プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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道路に似た人がいたので
間違えて歩いてしまった
慌てて謝ると
よくあることですから
道路のように笑ってくれた
よくあることですから
そう言って
許したことや諦めたことが
かつて自分にもあった
振り返ると
さっきの人はまた長く伸びて
アスファルトを割ったみすぼらしい花が
どちらに咲いているのか
区別もつかなかった
間違えて歩いてしまった
慌てて謝ると
よくあることですから
道路のように笑ってくれた
よくあることですから
そう言って
許したことや諦めたことが
かつて自分にもあった
振り返ると
さっきの人はまた長く伸びて
アスファルトを割ったみすぼらしい花が
どちらに咲いているのか
区別もつかなかった
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頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
かのようにたたずんでいた
窓の外、コンクリートの建物の側で
旗が風にはためいている
どこかの国旗だったはずだ
という記憶だけで
あなたがあなたの形をしている
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
かのようにたたずんでいた
窓の外、コンクリートの建物の側で
旗が風にはためいている
どこかの国旗だったはずだ
という記憶だけで
あなたがあなたの形をしている


下駄箱の中に橋を見つけた
渡りたくなって歩き始める
下を覗き込むと
いる物もいらない物も
等しく川を流れていた
空はどこまでも抜けるように青く
遠くに薄っぺらな虹がかかっている
一度もきれいだと思ったことないのに
見るたび人にきれいだと教えてあげていた
何かを踏んだ痛みで
裸足だったことに気づく
今日はお休みするとあかしさんにお伝えください
冷たい指で電話して言った
靴のことは告げなかったけれど
それで咎められることはなかった
渡りたくなって歩き始める
下を覗き込むと
いる物もいらない物も
等しく川を流れていた
空はどこまでも抜けるように青く
遠くに薄っぺらな虹がかかっている
一度もきれいだと思ったことないのに
見るたび人にきれいだと教えてあげていた
何かを踏んだ痛みで
裸足だったことに気づく
今日はお休みするとあかしさんにお伝えください
冷たい指で電話して言った
靴のことは告げなかったけれど
それで咎められることはなかった


エレベーターに乗ろうとして
エベレストに乗ってしまった
家のローンもあと二十年くらい残ってるのに
まさか自社ビルで遭難するなんて
眠ったまま電車を乗り過ごすこと数回
失恋十数回
上司に怒鳴られた回数数知れず
奥さんを泣かせたことはないけれど
もしかしたら僕の知らないところで
泣いていたのかもしれない
この期に及んでも
そんなことでしか自分を総括できない
子供のころエベレストと言えずに
エレベストと言っていた
そんなこと
もう誰も思い出してくれないんだろう
エベレストに乗ってしまった
家のローンもあと二十年くらい残ってるのに
まさか自社ビルで遭難するなんて
眠ったまま電車を乗り過ごすこと数回
失恋十数回
上司に怒鳴られた回数数知れず
奥さんを泣かせたことはないけれど
もしかしたら僕の知らないところで
泣いていたのかもしれない
この期に及んでも
そんなことでしか自分を総括できない
子供のころエベレストと言えずに
エレベストと言っていた
そんなこと
もう誰も思い出してくれないんだろう


校庭で担任の先生が
カマボコを食べ続けている
僕らのささやかな幸せを願っている
その向こうの少し遠いところには生家があって
大きな窓から僕の可哀想なお父さんが
目を瞑っているのが見える
電気カミソリの音がうるさい
と言ったきりあまり動かなくなった
お母さんはスリッパの修理に没頭しすぎて
飛び出すのが遅くなってしまう
僕らはすべての持ち物に忘れそうな名前を書き
その間、誰の幸せも願わなくてよいので嬉しい
バナナはおやつですか
そんな人に優しい質問だけが
あたり一面の風となって
また一切れのカマボコになる
ハムスター死んじゃったね
埋めて行こうね
遠足が始まれば
こんな遠くまで来るんじゃなかったと
きっと誰か言うんだろう
カマボコを食べ続けている
僕らのささやかな幸せを願っている
その向こうの少し遠いところには生家があって
大きな窓から僕の可哀想なお父さんが
目を瞑っているのが見える
電気カミソリの音がうるさい
と言ったきりあまり動かなくなった
お母さんはスリッパの修理に没頭しすぎて
飛び出すのが遅くなってしまう
僕らはすべての持ち物に忘れそうな名前を書き
その間、誰の幸せも願わなくてよいので嬉しい
バナナはおやつですか
そんな人に優しい質問だけが
あたり一面の風となって
また一切れのカマボコになる
ハムスター死んじゃったね
埋めて行こうね
遠足が始まれば
こんな遠くまで来るんじゃなかったと
きっと誰か言うんだろう


