プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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母とふたり
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう
公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう
夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く
ブランコを引きずって歩く
強い陽射しに皮膚は焼かれていく
健康に良いことだ
母は教えてくれた
たくさんの人とすれ違う
みな一様に微笑んでくれる
支柱が肩に食い込んで痛いと言うと
母は困った顔をするけれど
それはいつも
悲しい顔とちがう
公園では親子連れが
ブランコ遊びをしている
その姿は喜びと幸せに満ちている
流れ落ちる汗に溺れそうな僕らも
多分そう見えたことだろう
夏に関していえば
今もそれより他の夏を知らない
ひとり
母の死体を引きずって歩く
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「生き春巻」です
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けている
どうやって食べるのか尋ねると
私の親友なものですから
泣きそうな顔で店員が答える
言葉で出来た翼のようなものがあったので
鳥、と呼ぶと
生き春巻は開け放たれた窓から
外に飛んで行ってしまった
曇った空は
誰かの作り話のように美しかった
店員は言った
メニューを見直す
確かに「生き春巻」とある
生き春巻は時々皿の上でもぞもぞ動くが
その間も気持ちを見透かすかのように
目のようなものでこちらを睨み続けている
どうやって食べるのか尋ねると
私の親友なものですから
泣きそうな顔で店員が答える
言葉で出来た翼のようなものがあったので
鳥、と呼ぶと
生き春巻は開け放たれた窓から
外に飛んで行ってしまった
曇った空は
誰かの作り話のように美しかった


脚を折りたたんだ正座で
あなたはラーメンを提出し
わたしがお品書きのとおりに
並べていく
合間合間に広がっていくものが
チャーシューの色や野菜に似ていて
わたしたちの中心なのだと気づく
それでわからないことのほとんどは
解決したのだけれど
傘の心配の話をすると
水より重いものなどないよ
そう言って
あなたは微笑んでくれた
あなたがわたしの名前を覚えてから
忘れるまで数年かかった
どうしても人だから
生きたまま寝違える日もある
そうしているうちにも
わたしはまた
細めんを頼んでしまう
あなたはラーメンを提出し
わたしがお品書きのとおりに
並べていく
合間合間に広がっていくものが
チャーシューの色や野菜に似ていて
わたしたちの中心なのだと気づく
それでわからないことのほとんどは
解決したのだけれど
傘の心配の話をすると
水より重いものなどないよ
そう言って
あなたは微笑んでくれた
あなたがわたしの名前を覚えてから
忘れるまで数年かかった
どうしても人だから
生きたまま寝違える日もある
そうしているうちにも
わたしはまた
細めんを頼んでしまう


郵便配達員がポストと
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね、と言って
ふたを開き
世界中の人に手紙を届けた
遠い国の争いごとには
無関心な世間の人も
ふたりのことは温かく見守った
駆け落ちをした
四畳半の小さな部屋だった
配達員は毎日
せっせと手紙を書いて投函した
春という字を書くと
いつも何だかくすぐったかった
集配時間には
ごめんね、と言って
ふたを開き
世界中の人に手紙を届けた
遠い国の争いごとには
無関心な世間の人も
ふたりのことは温かく見守った


バスの停留所に
動物列車がやってきた
乗ろうとするけれど
人間はお断りです、と
動物の運転手に怒られてしまった
レールも無いのにどうして
そう思ってよく見ると
窓から次々と動物たちが降りて
列車の先でレール状に横たわっている
通った来たところはずっと遠くまで
大小様々な形の死骸が連なっている
この跡をたどって行けば
わたしもいつか乗れるのだろうか
世界、と呼べば
とてもきれいな気がする
この世界で
動物列車がやってきた
乗ろうとするけれど
人間はお断りです、と
動物の運転手に怒られてしまった
レールも無いのにどうして
そう思ってよく見ると
窓から次々と動物たちが降りて
列車の先でレール状に横たわっている
通った来たところはずっと遠くまで
大小様々な形の死骸が連なっている
この跡をたどって行けば
わたしもいつか乗れるのだろうか
世界、と呼べば
とてもきれいな気がする
この世界で


本が泣いてわたしになる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている
外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った
抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる
わたしになってわたしは
栞を探している
手を伸ばすとその向こうで
むかし弟をしていた人が
雑草を抜いている
外には他にも生きものがいて
窓という窓は
その呼吸でくもっている
半年の間町内会の書記を務め
あとは泣かなくなったその人のために
かわいそうなお話を
たくさん作った
抜いた雑草を栞にしてあげる
その人は言ったけれど
最初からそんなものは生えていない、と
わたしだけが知っているので
とても申し訳なく思う
何度も頭を下げ
あとがきを呟いている
わたしの声が聞こえる


お花畑のようなものでできた駅に
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める
列車が到着して
たくさんの乗客が降りてくる
小さなホームはやがて人で溢れかえり
それでも乗客は降り続ける
もう車内に
人っ子一人残っていないというのに
もちろん夢の中の話にちがいないのだが
誰が見ている夢かわからないので
いつまでも人は降り続けるしかないのだ
列車が溶けてだして
ナマコみたいなものになると
ようやくどこか遠くの方から
夏に生きる虫たちの
発声が聞こえ始める


木、その大きな直立
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものはどこまで届くか
投げて遊んだ
じゃんけんの後出しが得意で
ねこじゃらしをいっぱい集め
珍しい虫や人の話もした
葉、その夕方の揺らめき
覚えている花の名を数えると
足りないのでまた笑った
言葉だけで
すべてが語れる気がしていた
明日見たこともない飛行機が来て
何もかもがなくなっちゃうなんて
知りもしなかった
階段でいっしょになって笑い
二段抜かしをした九歳のように
セミの声だけが
音でよかった
根元に座って
レンガらしいレンガばかりを
レンガと呼び
それ以外のものはどこまで届くか
投げて遊んだ
じゃんけんの後出しが得意で
ねこじゃらしをいっぱい集め
珍しい虫や人の話もした
葉、その夕方の揺らめき
覚えている花の名を数えると
足りないのでまた笑った
言葉だけで
すべてが語れる気がしていた
明日見たこともない飛行機が来て
何もかもがなくなっちゃうなんて
知りもしなかった


香ばしい匂いがして
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう
私を育ててくれた人が
パンになってる
押せばふかふかするくらい
焼きたてだった
少し離れたところに
積まれた下着に向かって
丁寧にお辞儀をしている
どこが手か足かもわからないのに
礼儀だけはいつまでも
忘れることができないのだ
きれいなパンになったんだね
そうなの?きれいなものは皆パンなのね
かつてその人がしてくれたみたいに
下着を一枚一枚たたんだ
さっき見た庭の雑草の類は
明日にでも抜くことにしよう
多分その後で
泣いてしまうんだろう


あなたの古い帽子の色を
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど
もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから
小さな座卓では
行儀の良い子どもが
おもちゃの形を楽しみ
その手は澄みわたってる
新しくし続けている
寂しいことがいつも
正しいこととはかぎらないけれど
もう少し、窓を、開けて
虫たちのお葬式が
時々見えるから
小さな座卓では
行儀の良い子どもが
おもちゃの形を楽しみ
その手は澄みわたってる