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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2024/05/04 (Sat)
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2004/03/16 (Tue)
駅のホーム
喫煙コーナーのベンチ、夕暮れでは少女が
メールを打つ少女
メールを打っている

少女はメールを打つ
指、その速度の指で
穏やかな夕暮れ、穏やかな煙
少女よ、今、僕はカフェにいる、オープンカフェ
この季節、ホームには色とりどりの列車がやってくる
そのすべてに乗ることもせず
少女はメールを打つ
メールを打つ少女
僕は今、昭和基地で起点と終点の距離を測量しているよ
もしかしたらそれは僕のとんだ勘違いかもしれないが

さて、少女である
メールを打つ少女
少女はメールを打っている
その少し開いた唇の端から次々と記号はこぼれだして
世界の隙間という隙間を丁寧に埋めていく
応答せよ、応答せよ、ディスプレイ、ディスプレイ
少女よ、打っているのは
いつかの顔文字
いつかのありがとう
いつかのさよなら
少女よ、僕はメールを打たない

僕が打つのはメールではない
僕はメールを打たないのだ
いつかの顔文字
いつかのありがとう
いつかのさよなら
応答せよ、応答せよ、色とりどりの列車
少女よ、メールを打つな!

見てみるといい、そう、もう誰もいない
誰もいない、いるのは
メールを打つ少女以外の人
そして僕以外の人
穏やかな夕暮れ、すべてのもの

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2004/03/11 (Thu)
サードとショートは楽しそうに話をしている
ああ、いいなあ、と思ってセンターを見る
そこには人数あわせの地蔵
ということはチェンジになるごとにあれをベンチまで運ばなければいけない
はるか彼方ライトを見れば
打倒サップ!の鉢巻をしてサンドバッグを叩いてやがる
今日は広い外野をひとり占めかよ
サードとショートの距離はさっきより縮まっていて
そのうち手でもつなぐんじゃないかと思っているうちにもう舌が入っている
主審のプレイボールの声があってもゲームは進行しない
マウンドにはピッチングマシーン
そうか、ピッチャーは嫁さんがお産だったなあ
頼みのセカンドは家と車のローンで首が回らない
ファースト、ああ駄目だ、トンボを見つけて嬉々としている
仕方なく走ってマシーンのスイッチを入れる
カキーンといい音が響いて打球は右中間に
白球を追って走る走る
花粉症だったことを思い出して
涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになる
俺はこんなことをするために華の大都会にきたんじゃない
そう思いながら「コメオクレ」と田舎の母親に電報を打つ
もうあまりに卑猥すぎて三遊間の話はできない

2004/03/10 (Wed)
ふと右を見ると三塁手が君だったので
僕はすっかり安心した
うららかな春の日、デーゲームは淡々と続いている
スタンド、ベンチ、フィールド
いろいろなところからいろいろな声が飛び交っている
やあ、久しぶり
という一言から
僕らは話を始めた
今まで二人にあったことを
ありったけの言葉を使って話した
痛烈な当たりが二人の間を抜けていく
フライがポトリと落ちる
攻守が交代になり
デーゲームが終わりナイターが始まる
それでも定位置を動くことなく話し続けた
幾年かが過ぎ
球場は取り壊され駅ができたころになると
ようやく五年くらい前の話にさしかかる
「今、おしゃべりをしている三遊間の前にいるから」
僕らは待ち合わせの目印になった
いろいろな人がいろいろな格好で待ち合わせをしている
笑っている、怒っている、泣いている
うららかな春の日は淡々とすぎていく
今までのことを話し終えた僕らは
これからの話をすることにした
2004/03/06 (Sat)
開け放たれた音楽室の窓から
合唱部員たちの歌声が聞こえる
放課後、行き場の無い僕らは
校庭の隅にある鉄棒に片足をかけたままぶら下がり
いっせいの、で誰が好きかうちあけると
やはり同じ子が好きで
その後に交わした言葉は
誓いのようなものだったかもしれない
金属音は歌声をかき消し
空の低いところを大きな輸送機がその腹を見せ
争いのある国へと飛んでいく
僕らは意味もわからないまま
ギブ ミー ア チョコレート
そう何度も言いながら
このまま何も変わらないのだ
と確信した

2003/12/10 (Wed)
もちを食べていたら
中から
ラケット二本と
シャトルが一つでてきた

正月は羽子板だよね
とか言いながら
僕らはいつまでも
バトミントンをし続けた

あの日
何回まで数えることが
できたのだろう

ただの退屈だ、と
誰にも
笑われることなく



+



もちを食べていたら
中から「もちの精」がでてきた
願いごとをいくつか
かなえろ
と言う

何故さ!
つっこむ間もなく
「もちの精」は勝手に願いごとを言う
とてもじゃないけどかなえられそうにもないし
期限があるわけでもないらしいので
放っておくことにする

