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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2011/12/04 (Sun)
 
 
台所に行くと小さな深海がある
水圧で食器洗浄機が潰れている
よくあることだね
きみが見たこともない魚を
きれいに包丁でさばいている
時々あることだね
たまにあることだね
 
昔の人はみんな死んでしまった
朝にみんな死んでしまった
思い出のゴミの収集日だけれど
もう何も残ってないね
気持ちいいくらい
すべて捨ててしまったね
 
今日は一日何をしようか
ゆっくりと浮上しないと
身体の中身とかがとび出しちゃうから
ゆっくりと浮上して
理由もなく笑ったり
理由もなく泣いたり
そんなふうにして過ごすのも
悪くない気がするね
  
 
 
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2011/12/03 (Sat)
 
 
カマキリ会社のカマキリ社長は
用件が済むと電話を切る
鎌で電話のコードを切る
以下、カマキリ専務、カマキリ部長、
カマキリ課長、カマキリ平社員
みんな電話のコードを切る
だから消耗品のロッカーはいつも
コードのストックであふれている
社内のコスト削減策として
「鎌で電話コードを切らないこと」
が申し合わせをされたけれど
鎌の手入れをしているうちに
みんな忘れてしまう
大事なことも
悲しいことも
すべて忘れてしまう
  
 
2011/12/02 (Fri)
 
 
月のきれいな公園で
偽物の手品師が
偽物の練習をする
隣のブランコでは
飼い猫が眠っている
昔から偽物だから
何も出せないし
何も消せない
しかも猫すら
なついてくれない
 
  
 
2011/12/01 (Thu)
 
 
外付けの階段で子供たちが
ナフタリン遊びをしている
前の道路を走って行った腰痛のバスは
小さな水たまりの側
もの静かなバッタになる
このアパートには冷蔵庫の幽霊が出る
隣室の人にそう言われた夜
僕らは洗濯機の幽霊を見た
翌日、隣人にその話をしても
笑って相手にしてくれなかった
きみの揚げたエビフライを
二人で数本ずつ食べた
何も残らなかったので
これからの夢なども語り合ったけれど
やはりきみと
新婚で良かったと思う
  
 
  
2011/11/30 (Wed)
 
 
ホタル、採れたよ
光の点滅する虫かごを掲げて
妻と娘が遠くから走ってくる
遅かったじゃないか、心配したんだぞ
そう言って犬と駆け寄る
月明かりの下
家族で手を取り合う
(犬は見上げて尻尾を振ってる)
そしてみんなで
マンホールに落ちていく
  
  
 
2011/11/29 (Tue)
 
 
フェンスがどこまでも
長く続いている夏
午後、知らない所で
知っている人は逝った
乗客も乗務員も置いて
青い列車は海に向かって出発する
座席には誰かが忘れていった
大人用の眼鏡と
昆虫しか載っていない図鑑
悲しいことばかりではないけれど
悲しいことばかりのように
列車は海へと走る
時には一直線に
時には大きくカーブしながら
 
 
 
2011/11/28 (Mon)


ヒグラシが鳴き始めた
雨は降ったり、降らなかったり
時々、知らなかったり
 
フラスコ売りの兄は
すべてのキャベツを刻み終えると
沈まない潜水艦に乗って
埼玉に帰っていった
 
父はベッドに寝たまま
これから俺はどこに行けばいいんだ
と言って小銭入れを握りしめている
 
もう死にたいよ、と母が呟く
俺だって死にたいよ、と返す
いいんだよ、明日になれば
みんな忘れてるんだから
誰も何も覚えてないんだから
 


2011/11/27 (Sun)
 
 
深夜、小さな
発車ベルが鳴って
ジェット・コースターは
動き出す
大きな音をたてずに
ゆっくりと
星と星の間を落下する
乗っている人を
起こさないように
幸せな夢を
壊さないように
 
 
 
2011/11/24 (Thu)


テレビで野球中継を見ていると
ボールを渡される
九回裏ツーアウト・スリーボール・ツーストライク
最後の一球を投げるのがぼくの役目らしい
キャッチャーの構えたところに渾身の直球を投げる
バッターが空振りをする
チームメイトがマウンドに走って集まってくる
優勝したのだ
監督が僕の肩に手を置き
もうこんな所に戻ってくるんじゃないぞ、と言う
ぼくは頷いて薄暗いホームから列車に乗る
バッグの中には水着と浮き輪が入っている
海に行こうと思っていたのに
車内でクラゲに刺されて列車を降りる
これで何度目かの途中下車になる
病院の待合室に座っている間に
夜がすっかり更ける
名前を呼ばれて受付にいくと
きみがあの頃と同じ姿で待っている
会いたかったよ、ずっとだ、と
喉まで出かかった言葉を飲み込む
渡された問診票に
言いたくても言えなかった「さよなら」を
一文字一文字丁寧に書く
 


2011/11/23 (Wed)
 

縄跳び遊びをしていると
友だちの山村さんがやってきて
それ、ヘビだよ、と
声をあげて笑う
よく見るとわたしの握っているのは
ヘビの頭と尻尾
地面に何度も打ちつけられたヘビは
ぐったりと息絶えている
ヘビを殺してしまったのは初めてなので
とてもどきどきしていると
埋めてあげよう、と山村さんは言った
二人で穴を掘り、ヘビを入れて
シャベルで土をかける
しばらくすると、山村さんが
自分に土をかけてるよ、と
いっそう大きな声で笑いだした
気がつくと穴の中にはわたしがいて
自分で頭から土をかけている
泣きながら土をかけている
穴から出て辺りを見まわす
山村さんもヘビもいなければ
縄跳びも穴もない
だだっ広いところに一人で立っている
迷子になったことまでは理解できたけれど
誰を探せばよいのか忘れてしまった
 

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* ILLUSTRATION BY nyao *