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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/15 (Sun)
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2006/09/28 (Thu)
母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた

たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう

公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう

夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く

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2006/09/16 (Sat)
「生き春巻」です
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けている
どうやって食べるのか尋ねると
私の親友なものですから
泣きそうな顔で店員が答える
言葉で出来た翼のようなものがあったので
鳥、と呼ぶと
生き春巻は開け放たれた窓から
外に飛んで行ってしまった
曇った空は
誰かの作り話のように美しかった


2006/09/14 (Thu)
脚を折りたたんだ正座で
あなたはラーメンを提出し
わたしがお品書きのとおりに
並べていく
合間合間に広がっていくものが
チャーシューの色や野菜に似ていて
わたしたちの中心なのだと気づく
それでわからないことのほとんどは
解決したのだけれど
傘の心配の話をすると
水より重いものなどないよ
そう言って
あなたは微笑んでくれた
あなたがわたしの名前を覚えてから
忘れるまで数年かかった
どうしても人だから
生きたまま寝違える日もある
そうしているうちにも
わたしはまた
細めんを頼んでしまう
2006/09/07 (Thu)
郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね、と言って
ふたを開き
世界中の人に手紙を届けた
遠い国の争いごとには
無関心な世間の人も
ふたりのことは温かく見守った
2006/09/07 (Thu)
バスの停留所に
動物列車がやってきた
乗ろうとするけれど
人間はお断りです、と
動物の運転手に怒られてしまった
レールも無いのにどうして
そう思ってよく見ると
窓から次々と動物たちが降りて
列車の先でレール状に横たわっている
通った来たところはずっと遠くまで
大小様々な形の死骸が連なっている
この跡をたどって行けば
わたしもいつか乗れるのだろうか
世界、と呼べば
とてもきれいな気がする
この世界で

2006/08/30 (Wed)
本が泣いてわたしになる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている

外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った

抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる

2006/08/30 (Wed)
お花畑のようなものでできた駅に
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める
2006/08/25 (Fri)
木、その大きな直立
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものはどこまで届くか
投げて遊んだ
じゃんけんの後出しが得意で
ねこじゃらしをいっぱい集め
珍しい虫や人の話もした
葉、その夕方の揺らめき
覚えている花の名を数えると
足りないのでまた笑った
言葉だけで
すべてが語れる気がしていた
明日見たこともない飛行機が来て
何もかもがなくなっちゃうなんて
知りもしなかった
2006/08/22 (Tue)
香ばしい匂いがして
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう

2006/08/22 (Tue)
あなたの古い帽子の色を
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど

もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから

小さな座卓では
行儀の良い子どもが
おもちゃの形を楽しみ
その手は澄みわたってる

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* ILLUSTRATION BY nyao *