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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2024/05/15 (Wed)
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2011/09/01 (Thu)
 
 
ガラスに触れるクラゲの触手
骨のない夜、月に発光する

僕らの大切な約束は
フライパンの中
焦げた形の文字列になる

(自転車はさっき片付けておいたから)

どうしてだろう、いつも
悲しみのようなもので
冷蔵庫を満たしてしまうのは
  
  
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2011/08/31 (Wed)

街はコップの中にあった
人々は皆
銀色の言葉で話をしていた
消しゴムの形をした像が
中央広場に置かれていた
教訓めいたことが刻まれていた
僕は草色の列車に乗った
寒天の匂いがした
遠くに行きたかった
流れる景色を見ていると
三秒で終点に着いた
新しく住むところを探しに
不動産屋に入った
 
2011/07/18 (Mon)


サラは低所得者用の公営住宅に住んでいる
ある日、軒下にコガタスズメバチの巣ができていた
トックリ状の形をしていて
入口が長く下に向かって伸びている
サラには就学前の二人の娘がいた
年下の亭主は失業中で
アルコール依存症が進行していた
サラは役場に電話し巣の駆除を依頼した
防護服を貸すので自力で駆除するか、
業者を紹介する、もちろん費用は自己負担で、
と言われた
サラは家庭の状況をなるべく詳細に説明した
それでも何も覆ることはなかった
紹介された業者に電話をした
サラのほぼ五日分の賃金にあたる額を要求された
サラは自分で駆除することを決意した
役場で防護服を借りようとした
ついでに電話に出た糞ったれの役人の顔を見てやろうと思った
敗北感を味わうだけの気がしてやめた
二人の娘の面倒を亭主に頼み殺虫剤を買いにでかけた
(亭主は時々怒鳴り散らすことがあった)
(それでも暴力を振るうことはなかった、まだこの頃は)
ドラッグストアを三件回った
散々迷い、噴射式の最新式のものを買った
一番安いものの三倍近くした
それでも業者に頼むよりずっと安かった
駆除はスズメバチの活動が比較的少ない夜に行うことにした
日中、巣の様子を観察した
ハチの出入りは認められなかった
もしかしたら何らかの事情で
ハチは自らの巣を放棄したのではないか、
そんな淡い期待があった
夜になるとサラは長袖のシャツを二枚重ねて着た
ジーンズをはき、手にはゴム手袋をはめた
ただの気休めに過ぎなかった
娘たちには、決して家を出てはいけない、と言い聞かせた
亭主はアルコールに疲れ果てて眠っていた
その眠りが熟睡とは程遠いことは
サラにも何となくわかっていた
巣の真下から手を精一杯伸ばし
入口に向かって殺虫剤を噴射した
霧状の薬で辺りが真っ白になる
視界が晴れるまでしばらく待った
巣に変わった様子はなかった
やはりハチはいなかったのかもしれない
サラは玄関で身に着けていたものを脱ぎ、
薬を洗い流すためにバスルームへと向かった
翌朝、サラはほうきを持って巣を見に行った
サラはほうきで巣を突いた
と同時にハチの襲撃を恐れ十メートほど先まで走った
巣は崩壊し、ほとんどが地面に落ちた
近寄って覗き込む
縞模様の土状の破片や、巣の中身に紛れて
スズメバチの死体があった
巣の中には卵か幼虫か判別できない、
白いものがいくつか見えた
ハチの死に顔は安らかに見えた
「女でひとつで」という言葉が頭をよぎった
「女でひとつで」スズメバチは巣を作り、子育てをしていた
放っておけば事態が悪化することは容易に想像できた
いずれは凶暴な群れ形成する
それでも相手は
母親に成り立ての生身のハチ一匹だった
言い訳ならいくつも思いついた
わかっていた
それらが決して言い訳ではないことも
言い訳、と考えることが自体が
感傷に過ぎないことも
家の中から亭主の怒鳴り声が聞こえる
サラの名を呼んでいた
何度も何度も呼んでいた
幼子のように
救いを求めるかのように
 
2011/07/17 (Sun)
 
 
ビルの隣にビルが立っていた。
ひどく咳き込んでいた。
ビルは私に煙草を請うた。
煙草は吸わないのでその旨を告げた。
ビルの隣に建っているビルに入った。
壁の薄汚れたビルだった。
ブリーフィングの資料を早く作りたかった。
三か月後、ビルは組合交渉に参加した。
それから六年後、ビルは腎臓を患い
定期的に透析を受けることとなった。
家族とは既に別居していた。
その時の私は、といえば
治らない円形脱毛症に悩まされていた。
老朽化のために
ビルが取り壊される四年前のことだった。
新しいビルは二ブロック先に建てられた。
その頃になると
ビルとの音信も特になかった。
  
 
2011/07/13 (Wed)


辞書を落とす
ページがめくれて
言葉が次々と
空にむかって
飛んで行ってしまう
真っ白になった辞書を抱えたまま
駅のある方へ歩く
今日話そうとしていたことは
正確な意味で伝えられるだろうか
ここにいる自分が
本当の自分なのか
説明することさえも
覚束ないのに

2011/07/11 (Mon)
 
 
砂漠の真ん中で
公衆電話が鳴り続けている
そんな気がして目が覚める
妻の寝顔がぼんやりと見える
雨が窓を濡らす音が聞こえる
今夜はきっと砂漠でも
雨が降っていることだろう
 
 
2011/07/10 (Sun)
 
 
蛇口をひねると
シャワーから
大切な恋人が出てきた
大切だから
名前をつけた
お互いの名を呼びながら
シャンプーとリンスの前で
永遠の愛を誓った
そして二人で
排水溝に流れていった
  
 
2011/07/09 (Sat)


玄関の前にブラジルが落ちていた
おそらくブラジルから
何かに運ばれてきたのだろう
ブラジルに住んでいる人や他の生き物も
ブラジルが見つからなくて大変だろう、と思い
お役所に電話してみたけれど
親切に他のお役所を紹介してくれたり
担当者の不在を教えてくれるだけで
その優しさに心が温まって終わる
家族の者に相談しようとしても
住民票を紛失したかのように
誰も帰ってこない
宅配便で送ろうとして規格外だと断られる
飛行機に乗ってブラジルまで持って行くには
積みこめる大きさではないし
何より行き先のブラジルは今ここにある
やはり海に浮かべて
筏のようにして運ぶしかないのかもしれない
担ぎあげて海へと歩き始める
こんな時に限って昨日よりも暑い
流れる汗を拭いてくれる人にも会わない
そのくせオールをくれる人はたくさんいる
海はさほど遠くないはずなのに
むしろ好んで
逆方向に歩いている気さえしてくる



2011/07/05 (Tue)


カーテンの隙間から
漏れる、鉄状のもの
汗や痛みなどの
混濁した

私たちの怒り、は
私たちの表情、は
私たちの時代、は
数回の瞬きのために
無意味なものに
分類されていく

そして都市だけが
膨張し続けるのだ
言葉の変形、切断、
及び溶接によって
 
 
2011/07/04 (Mon)
 
 
空地で少年たちが野球をしていた
打球は大きな弧を描き
空のどこかへと消えて
二度と戻ってくることはなかった
家に帰るとリビングの隅に
ボールが転がっていた
返さなければ、と思い
空地に行くと
少年たちはもういない
空地もすっかり整地され
古い建物が静かに並んでいる
ひとりだけ置いていかれた
自分がしてきたのと同じように
境界杭をそっと踏んで
アウト、と呟いてみる
 
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *