プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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時計は空を飛んだ
時間のことなどすっかり忘れて
町工場の青い屋根と
遊園地の小さな乗り物と
チャペルへと向かう花嫁が見えた
風景はずっと続いているようだった
やがて良い感じのする原っぱに
時計は滑らかな着陸をした
落ち葉を踏んで
乾いた音がした
それから時計として
静かに朽ち果てていく準備を始めた
時間のことなどすっかり忘れて
町工場の青い屋根と
遊園地の小さな乗り物と
チャペルへと向かう花嫁が見えた
風景はずっと続いているようだった
やがて良い感じのする原っぱに
時計は滑らかな着陸をした
落ち葉を踏んで
乾いた音がした
それから時計として
静かに朽ち果てていく準備を始めた
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瞬きをすると虹が溢れてしまう目があるので
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている
僕は機関車と同じ匂いのお花畑で
同じくらいにくたびれた自分の名前を
ひとつひとつ埋めるのに忙しい
二人の真ん中ぐらいにある画用紙の中
クレヨンで描かれたくじらがゆっくりと呼吸を失う
夕焼けの色を母親と間違えた子犬が
斜めになったまま吠え続けている
昨日の食卓は想像の域を脱しない
いじりすぎた性器はどこまでも空っぽのまま
壊れたスリッパを二人でもう一度組み立てていく
僕らは恥ずかしそうに
それを新しい思い出と呼ぶだろう
笑うと発音しないPを吐いてしまう口があるので
まだ誰にも褒められたことのない君が
冷蔵庫に自分の耳を並べている
僕は機関車と同じ匂いのお花畑で
同じくらいにくたびれた自分の名前を
ひとつひとつ埋めるのに忙しい
二人の真ん中ぐらいにある画用紙の中
クレヨンで描かれたくじらがゆっくりと呼吸を失う
夕焼けの色を母親と間違えた子犬が
斜めになったまま吠え続けている
昨日の食卓は想像の域を脱しない
いじりすぎた性器はどこまでも空っぽのまま
壊れたスリッパを二人でもう一度組み立てていく
僕らは恥ずかしそうに
それを新しい思い出と呼ぶだろう


乾電池が足りない
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あなたを必要としていない
ただあなたを見守る人たちがいて
本当は見守られているのだ、と
知っている人たちがいるだけ
手を休めて
雪のふくらんでいるところを眺めている
そんな何気ないしぐさまでも
最近は似てきたと自分でも思う
と昨夜寝言を言ったあなたは
夢の中で久しぶりに
何を作っていたのだろう
今日は朝から雪が降ってる
あなたの故郷のように
たくさんではないけれど
もう誰も
あなたを必要としていない
ただあなたを見守る人たちがいて
本当は見守られているのだ、と
知っている人たちがいるだけ
手を休めて
雪のふくらんでいるところを眺めている
そんな何気ないしぐさまでも
最近は似てきたと自分でも思う


薄い網戸の向こう
何かの割れる音がする
今日は朝から寂しいものが降っているから
話しかけるみたいに一日を生きたい
消えていくシャーペン工場で作られた最後の一本が
同じ価格で店頭に並ぶように
壊れた時計だけが正確な時を刻んでしまうように
正しいものはいつもでも正しさを失わない
逝く人を思い
逝った人を思い
自分の手も言葉も汚すことなく
ぼくはたくさんの人を殺し
たくさんの人に殺される、これからもずっと
それでもまだ
人より優しいものを知らない


どこまでも伸びていく高層ビル
の死体が落ちていた
凶器の不完全な空が
垂直に突き刺さっていた
その空は途切れ途切れに
けれど果てしなく広がっている
という噂話を
人々はこよなく愛した
犯人の男の部屋から
空の残りと
一羽のオウムが押収された
オウムは最後まで
人の言葉を覚えることはなかった


夜明け前の校庭で
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になった手足を動かして
少し咳き込むようになった
父が賞状を受け取る練習をしている
もう賞状なんて
誰からももらえるはずないのに
ひとつひとつの段取りを
生真面目に確認している
毎日この時間になると
不自由になった手足を動かして
少し咳き込むようになった


父の髭を剃る
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく
その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
このように人は
透き通っていくのだと思う
父も口を上下左右に動かして
よく協力してくれたがやがて
疲れた、という一言で
終了となる
教育には何かと厳しい人だった
教えてくれたことのいくつかは
教えてくれなくてもよかったはずだ
一週間たった柔らかいのを
電気で剃るのは難しい
首など歯のあたりにくい所は
よく伸びる皮をひっぱて剃っていく
その薄くなった皮膚の下に
赤くて細い血管が透けて見える
このように人は
透き通っていくのだと思う
父も口を上下左右に動かして
よく協力してくれたがやがて
疲れた、という一言で
終了となる
教育には何かと厳しい人だった
教えてくれたことのいくつかは
教えてくれなくてもよかったはずだ


好きな花の名前を聞かれた
うまく答えられなかった
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
正しいものと
正しくないものとを
仕分けし続けた
ベランダの声は
明るくてよかった
誰よりも
自分が大事だった
うまく答えられなかった
スリッパを壊して
水に浮かべていく
溺れてみたかった
あのあたり、と呼ばれる
あのあたりで
正しいものと
正しくないものとを
仕分けし続けた
ベランダの声は
明るくてよかった
誰よりも
自分が大事だった


手すりにつかまる
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたことはあるのに
自分で作ったことはない気がする
もしかしたら明日何かの理由で
作ることになるかもしれない
それは大事なことかもしれない
本当は作ることに
理由なんていらないのだけれど
/昨日離れたところにある
お墓に行った
雑草を抜いて
周りを簡単に掃除した
今日はきっと
朝からの雨に濡れてる
一日そうなのだろう
手すりのある国に生まれて
偶然とか必然とか
都合のよい言葉で
意識が今ここにある
手すりに指紋をつけた日があり
手すりの指紋を消した日がある
好んで手すりの話をしたことはあるのに
自分で作ったことはない気がする
もしかしたら明日何かの理由で
作ることになるかもしれない
それは大事なことかもしれない
本当は作ることに
理由なんていらないのだけれど
/昨日離れたところにある
お墓に行った
雑草を抜いて
周りを簡単に掃除した
今日はきっと
朝からの雨に濡れてる
一日そうなのだろう


自転車はその肢体を空気の隅々まで伸ばし
僕らのささやかな会話は言葉を放棄して
水の海になってしまった
沖へとゆっくりこぎだして行く
すでに失ったペダルを懸命に踏みながら
陸のいたる所では子供たちが
椅子の脚を折り続けている
そうしていればいつの日か大人になれる
そんな優しいお伽噺に
子供たちはいつも守られている
僕はあなたの身体の隙間にそっと指を入れる
どこかにまだ先週末に終わった懐かしい
戦争の記憶があるはずだった
生きる速度で人は死に
死ぬ速度で人は生きた
僕らはその間小さな工場で
確かに数を数えていた
波にさらわれて自転車はハンドルを失った
車輪を失い
サドルを、荷台を、フレームを順番に失っていった
それでも自転車は自転車であり続けようとするので
もう何も答えられない