プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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わたしの中を
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
またひとつと開かれ
雨、と誰かが言う
夜の明ける方へと飛ぶ
一羽の鳥がいる
同じころ
一羽の鳥の中を
どこまでも墜落する
わたしがいるのだ
その日最初の列車が
古い踏切を通過していく
建物の窓はひとつ
またひとつと開かれ
雨、と誰かが言う
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僕らは縄跳びをします
回数はとっくに僕らの歳を超えて
縄の外、日が暮れていきます
僕らは縄をなくし
それでも縄跳びは終わることなく
気がつけば僕らは形をなくしています
誰もが僕らのことを忘れ
僕らも僕らのことを忘れていきます
縄跳びだけが縄跳びのまま
いつまでも続きます
遠いところから微かに
けれど力強く
産声が聞こえてきます
回数はとっくに僕らの歳を超えて
縄の外、日が暮れていきます
僕らは縄をなくし
それでも縄跳びは終わることなく
気がつけば僕らは形をなくしています
誰もが僕らのことを忘れ
僕らも僕らのことを忘れていきます
縄跳びだけが縄跳びのまま
いつまでも続きます
遠いところから微かに
けれど力強く
産声が聞こえてきます


世界の端っこのようなところで
僕と牛とがシーソーをしている
ぎったん、ばっこん、する度に
審判の人が紅白の旗を挙げて
正誤を判定する
あまりにも長すぎたね
どっちがどっちなのか
もう誰もわからなくなってる
本当は何も間違ってないし
何も正しくないのかもしれない
ついでに言えば
僕の感傷が確保されれば
相手が牛である必要もないのかもしれない
もうずっとこのままで構わない
なんて思い始めてる
きみの記憶も
きれいになくなっていく
僕と牛とがシーソーをしている
ぎったん、ばっこん、する度に
審判の人が紅白の旗を挙げて
正誤を判定する
あまりにも長すぎたね
どっちがどっちなのか
もう誰もわからなくなってる
本当は何も間違ってないし
何も正しくないのかもしれない
ついでに言えば
僕の感傷が確保されれば
相手が牛である必要もないのかもしれない
もうずっとこのままで構わない
なんて思い始めてる
きみの記憶も
きれいになくなっていく


すべてを失っても俺はピアノなのだ
鉛筆は言い出した
プラスチックの筆箱の中
いくらなだめても聞く耳を持たない
仕方なく握るところを鍵盤に見立てて
弾く真似をしてみた
もちろん音が出るわけがないので
音階もいっしょに歌った
ああ、俺の音はこんなにも変てこなのか
鉛筆は嘆き悲しんだ
改めてちゃんと歌い直すと
やっと安心して穏やかに笑うようになった
毎日使われ続け鉛筆は短くなり
鍵盤の数を少なくしていったけれど
それを誇りにしていた
やがてわたしに捨てられる日まで
鉛筆は言い出した
プラスチックの筆箱の中
いくらなだめても聞く耳を持たない
仕方なく握るところを鍵盤に見立てて
弾く真似をしてみた
もちろん音が出るわけがないので
音階もいっしょに歌った
ああ、俺の音はこんなにも変てこなのか
鉛筆は嘆き悲しんだ
改めてちゃんと歌い直すと
やっと安心して穏やかに笑うようになった
毎日使われ続け鉛筆は短くなり
鍵盤の数を少なくしていったけれど
それを誇りにしていた
やがてわたしに捨てられる日まで


君が糸電話を作っていた
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
糸をなくしてしまったと言うので
二人で買いに出かける
ついでに食材も少し買った
手をつなぐと
体温という言葉が
あって良かったと思う
たぶん糸電話は
僕が壊すことになるんだろう
ごみ箱には
君が捨てるんだろう
夕暮れまで
まだ時間があるというのに
いったい誰にかけたかったのか
小学校の図工の時間のように
器用な指先で紙コップの底を切り取り
セロハンを貼っている
糸をなくしてしまったと言うので
二人で買いに出かける
ついでに食材も少し買った
手をつなぐと
体温という言葉が
あって良かったと思う
たぶん糸電話は
僕が壊すことになるんだろう
ごみ箱には
君が捨てるんだろう


虹を食べ過ぎてしまったか
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった
のように少し大きい女の人が
愛という字を
消しゴムで消し続けている
あの鉄橋を渡れば私の故郷があるのよ
と指差す先には
窓がないので
景色の良く見える庭まで
長い廊下を歩く
庭に出ると
正体の淋しいものが遠くまでかかっていて
足元には珍しい草があった


頭の上に
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた
鳥が卵を落としていった
やがて卵は孵り
駅が産まれた
列車が到着しても
人のざわめきもない
さびしい駅だった
かすかに潮の香りのする
海沿いの駅だった
その重さで首が少し
めりこんで痛い
夕方の太陽に
僕と駅の影が長く伸びて
またひとつ
言い訳が増えた


駅前で兄を探していたら
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った
母と会った
隣に父がいた
移動の最中だった
兄の居場所を尋ねると
二人ともよく笑った
私もいっしょになって
昔のように笑った
父が小さな扉を指差したので
開けて中に入った
途中小指のしもやけに気づき
少しかいた
階段は数えながら上った
それより多いものを
すぐには思い出せなかった
一番上は駅のホームになっていて
生まれ育った街が見おろせた
私が覚えている以上に
街は細かいところまできちんとあった
汚れた壁の前で
両親と兄とが手を振っていた
本当は私の旅立ちなのだと知った


交差点の向こう側で
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて
指揮者がタクトを振っている
その動きに合わせて
たくさんの仔猫たちが
次々に海へと入っていくのが見える
カタクチイワシの群れが来ているのだ
胡麻漬け
卯の花漬け
つみれにしても美味しいなあ
食べ方は思いつくのに
忘れてはいけない人の名前だけは
どうしても思い出せない
こうして信号待ちしている間に
きっと僕も歳をとっていくんだろう
書き損ねた遺書のように
今日も空ばかり高くて


家に帰ると
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる
なかったはずの、が
いて
言わなかったはずの
おかえりを
言ってくれる
それから
なかったはずの
夕食の支度が始まる
なかったはずの、は
キッチンで月の光のように
つるつるとしている
なかったはずの、が
あまりにきれいなので
僕らはあこがれ
すべてを
なかったはずの、
ことにしてきた
なかったはずの、は
大きくなって
部屋にいたはず、の
君も僕も
もう見えなくなってる