アスファルトの道路になりたい
たくさんの人の足や手に踏まれ
動物の糞尿に汚され
言葉を読むことも書くこともせず
さよならも言わない
それで何が許されるわけでもないけれど
なだらかにカーブしながら消えて
夏の陽射しに融けたりもする
でも本当になったとしたら
自分自身が一番悲しんでしまうんだろう
たくさんの人の足や手に踏まれ
動物の糞尿に汚され
言葉を読むことも書くこともせず
さよならも言わない
それで何が許されるわけでもないけれど
なだらかにカーブしながら消えて
夏の陽射しに融けたりもする
でも本当になったとしたら
自分自身が一番悲しんでしまうんだろう


波はもう台所まで押し寄せている
娘はバシャバシャ水を蹴りながら
学校の仕度に忙しい
妻は膝まで海水につかりながら
朝の牛乳を温めている
もしもの時のために集合場所を決めておこうか
と言うと
家族だから大丈夫よ、と答える
大丈夫かどうかはあるにしても
間違いなく僕らは家族だ
冷蔵庫に海鳥が一羽とまる
かもめ、そう言った時
妻も娘も他のところを見ていて
気づかなかった
娘はバシャバシャ水を蹴りながら
学校の仕度に忙しい
妻は膝まで海水につかりながら
朝の牛乳を温めている
もしもの時のために集合場所を決めておこうか
と言うと
家族だから大丈夫よ、と答える
大丈夫かどうかはあるにしても
間違いなく僕らは家族だ
冷蔵庫に海鳥が一羽とまる
かもめ、そう言った時
妻も娘も他のところを見ていて
気づかなかった


帽子を覗くと
中には都会があった
かぶることも出来ないので
しばらく眺めることにした
頬杖なんてしたのは
いつ以来のことだろう
自分にも重さがあったのだと少し驚く
風変わりな光景があるわけでもなく
淡々と同じような風が吹いてる
誰かが誰かを探す音が聞こえる
こんなに小さな都会なのに
人の命が間違われているのだ
帽子のことは諦めて
むかし諦めたことを
思い出してみる
中には都会があった
かぶることも出来ないので
しばらく眺めることにした
頬杖なんてしたのは
いつ以来のことだろう
自分にも重さがあったのだと少し驚く
風変わりな光景があるわけでもなく
淡々と同じような風が吹いてる
誰かが誰かを探す音が聞こえる
こんなに小さな都会なのに
人の命が間違われているのだ
帽子のことは諦めて
むかし諦めたことを
思い出してみる


パンの耳をもった女の子と
耳のパンをもった男の子が
出会い頭にぶつかった
バスケットの中身は
ぐちゃぐちゃに
離れたりくっついたりで
パンのパンと
耳の耳になった
知っているありったけの言葉で言い争い
それからすぐに仲直りした
二人は手をつなぎ
丘の上にある教会に行くと
お祈りをした
誰もが見たことのあるような
形の小さな祈りだった
耳のパンをもった男の子が
出会い頭にぶつかった
バスケットの中身は
ぐちゃぐちゃに
離れたりくっついたりで
パンのパンと
耳の耳になった
知っているありったけの言葉で言い争い
それからすぐに仲直りした
二人は手をつなぎ
丘の上にある教会に行くと
お祈りをした
誰もが見たことのあるような
形の小さな祈りだった


人形の人の死体が
石積みの河原に落ちていた
右ひじから先が無く
首も変な角度で曲がり
埃と泥にまみれていた
見たことのある人の死体は
どれもきれいに整っていたので
とても汚らしく感じられた
その日初めて
炭水化物、という言葉を教わった
夜寝ると
夢の中に炭水化物が出てきた
春の柔らかい陽射しが
美しく降り注いでいた
石積みの河原に落ちていた
右ひじから先が無く
首も変な角度で曲がり
埃と泥にまみれていた
見たことのある人の死体は
どれもきれいに整っていたので
とても汚らしく感じられた
その日初めて
炭水化物、という言葉を教わった
夜寝ると
夢の中に炭水化物が出てきた
春の柔らかい陽射しが
美しく降り注いでいた