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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/13 (Fri)
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2007/02/11 (Sun)
道路に似た人がいたので
間違えて歩いてしまった
慌てて謝ると
よくあることですから
道路のように笑ってくれた
よくあることですから
そう言って
許したことや諦めたことが
かつて自分にもあった
振り返ると
さっきの人はまた長く伸びて
アスファルトを割ったみすぼらしい花が
どちらに咲いているのか
区別もつかなかった
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2007/02/06 (Tue)
頁をめくる指に
降る水がある
温度とそうでないものとが混在し
それは仄かな懐かしさで
やがて積もっていく
一月の末日
漢方の匂いが漂う診療所の待合室
あなたはまだ誰にも知られていない
かのようにたたずんでいた
窓の外、コンクリートの建物の側で
旗が風にはためいている
どこかの国旗だったはずだ
という記憶だけで
あなたがあなたの形をしている
2007/02/04 (Sun)
下駄箱の中に橋を見つけた
渡りたくなって歩き始める
下を覗き込むと
いる物もいらない物も
等しく川を流れていた
空はどこまでも抜けるように青く
遠くに薄っぺらな虹がかかっている
一度もきれいだと思ったことないのに
見るたび人にきれいだと教えてあげていた
何かを踏んだ痛みで
裸足だったことに気づく
今日はお休みするとあかしさんにお伝えください
冷たい指で電話して言った
靴のことは告げなかったけれど
それで咎められることはなかった
2007/01/31 (Wed)
エレベーターに乗ろうとして
エベレストに乗ってしまった
家のローンもあと二十年くらい残ってるのに
まさか自社ビルで遭難するなんて
眠ったまま電車を乗り過ごすこと数回
失恋十数回
上司に怒鳴られた回数数知れず
奥さんを泣かせたことはないけれど
もしかしたら僕の知らないところで
泣いていたのかもしれない
この期に及んでも
そんなことでしか自分を総括できない
子供のころエベレストと言えずに
エレベストと言っていた
そんなこと
もう誰も思い出してくれないんだろう
2007/01/17 (Wed)
校庭で担任の先生が
カマボコを食べ続けている
僕らのささやかな幸せを願っている
その向こうの少し遠いところには生家があって
大きな窓から僕の可哀想なお父さんが
目を瞑っているのが見える
電気カミソリの音がうるさい
と言ったきりあまり動かなくなった
お母さんはスリッパの修理に没頭しすぎて
飛び出すのが遅くなってしまう
僕らはすべての持ち物に忘れそうな名前を書き
その間、誰の幸せも願わなくてよいので嬉しい
バナナはおやつですか
そんな人に優しい質問だけが
あたり一面の風となって
また一切れのカマボコになる
  ハムスター死んじゃったね
  埋めて行こうね
遠足が始まれば
こんな遠くまで来るんじゃなかったと
きっと誰か言うんだろう

2007/01/11 (Thu)
アスファルトの道路になりたい
たくさんの人の足や手に踏まれ
動物の糞尿に汚され
言葉を読むことも書くこともせず
さよならも言わない
それで何が許されるわけでもないけれど
なだらかにカーブしながら消えて
夏の陽射しに融けたりもする
でも本当になったとしたら
自分自身が一番悲しんでしまうんだろう
2007/01/11 (Thu)
波はもう台所まで押し寄せている
娘はバシャバシャ水を蹴りながら
学校の仕度に忙しい
妻は膝まで海水につかりながら
朝の牛乳を温めている
もしもの時のために集合場所を決めておこうか
と言うと
家族だから大丈夫よ、と答える
大丈夫かどうかはあるにしても
間違いなく僕らは家族だ
冷蔵庫に海鳥が一羽とまる
かもめ、そう言った時
妻も娘も他のところを見ていて
気づかなかった
2006/12/31 (Sun)
帽子を覗くと
中には都会があった
かぶることも出来ないので
しばらく眺めることにした
頬杖なんてしたのは
いつ以来のことだろう
自分にも重さがあったのだと少し驚く
風変わりな光景があるわけでもなく
淡々と同じような風が吹いてる
誰かが誰かを探す音が聞こえる
こんなに小さな都会なのに
人の命が間違われているのだ
帽子のことは諦めて
むかし諦めたことを
思い出してみる

2006/12/31 (Sun)
パンの耳をもった女の子と
耳のパンをもった男の子が
出会い頭にぶつかった
バスケットの中身は
ぐちゃぐちゃに
離れたりくっついたりで
パンのパンと
耳の耳になった
知っているありったけの言葉で言い争い
それからすぐに仲直りした
二人は手をつなぎ
丘の上にある教会に行くと
お祈りをした
誰もが見たことのあるような
形の小さな祈りだった
2006/12/25 (Mon)
人形の人の死体が
石積みの河原に落ちていた
右ひじから先が無く
首も変な角度で曲がり
埃と泥にまみれていた
見たことのある人の死体は
どれもきれいに整っていたので
とても汚らしく感じられた
その日初めて
炭水化物、という言葉を教わった
夜寝ると
夢の中に炭水化物が出てきた
春の柔らかい陽射しが
美しく降り注いでいた
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* ILLUSTRATION BY nyao *