プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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ただそらだけがある
ひとも
たてものも
どうしょくぶつも
わすれて
すみずみまで
ひろがっている
きおくのそとがわから
ことりがいちわきて
はばたこうとすると
そらはきように
みずからをたたみ
どこかに
とんでいってしまった
ひとも
たてものも
どうしょくぶつも
わすれて
すみずみまで
ひろがっている
きおくのそとがわから
ことりがいちわきて
はばたこうとすると
そらはきように
みずからをたたみ
どこかに
とんでいってしまった
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ウォーリーを探せ、と言われて
ウォーリーを探しに行ったまま帰ってこない
そんな少女の話を以前しました
かどうかは定かではありませんが
電話帳に海という字を見つけては
泣きながら印をつけていたのもその少女でした
少女は海に行ったのでしょうか
いえいえ少女はウォーリーを探しに行ったのです
見つからなかったのか
行く途中もしくは帰る途中で迷子になったのか
それとももう生きてないのか
いくつか要因を列挙すれば
どれかに当てはまってしまうのでしょう
ウォーリーならさっき
本屋で週刊雑誌を立ち読みしているのを
見かけたのですが
ウォーリーを探しに行ったまま帰ってこない
そんな少女の話を以前しました
かどうかは定かではありませんが
電話帳に海という字を見つけては
泣きながら印をつけていたのもその少女でした
少女は海に行ったのでしょうか
いえいえ少女はウォーリーを探しに行ったのです
見つからなかったのか
行く途中もしくは帰る途中で迷子になったのか
それとももう生きてないのか
いくつか要因を列挙すれば
どれかに当てはまってしまうのでしょう
ウォーリーならさっき
本屋で週刊雑誌を立ち読みしているのを
見かけたのですが


窓にはまった網戸を見ていた
それからちゃぶ台の上のスプーン
同じ方向に三本並べられていた
これママの、これパパの、これぼくの
暑かったと思う
そのことで汗もかいていたと思う
数年経って
鉛筆で自分の名前を初めて書いた
平仮名を全部覚えた後か
それともまだ文字を習う前のことか
忘れてしまったけれど
もう違う家に住んでいた
数回書いてそれから
鉛筆で汚れた手を見ていたと思う
それからちゃぶ台の上のスプーン
同じ方向に三本並べられていた
これママの、これパパの、これぼくの
暑かったと思う
そのことで汗もかいていたと思う
数年経って
鉛筆で自分の名前を初めて書いた
平仮名を全部覚えた後か
それともまだ文字を習う前のことか
忘れてしまったけれど
もう違う家に住んでいた
数回書いてそれから
鉛筆で汚れた手を見ていたと思う


むかし空には大きなバケツがあって
悲しいことがあると人は
そこまで悲しみを捨てに行った
ある日両手いっぱいに悲しみを抱えた大男が
そのバケツをひっくり返して
中身は空の隅々まで散らばってしまった
夜空を見て
星、と子供が呼ぶものの多くは
その時のものだ
余談として
冬から春へ季節が変わるほんの数日
の更に僅かな時間
西の空に輝くいくつかの星をつなげると
さかさになったバケツの形になる
悲しいことがあると人は
そこまで悲しみを捨てに行った
ある日両手いっぱいに悲しみを抱えた大男が
そのバケツをひっくり返して
中身は空の隅々まで散らばってしまった
夜空を見て
星、と子供が呼ぶものの多くは
その時のものだ
余談として
冬から春へ季節が変わるほんの数日
の更に僅かな時間
西の空に輝くいくつかの星をつなげると
さかさになったバケツの形になる


お父さんの背骨の近くを押していく
淋しい箇所がいくつかある
大きくなったら学者かバスの運転手になりたかった
と、よく言っていた
結局学者にもバスの運転手にもなれず
十年前に地方の小さな薬局を退職し
多分これからもなれないのだろう
すべての世話が終わると
お父さんはいつものように簡素な礼を言って
使い慣れた金属製のさじを
口に含む
淋しい箇所がいくつかある
大きくなったら学者かバスの運転手になりたかった
と、よく言っていた
結局学者にもバスの運転手にもなれず
十年前に地方の小さな薬局を退職し
多分これからもなれないのだろう
すべての世話が終わると
お父さんはいつものように簡素な礼を言って
使い慣れた金属製のさじを
口に含む


