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こっそりと詩を書く男の人
  プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/04/26 (Fri)
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2006/11/12 (Sun)
少年と少女のささやきが
午後いっぱいの光をあびて
牛になる
と、牛飼いの男がやって来て
どこかに連れて行ってしまう
もう少年も少女の
ささやきはしない
語られる愛と
愛に似たものは
いつものように良く似ている
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2006/11/05 (Sun)
色をぬる記憶
人に触れる記憶
僕らの言葉が
キスを学習すると
背中にも匂いがあってよかった
バッタのようなものが
死んでいたよ
あのあたり
空も見ないで
2006/10/27 (Fri)
苺ジャムから
苺を引いたら
夕日が残った
誰も地下鉄になど
乗ったことの無い町だった
くすんだ陽射しの中
食品工場の隙間では
猫たちがよく逢い引きをしていた
友だちにもみな両親がいた
愛は算式のように
簡単なものだと思っていた

2006/10/26 (Thu)
夜の明ける頃
苺ジャムの小瓶を積んだ船が
幅広の海へと出港する
その間にも
私たちには忘れていく言葉があり
その言葉を思い出すために
また忘れられていくものがある
産まれてきたしまった
と言う子らにも
幻想とは違う幾ばくかの
幸せを届けてあげたい
2006/10/26 (Thu)
牛のお肉が
ぴとぴとと
月の光に貼りついてる
生きているときは草をよく食み
くるぶしも美しかった
のだと思う
わたしのお肉もきっと同じ色をして
人のことをかつて愛したのも
この肉の中でだった
2006/10/19 (Thu)
弁当を開けると
中に海が広がっている
故郷の海のように
凪いできれいだった
朝の静かな台所で
君がどんなふうにこれを作ったのか
想像しようとしても
後姿しか目に浮かばない
帰れない場所があるわけではなく
帰れない時があるのだ、と
とてもありふれた
僕らの空腹がある
2006/10/14 (Sat)
タイも
ヒラメも
マグロも
みんないました
白いお皿の上で
おそろいのお刺身でした
海みたい
子が言いました
まだ海を
見たことのない子でした
2006/10/08 (Sun)
脈を取ると指先に
セミの鳴き声が
伝わってくる
僕らの身体の中にも
駆け抜けていく夏があったのだ
どうかお元気で
手を振り
手を降り返したあなた
あの日に
友だちでいてくれて良かった
2006/08/31 (Thu)
犬の耳が
ちょうちょになって
飛んで行ってしまった
音が出なくて済むように
静かな玩具を買い与えた
名前を呼んでも
もう振り返らない
それでも涼しい場所は
誰よりも知っていて
風にほんの少し揺れる

2006/08/31 (Thu)
空を飛ぶ音速機のうしろを
分度器が追いかけていく
私たちの経験したいくつかは
戦いと何が違うというのか
今年もまた
美しくこすもすが咲いた
お兄ちゃん
いい歳をして
まだそんな呼び方を
してみたくなる

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* ILLUSTRATION BY nyao *