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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/14 (Sat)
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2006/11/06 (Mon)
わたしの中を
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
またひとつと開かれ
雨、と誰かが言う

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2006/11/02 (Thu)
僕らは縄跳びをします
回数はとっくに僕らの歳を超えて
縄の外、日が暮れていきます
僕らは縄をなくし
それでも縄跳びは終わることなく
気がつけば僕らは形をなくしています
誰もが僕らのことを忘れ
僕らも僕らのことを忘れていきます
縄跳びだけが縄跳びのまま
いつまでも続きます
遠いところから微かに
けれど力強く
産声が聞こえてきます
2006/10/29 (Sun)
世界の端っこのようなところで
僕と牛とがシーソーをしている
ぎったん、ばっこん、する度に
審判の人が紅白の旗を挙げて
正誤を判定する
あまりにも長すぎたね
どっちがどっちなのか
もう誰もわからなくなってる
本当は何も間違ってないし
何も正しくないのかもしれない
ついでに言えば
僕の感傷が確保されれば
相手が牛である必要もないのかもしれない
もうずっとこのままで構わない
なんて思い始めてる
きみの記憶も
きれいになくなっていく

2006/10/28 (Sat)
すべてを失っても俺はピアノなのだ
鉛筆は言い出した
プラスチックの筆箱の中
いくらなだめても聞く耳を持たない
仕方なく握るところを鍵盤に見立てて
弾く真似をしてみた
もちろん音が出るわけがないので
音階もいっしょに歌った
ああ、俺の音はこんなにも変てこなのか
鉛筆は嘆き悲しんだ
改めてちゃんと歌い直すと
やっと安心して穏やかに笑うようになった
毎日使われ続け鉛筆は短くなり
鍵盤の数を少なくしていったけれど
それを誇りにしていた
やがてわたしに捨てられる日まで


2006/10/27 (Fri)
君が糸電話を作っていた
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
糸をなくしてしまったと言うので
二人で買いに出かける
ついでに食材も少し買った
手をつなぐと
体温という言葉が
あって良かったと思う
たぶん糸電話は
僕が壊すことになるんだろう
ごみ箱には
君が捨てるんだろう


2006/10/22 (Sun)
虹を食べ過ぎてしまったか
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった

2006/10/18 (Wed)
頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた
2006/10/17 (Tue)
駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った
2006/10/08 (Sun)
交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて

2006/10/01 (Sun)
家に帰ると
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる


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* ILLUSTRATION BY nyao *