場の青い屋根と
遊園地の小さな乗り物と
チャペルへと向かう花嫁が見えた
風景はずっと続いているようだった

やがて良い感じのする原っぱに
時計は滑らかな着陸をした
落ち葉を踏んで
乾いた音がした

それから時計として
静かに朽ち果てていく準備を始めた
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2007/12/17 (Mon)
瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている

僕は機関車と同じ匂いのお花畑で
同じくらいにくたびれた自分の名前を
ひとつひとつ埋めるのに忙しい

二人の真ん中ぐらいにある画用紙の中
クレヨンで描かれたくじらがゆっくりと呼吸を失う
夕焼けの色を母親と間違えた子犬が
斜めになったまま吠え続けている
昨日の食卓は想像の域を脱しない
いじりすぎた性器はどこまでも空っぽのまま

壊れたスリッパを二人でもう一度組み立てていく
僕らは恥ずかしそうに
それを新しい思い出と呼ぶだろう
2007/12/16 (Sun)
乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう

今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど

もう誰も
あなたを必要としていない
ただあなたを見守る人たちがいて
本当は見守られているのだ、と
知っている人たちがいるだけ

手を休めて
雪のふくらんでいるところを眺めている
そんな何気ないしぐさまでも
最近は似てきたと自分でも思う
2007/12/09 (Sun)

薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい

消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶように
壊れた時計だけが正確な時を刻んでしまうように
正しいものはいつもでも正しさを失わない

逝く人を思い
逝った人を思い
自分の手も言葉も汚すことなく
ぼくはたくさんの人を殺し
たくさんの人に殺される、これからもずっと
それでもまだ
人より優しいものを知らない

2007/12/08 (Sat)

どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた

その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛した

犯人の男の部屋から
空の残りと
一羽のオウムが押収された
オウムは最後まで
人の言葉を覚えることはなかった
2007/11/30 (Fri)
夜明け前の校庭で
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になった手足を動かして
少し咳き込むようになった
 
2007/11/30 (Fri)
父の髭を剃る
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく

その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
このように人は
透き通っていくのだと思う

父も口を上下左右に動かして
よく協力してくれたがやがて
疲れた、という一言で
終了となる

教育には何かと厳しい人だった
教えてくれたことのいくつかは
教えてくれなくてもよかったはずだ


2007/11/25 (Sun)
好きな花の名前を聞かれた
うまく答えられなかった
 
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
 
正しいものと
正しくないものとを
仕分けし続けた
ベランダの声は
明るくてよかった
誰よりも
自分が大事だった
2007/11/20 (Tue)
手すりにつかまる
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたことはあるのに
自分で作ったことはない気がする
もしかしたら明日何かの理由で
作ることになるかもしれない
それは大事なことかもしれない
本当は作ることに
理由なんていらないのだけれど

/昨日離れたところにある
 お墓に行った
 雑草を抜いて
 周りを簡単に掃除した
 今日はきっと
 朝からの雨に濡れてる
 一日そうなのだろう

2007/11/18 (Sun)
 
 
自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら

陸のいたる所では子供たちが
椅子の脚を折り続けている
そうしていればいつの日か大人になれる
そんな優しいお伽噺に
子供たちはいつも守られている

僕はあなたの身体の隙間にそっと指を入れる
どこかにまだ先週末に終わった懐かしい
戦争の記憶があるはずだった
生きる速度で人は死に
死ぬ速度で人は生きた
僕らはその間小さな工場で
確かに数を数えていた

波にさらわれて自転車はハンドルを失った
車輪を失い
サドルを、荷台を、フレームを順番に失っていった
それでも自転車は自転車であり続けようとするので
もう何も答えられない
 
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *