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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/10 (Tue)
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2008/05/09 (Fri)
 
鼓動のように雨戸は共鳴し
残余するものはもう何も無い
火傷の痕は指に育まれ
心の貧しいものだけが
人になることができる
その線をこえてはいけない
黄土色の骨に包まれた肉体
もはやそれは瓦礫
それは言葉
 
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2008/05/09 (Fri)
 
レストランの隅々に
手、枝、へと連なる不ぞろいの断面
戦車のキャタピラーは雨上がりの
ふとした地面を踏み固め
人の背中は人を定義しない
使い古した嘘
のように、また息を継ぎ足して
水の菓子を口に含む
 
 
2008/05/07 (Wed)
 
朽ち果てた石
その微かな記憶
落葉樹は閉ざされたが
薄く匂っている
末端という末端に
隙間という隙間に
うずら料理の美味しい店で
わたしは女に求婚した
手の甲の静脈は変わることなく
浮き上がっていた
世界はまだ美しいのか、女は尋ね
知らない、とだけわたしは答えた
夏草の繁茂する河川で護岸工事は続き
明日埋葬される
それは人の形をしていて
確かにわたしたちではなかった
知らない
わたしは繰り返した
  
 
2008/05/06 (Tue)
 
夜中に目が覚めて階下に行った
妻が台所でひとり
豆乳を飲んでいるのが見えた

湿った蛍光灯の下、色白の肌が
必要以上に青白く
そして細く感じられた

声をかけずに再び寝室に戻った
翌日、妻が死んだとしても
おそらく驚きはしなかったろう

2008/05/01 (Thu)

言葉の近くで
酸素を見ています
午後に置き忘れた椅子から
ずり落ちているあれは
靴の始まり
裏側を覗くと
もう誰もいません


+


金歯の中に広がる曇り空を
飛行船が飛んで行きます
落ちないように
歯医者は泣き続けて
待合室のソファーの上を
男の子が素足で歩いています
 

+


立っているお巡りさんの影が
風にほどけています
帰らないことは忘れないこと
イルカの足跡を埋める音のそばで
まだ息をしています


+


鉢植えの底で
自分の名前を隠すと
水のように恥ずかしい
埋立地の荷捌場には
春より先にもう
人が来ています


+


水は水の中を流れていきます
太陽の光がゆっくりと反射して
椅子に座っていても
遠いところまで見渡せます
どうして手があるのか
その日はよくわからなかったのです



+


振り返ることなく
本の背表紙だけが
ゼリーのように並んでいます
雨上がりが合図でした
子どもたちは一斉に走り出し
青い陸橋を渡り終える頃には
雲の間から星の匂いがしてきます


+


深夜、童話は考えます
どぶ川に沿って行く
細長い貨物列車の続きを
眠っている人が輪郭を曖昧にするので
おさめようとするのですが
また溢れ出してしまいます
 
 
2008/04/22 (Tue)

消防署の隣に
積木で家を造りました

小さな家でしたが
お祝いにひとつ
ほおずきを添えました

出会ったときには
もう家族でした
 
2008/04/14 (Mon)

人体模型は海を見ていた
筋肉の組織も内臓も剥き出しなのに
それは自分の何をも語りはしない
こうしていると
かつては本当の人間だったのかもしれない、と思う
電池の切れた玩具を
大事そうに抱えていた気さえするのだ
 
2008/04/12 (Sat)

01
椅子に椅子が座る
約束は
決して泣かないこと
色鉛筆に魚が群がって
明日の支度をしている

02
階段は優しい
黙って骨を集めてくれるから
時計を正しく合わせる
各駅停車は
一人きりじゃない

03
ケーキとワニが競走する
ケーキは動けない
ワニは動かない
交差点で笑っていた小学生は
タンポポのパイロットになる

04
プールのお墓で
紙に触っていると
風鈴に似た音がする
詰めるための部屋は
空っぽの入口を開けたまま

05
空き缶に佐藤さん、落ちる
空き缶に鈴木さん、落ちる
子どもは空き缶の絵を描き続ける
掴まることなどできないのに
手すりはまだ残っている

06
ハンドルを洗濯する
曲がっているところを直して
夏に近づけていく
窓から見えた、あれはきっと
何かの間違いなのだろう

07
こんにちは、煙突
こんにちは、草
ここでキャッチボール
していていいですか
死にそうになるまで

08
屋上で弁当が羽化している
箸を忘れた生徒が一人
理科室で溺れている
排水溝に落としたお手玉を
夕べ遅くまで心配していたのに

09
石油を買いに行った
途中、静かな姉に会った
地球儀のそば
お嫁さんのように丸くなって
なくした靴を探していた

10
誰にも気づかれないように
桜の花びらで電話遊びをしたね
横断歩道がでたらめの民謡を歌って
警官に連れて行かれるのを
ずっと見ていたね
 
 
2008/04/07 (Mon)
昨晩、眠れない僕に
妻が言い訳を考えてくれた

励ましの言葉はたどたどしく
いつものように
ありふれていた

外の方から
雪かきの音が聞こえてくる

真夏だというのに
人は忙しくしている
2008/04/04 (Fri)
夢の中でキリンと友だちだった
野原や森を走り回って虫とりをした
僕の運転でドライブした
キリンはサンルーフから首を出して
ご機嫌に歌った
作ってきたお弁当を文句ひとつ言わず
ウィンナーも卵焼きも食べてくれた
普段は無口なのに良くしゃべった
砂浜に座って夕日を眺めた
たぶん昔からの友だちだった
何故かわからないけれど
もうお別れすることになっていた
夢から覚めて
キリンに手紙を書いた
書くべきことはわかっていた
手紙を渡すためにまた寝た
二度と会えなかった
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* ILLUSTRATION BY nyao *