友人に出した年賀状が一通
あて先不明で返送されてきた
元気でやってます
伝えたいのはそれだけだった



+



もちを食べていたら
自分がもちであることに気づいた
さっきまで同じパックに入っていた仲間を
ごめんよ、ごめんよ
と言いながら涙を流して食べている

もちがもちを食べるものだから
ぐちゃぐちゃに
くっついて
ひっついて
からみついて
どこからどこまでが自分なのかわからなくなる

そんな僕を君が食べている
ごめんなさい、ごめんなさい
って



+



もちも美味しいと感じるのは元旦くらいで
二日には白いご飯と味噌汁が恋しくなる
箸休めにここで一曲歌うことにする
けれど、その歌を耳で聴くことはできないだろう
だって
歌はいつも
心で聴くものだから



+



もちを食べる
中からは
ラケットも
シャトルも
「もちの精」も
出てくることはない
ましてや
僕はもちではないし
君も僕を食べたりはしない
そんな当たり前のことを幸せに感じるのは
一年のうちでも正月だけかもしれない
と、当たり前に思う

それから買っておいたラケットとシャトルで
君とバドミントンをする
数える必要はない
僕らが日々願うことなんて
たかが知れてる

2003/11/02 (Sun)
牛乳を買ってきたつもりだったのに
袋に入っていたのは
それはそれは立派な
乳牛だった

妻は、こんなものどうするつもり、と怒りまくり
娘は、牛さんが来た、と大喜びをした

毎朝、新鮮で美味しい牛乳を飲めるようになったけど
飼育するのにとにかく費用がかかる
おかげで家電製品を手放した
車を手放し、家を手放し
あんなに怒っていた妻を手放し
あんなに喜んでいた娘を手放した

今朝も僕はポツネンと牛乳を飲んでいる
その一杯のために
毎朝でも僕は泣きたい
2002/03/30 (Sat)
母さん、
ほら、春の風が吹いて

そろそろ僕も
行こうかと思います

春の風は早足で駆け抜け
いつも、僕は一人残されてしまうから
風のすべてが海の向こうに渡る前に

そろそろ行こうかと

ねえ、桜の花びらが落ちてきました
書きかけの日記帳に
1枚はさんで
2002/03/10 (Sun)
銀座は今日も沢山の人で溢れかえっていた
中央通りの歩行者天国を歩いた
人民服を着た小柄な初老の男が弾く胡弓を聴いた
白人の大柄な大道芸人のピカピカと光る赤いつけ鼻を見て
噛み付いてみたいと思った

人ごみを歩くのが苦手な僕は
何度か人とぶつかって
何回か前を歩く人の踵を踏んづけた
そして2回睨まれた
一人は眼鏡を掛けたおばさんで
もう一人は片方の耳にピアスの穴を開けた青年だった

明治屋で輸入雑貨を見て
ドライフルーツがドライドフルーツだと今更ながら気付いた
松坂屋の地下一階のミッシェルショーダンで生チョコの試食をして
口と胃がチョコレートだらけになった
アナスタシア・ジュースの綺麗なオレンジ色にしばし見入った

トイレを探して三越に入った
ついでにアクセサリーショップのショーウィンドウを覗いたが
買ってやる相手なんか誰もいなかった

並木通り4丁目の前から目をつけていた小さな喫茶店で
コーヒーを飲んだ
普通のコーヒーだった
そもそもコーヒーの味の違いなんて僕にはわからなかった

腕時計をしているのに和光を見上げて
時計台で時間を確認なんかしたりした
その上にはたくさんのビルに直線で切り取られた青い空があった

銀座ぎんざギンザ

銀座は今日も動いていた
僕一人がいなくったって銀座はきっと動いていた
僕の存在を証明するものなんて
小さな心臓の鼓動くらいしかなかった
それすら隣を歩く恋人の楽しそうな笑い声にかき消された

そういえば国語辞典を持ってなかったと思い出した
小さな心臓の鼓動と角川の国語辞典といっしょに
有楽町から山手線に乗って
東京駅に向かった


2002/03/01 (Fri)
「ショクヨウガエル」という物悲しい名前の蛙がいる
まるで
人間に食べられるためだけに生まれてきたかのような名前の
体長15~20cmにもなる巨大な蛙

正式な和名は「ウシガエル」
食用として輸入したものが野生化し
今や日本全国のほとんどに分布している


ホタルをとりに行くと
闇を支配していたのは
きまって
このショクヨウガエルの低い鳴き声だった
時々、車のタイヤが砂利を弾く音をたてるくらいで

現在の日本ではショクヨウガエルは
食材として一般的ではない
「食用」であるのにもかかわらずだ
それはそれでまた物悲しい

余談だが
捕まえたホタルは数日後に
虫かごのなかで
一生を終える

少年は命というものを知り
自分に言い訳することを学んだ

それでも
思い出として美化する術を身に付けるには
もう少し年月が要った

2002/02/22 (Fri)
年老いた画家は絵の中の少女に羽を描いた
羽を得た少女は絵の中の空を楽しそうに飛び回った

画家は少女にもっと立派な羽をつけたくて描き直そうとしたが
羽をとられてしまった少女はうつむいているばかり

そして画家は羽を描く方法を
忘れてしまった


でも、本当は
最初から少女も画家も存在なんかしていなくて
生乾きの筆が一本ころがっている

そんな絵が1枚だけ飾られた美術館がある
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* ILLUSTRATION BY nyao *