犬小屋の中でお父さんとお母さんが
おままごとをしています
春の陽が一番良く当たるお庭で
せまいね、と言いながら
それでもきれいな身なりで
プラスチックの食器を並べていきます
きょう、の、ばんご、はん、は、ぎせいどうふ、よ
ゆみちゃん、は、むずか、しい、りょうり、しってる、んだね
お父さんは今日も上手にお母さんの名前を発音します
いぬ、し、んじゃった、ね
しん、じゃっ、た、ね
犬なんてまだ飼ったことないのに
夕焼けを見ながら買ってきた犬小屋の中
手だけはつないでいます
あの、こ、だれだ、ろう、ね
だ、れ、だろう、ね
いつか僕を二人の子として産んでください
そのことで誰も不幸にすることなく
おままごとをしています
春の陽が一番良く当たるお庭で
せまいね、と言いながら
それでもきれいな身なりで
プラスチックの食器を並べていきます
きょう、の、ばんご、はん、は、ぎせいどうふ、よ
ゆみちゃん、は、むずか、しい、りょうり、しってる、んだね
お父さんは今日も上手にお母さんの名前を発音します
いぬ、し、んじゃった、ね
しん、じゃっ、た、ね
犬なんてまだ飼ったことないのに
夕焼けを見ながら買ってきた犬小屋の中
手だけはつないでいます
あの、こ、だれだ、ろう、ね
だ、れ、だろう、ね
いつか僕を二人の子として産んでください
そのことで誰も不幸にすることなく


保育園の窓の外では
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボールに詰めて
裏の川に流します
欠番になった童話は
園長先生が代わりに話を考えます
誰も死なないし
悪い人は必ず最後に良い人になるのですが
園児たちは春のような欠伸をし
拾ってきた牙をこっそり
口の中で転がしたりします
世界童話全集が産卵をしています
孵化したばかりの童話は
粘液で汚れしかも鋭い牙があるので
先生たちがきれいに拭いて
牙を一本一本抜いていくのです
暴れて困るものはダンボールに詰めて
裏の川に流します
欠番になった童話は
園長先生が代わりに話を考えます
誰も死なないし
悪い人は必ず最後に良い人になるのですが
園児たちは春のような欠伸をし
拾ってきた牙をこっそり
口の中で転がしたりします


階段を上っていく
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動物の形の玩具があったはずだが
届かないものを私たちは祈りと呼んだ
ドアを開け屋上に出ると
着古した寝巻きがもう一度きれいに洗濯され
空に向かって羽ばたく訓練をしている
そのように今年もまた春がやってきて
あなたの好きな種類の花がたくさん咲いた
と、独白はそこで終わり
男はひとりベッドに腰掛け外を見ている
ホールには明り取りの窓から差し込む光が溢れ
かつてそれは観葉植物の大きな葉を照らしたこともあった
河口の近くで手をつなぎバスを待っていたとき
足元には確かに雨ざらしになった動物の形の玩具があったはずだが
届かないものを私たちは祈りと呼んだ
ドアを開け屋上に出ると
着古した寝巻きがもう一度きれいに洗濯され
空に向かって羽ばたく訓練をしている
そのように今年もまた春がやってきて
あなたの好きな種類の花がたくさん咲いた
と、独白はそこで終わり
男はひとりベッドに腰掛け外を見ている


振り回せるものを探して歩く
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つからない
長すぎれば人に当たるから危ないし
短すぎれば振り回す充実感がない
向こうから紐のついた玩具を振り回しながら
幼い男の子が走ってくる
丁度良いみたいにたくさん振り回してくる
振り回している、今、というこの日時は
他の誰に奪われることなく
簡単に忘れられてしまうのだろう
間もなくその靴にも日没が訪れる
(付記)
男の子が振り回していたのは
玩具とは別のものだったかもしれない
軽すぎれば振り回す充実感がないし
重すぎれば肩や腰に負担がかかるから危ない
道路の上にも
道路に接するいろいろな敷地や排水路にも
振り回すのに丁度良いものは見つからない
長すぎれば人に当たるから危ないし
短すぎれば振り回す充実感がない
向こうから紐のついた玩具を振り回しながら
幼い男の子が走ってくる
丁度良いみたいにたくさん振り回してくる
振り回している、今、というこの日時は
他の誰に奪われることなく
簡単に忘れられてしまうのだろう
間もなくその靴にも日没が訪れる
(付記)
男の子が振り回していたのは
玩具とは別のものだったかもしれない


公園のベンチに腰をかけ
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と
病院の待合室で聞いたことがある
男の人は新聞を折りたたむと
脇に挟み立ち去った
ベンチにはどこかの身体の一部と思われる
丸い影が置き忘れられている
それもまた幸せになるための手続きであると
どこかでまた聞くかもしれない
新聞を読む初老の男の人の手が
小刻みに震えている
新聞から文字がひとつ
またひとつと落ち
足元で意味とは別のものとなった
そのようにして人は幸せになっていくのだ、と
病院の待合室で聞いたことがある
男の人は新聞を折りたたむと
脇に挟み立ち去った
ベンチにはどこかの身体の一部と思われる
丸い影が置き忘れられている
それもまた幸せになるための手続きであると
どこかでまた聞くかもしれない