プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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ノックの音がした
開けるべき扉が無いので
少女は熱のように
野原を走り続ける
発汗を繰り返した後
最近覚え始めた文字に似せて
自分の名を地面に書いた
海の近くに住んでいると
まだ知らなかった
開けるべき扉が無いので
少女は熱のように
野原を走り続ける
発汗を繰り返した後
最近覚え始めた文字に似せて
自分の名を地面に書いた
海の近くに住んでいると
まだ知らなかった
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風が吹いていた
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした
風のように母は声になった
声のように鳥は空を飛んで
鳥のように私は空腹だった
空腹のように
何も欲するつもりはなかったのに
母についていくつか
願い事をした


疲れてピアノが寝ていた
狭いピアノだったので
添い寝をすることもできた
やがて、か
間もなく、か
多分それくらいのことだろう
僕であることを間違えた僕を乗せて
草の列車が発車する
できるだけ一番寒くない格好をして
見送ってあげたかった
狭いピアノだったので
添い寝をすることもできた
やがて、か
間もなく、か
多分それくらいのことだろう
僕であることを間違えた僕を乗せて
草の列車が発車する
できるだけ一番寒くない格好をして
見送ってあげたかった


駅前にはたくさんの
駅が並んでいて
降り出した雨に
みな一様に同じ音をたてている
線路は出鱈目にひかれ
それでも人は
誰かを待ち続けなければならない
世界で一番
悲しく笑うために
駅が並んでいて
降り出した雨に
みな一様に同じ音をたてている
線路は出鱈目にひかれ
それでも人は
誰かを待ち続けなければならない
世界で一番
悲しく笑うために


世界で一番悲しい人が笑った
花のようだった
花の名前と同じ速度で
列車は走った
良い陽が入るね
そう話す乗客たちの袖口は
等しく汚れていた
窓の外にはいつも窓の外がある
ということにみな安心していたけれど
それを希望と呼ぶには
まだ誰の指先も生まれてなかった
花のようだった
花の名前と同じ速度で
列車は走った
良い陽が入るね
そう話す乗客たちの袖口は
等しく汚れていた
窓の外にはいつも窓の外がある
ということにみな安心していたけれど
それを希望と呼ぶには
まだ誰の指先も生まれてなかった


なくしたものと
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のいたるところに
夏は来ていた
木陰で語られる愛は
いつものように眩いばかりだ
もういない人とが
ありえないシーソーで
つりあってる
そんな救いのない話しか
思い出せない
と証言台で男は述べたが
語尾はすでに
空気と区別がつかなかった
街のいたるところに
夏は来ていた
木陰で語られる愛は
いつものように眩いばかりだ


やがて光が空から降りそそぎ
何かの形になると
それはわずかばかりの質感をもって
わたしたちの背中を押す
わたしたちは少し慌てたように
最初の一歩を踏み出す
でも決して
慌てていたわけではないのだ
わたしの隣にあなたがいて
あなたの隣にわたしがいる
ただそれだけの
今日の祝い
何かの形になると
それはわずかばかりの質感をもって
わたしたちの背中を押す
わたしたちは少し慌てたように
最初の一歩を踏み出す
でも決して
慌てていたわけではないのだ
わたしの隣にあなたがいて
あなたの隣にわたしがいる
ただそれだけの
今日の祝い


女は唇から
思い出そうとする
感情的な林檎
その干からびた意味の飛沫を
けれど壁はどこまでも
地平線のように連なり
顔の凹凸は遡及して
闇といわれれば闇かもしれない
の中に失われていく
どれもこれも女にとっては
仕方の無いことだった
思い出そうとする
感情的な林檎
その干からびた意味の飛沫を
けれど壁はどこまでも
地平線のように連なり
顔の凹凸は遡及して
闇といわれれば闇かもしれない
の中に失われていく
どれもこれも女にとっては
仕方の無いことだった