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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/12 (Thu)
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2008/06/03 (Tue)

台所で人形を洗っていると
まだ生きた人しか洗ったことがないのに
自分の死体を洗っている気がして
かわいそうな感じがしました
列車が到着したので
あまり混んではいなかったけれど
代わりに習ったばかりの
笹舟を浮かべておきました
すでにお義父さんは乗っていて
オルガンの前に座ってました
どうやって音を出すのかわからない
と悲しげな顔をしながら
鍵盤に触っているところでした
あの子をよろしく頼む
お義父さんは言うけれど
どの子があの子なのかわからないから
もしかしたらわたしの
本当のお父さんだったのかもしれません
どこか洗い難いところはあるか聞くので
脇の下
そう答えると
お義父さんは優しい手つきで
人形の腕をもいでくれました
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2008/05/31 (Sat)
 
言葉と
拙い花瓶の
間に
めり込んでいる
弾丸
ある日ふと、音もなく
内戦が始まった日
わたしは回転扉の外で
小指に満たない大きさの
硬い虫をいじっていた
失望し
憤怒し
持っていないからと
人を嘲り
人に嘲られ
それでもわたしは
ただひたすらに
薄っぺらな
祈りの姿勢をしていただろう
 
2008/05/25 (Sun)
 
ベランダの浮輪に
バッタがつかまってる
夏、海水浴に
行きそびれて

書記官は窓を開ける
木々の梢の近く
監査請求書が何かの水分で
少し湿っている

白墨の匂いを残して
物理の授業中に
少女は遠くへ出かけた
校則が眠たいのは
すべてが言葉だから

間違えてあさっての新聞を
配達した青年が自転車を止めて
荷台の紐を直している
草野原の
平和な戦場で
 
2008/05/23 (Fri)
 
 
遺影のある家に行くと
線香の良い匂いがして
羊羹を一口食べた
奥さんがずっと昔からのように
右手で左手を触っている
側では子どもたちがわたしの名前を知っているので
窓から外を見ると
表面の固い道路や他のものなどが
薄っすらとしていた
それらは懐かしい、というよりも
何か買ってあげたい気持ちに近いから
放っておけば溶けてなくなりそうな気がする
名前を覚えている人は必ずいつか死んでしまうし
覚えてない人も今頃はどこかで
生きてないかもしれない
奥さんが食べ残した羊羹を包んでくれている
また手を合わせて
降り始めた、多分あのにわか雨を
わたしは通って行くのだろう

 
2008/05/23 (Fri)
 
男は椅子に座っている
頭の上には青空が広がっている
けれど屋根に支えられて
男は空に押しつぶされることはない
屋根は壁に支えられ、壁は男の
視線によって支えられている
目を瞑る、それはふさわしかったか
次々と崩れていく音が聞こえ
瞼は沈黙の
悲鳴をあげる
 
2008/05/23 (Fri)

夏至、直射する日光の中
未熟な暴力によって踏み潰された草花と
心音だけのその小さな弔い
駐屯していた一個連隊は
原種農場を右に見て南へ進み始める
わたしは網膜に委任状を殴り書きする
そして不在の
瞼になる
 
2008/05/19 (Mon)
 
テーブルの向こうには
崖しかないので
わたしは落とさないように
食事をとった

下に海があるということは
波の音でわかるけれど
海鳥の鳴き声ひとつしない
暗く寂しい海だった

残した料理にラップをかけた
それは夜明け前
崖に飛び込んだ
わたしの遺書に違いなかった
 
2008/05/18 (Sun)
 
鉄鉱石の蜜が街に溢れるころ
虫は人の文字の中で
急激に羽化を始める
かじると化学物質の味がして
その年はひどくうがいが流行った
水は水を乾かし
水は水を空席にする
証言台に立った女の瞬きは
速記官によって克明に記録され
翌日、珍しい化石になるのだった
 
2008/05/13 (Tue)
 
 
紙の水面から沈んでいく
鋼鉄の季節、眼はあなた
乾いた舌で皮脂の
履歴が記された頁を朗読する
排水機場の細かい部品が
錆びて赤茶けていく
ざらざら、その過程
時間はあなた
 
 
 
2008/05/11 (Sun)
 
敷石に降り注ぐ、柔らか
少し離れてある、生に弄ばれた
幼いミズカマキリの死
旧道を走る
路線バス、あれには乗れない
ただの声だから
管理人の男はフェンスをくぐる
その先で交差点は息をひそめ
とてもうまくは思い出せない
男は知っていたのだろうか
そこが空の裂け目だった、と
あっけなく吸い込まれ
後に残されたのは短い夏
そして微量の毒薬
  
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *