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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/15 (Sun)
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2006/05/11 (Thu)
生野菜が部屋を出て行く
生の野菜
それだけの理由で
ぼくらはたくさんの歯形をつけた

外では大切に育ててきたバス停が
音もなく
静かに腐っている
逝くものだけが優しいのだ、と
きみは優しい嘘を言った

出会わなければならない
ぼくらの受けてきた性教育は
いつもかわいそうな感じがした
水槽にいっぱい水を入れて
それから
魚を一匹逃がしてあげた
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2006/05/09 (Tue)
窓辺に頬杖し
少年は大きな音を立てて通過する列車を眺めていた
用事があればそれに乗ることもあった
ボックス席の窓側に好んで座り、近くにくれば
自分がいつも列車を眺めている窓を目で追った
当たり前のことだけれども
そこに自分の姿はない
のと同じように
走り去った列車の窓のどこにも
自分を見つけるはずもなかった

ふと
「焼き魚」という言葉で世界を満たしたくなる
焼き魚のことは好きでも嫌いでもなかった
ただ、世界を満たすには
好きなものでも嫌いなものでも駄目な気がした

やきざかな やきざかな やきざかな

ノートを埋めていく
漢字を知らないので平仮名で書いた

ヤキザカナ

呟いたところは知らないうちに片仮名になっていたが
求めているものとはどこか違っていて
消しゴムで消した

ただいま、というか細い声とともに
母親が帰宅する
窓から斜めに射す西日が作る凹凸の陰影で
まだ若い母親の顔は泣いているように見えた
実際、泣いているようだった
そのことの意味がわからなかった
少年にはまだ、わからないことが沢山あった


2006/05/08 (Mon)
レジで財布を開けると
中に水が溜まっていて
たくさんの魚が泳いでいる
お店の人は
あらーっ
と言って
財布を覗き込み
あらーっ
もう一度言った
ありふれた感じで
その首は少し曲がっていた
先ほどまで他の客と
姪にあたる人の結婚について
話をしていた人だった
会計をあきらめて店を出ようとすると
後ろから
あらーっ
の声
電話をしていた
そういえば確か
昨日も同じ服を着ていたと思う

2006/05/06 (Sat)
間違っている気がして
冷蔵庫の乳製品を並べることにする
自分に似ているものは右側に
似ていないものは左側に
それ以外のものは
バスタブに順序よく沈めていく
ひとでなし!
口のようなもので散々罵られるが
ひとでないのはあなたたちの方だと
説き伏せて続ける
外の方から救急車のサイレンが聞こえる
かわいそうな人のために走っているのだ
そう思うと
言いそびれたことがあるような気持ちになって
自分の口が開いているかどうか
何度も確認してしまう
2006/05/06 (Sat)
ホット・ペッパーください
く、くださいませんか
クーポンついてますから
剥いたブルー・チーズですから
まだ、だ、でしょうか
え、駅前のあなた
く、くだい、ってば
というより、ください、ってば
浴室に持って帰りますから
あ、熱いシャワーとか
ぜいたく言いませんから
だからこそ、くださいませんか
そのホット・ペッパーを
この右手、もしくは左手に
あ、握手は別にいいです
クーポンはついてませんから
事実だから仕方ないにしても
小学校の校庭で
それがどこかとは関係なく
見つけたのは、ぼ、僕の
悲しい戸籍抄本でした
そのものは、あくまで
剥いたブルー・チーズですから
ミ・ツ・ヒ・コ・さん
かどうかは別としても
そこの駅前のあなた
そ、それよりも
ホット・ペッパーをく
ください
ませんか
よくわかる話で構いませんから
特別に働いても構いませんから
ああ、駅前のあなた
すべてがやがて
夕日に密閉されてしまう前に


2006/05/05 (Fri)
せっかくお風呂に入ったのに
自分のからだがすっかり無くなっていた
どこかに忘れてきたにちがいないけど
いくら思い出そうとしても
ここにいた時には確かにあった
という自信がもてない
仕方が無いので頭だけ洗うことにした
からだもきっと今ごろ
私を探しているのだろう
うまくたどり着けば良いけど
目は二つとも私が持ってきてしまった

2006/05/04 (Thu)
「部屋の中」がなくなっていく
「部屋の中」にあったものは
外へと押し出されてしまう
殺風景だと思ってたのに
床、天井、壁
結構いろいろなものがあったので
少しびっくりする
やがて「部屋の中」は
点のようなものになって
最後に、ぽん、と押し出されたのは
きっと僕自身なのだろう
お店屋さんへ行って
買ってもらおうと思ったけど
言葉でしゃべってください
と言葉で注意される

2006/05/02 (Tue)
 固定された都市。流入する者と流出する者。その背中には皆一様に大きな鳥のくちばしがあり、そして光沢がある。鳴くわけではなく、また、捕食するわけでもない。ただそれは背中にあり、そして光沢がある

 わたし、と自分を名乗るわたしはノートの罫線と罫線の間に父と母の名を交互に書き連ねている間に大人になった。両親の名を知らぬ人は何を書くべきなのだろうか、そう考えると忽然と書くことがなくなってしまった。

 駅が泣きそうな顔でやってきて、列車をホームに停車させたいのですが、と申請書のようなものを差し出す。わたし、と名乗るわたしは許可権者ではなかったがはんこのようなものを押してあげた。駅は嬉しそうに礼を述べて帰った。これから毎日、来るはずのない列車を待ち続けなければならないのだ。

 雨が降リ始めた。傘を持つ者は傘を差し、無い者は差さなかった。いずれにせよ、くちばしは傘に収まりきれないので濡れるしかなかった。人々は皮肉をこめて、それを「ささやかな平等」と言った。そのような、日常と呼ばれる断片の中で、わたしと名乗るわたしが行方不明になった、ということは翌日の報道で知った。
2006/04/28 (Fri)
早朝の廊下に
自分の小さな臓器が
ひとつ落ちていて
きれいだった
拾い上げ
その、つるりん、とした表面を
爪の先で掻いてみる
夕べはここが痒かったのだなあ
ということがわかる
身体に戻すのに時間がかったが
最後はそれなりになんとかなった
今日も海には
たくさんの人が来るのだろうか
そう考えると
にぎやかな気持ちになる
2006/04/23 (Sun)
六両編成の列車を乗せて
たくさんの人が
踏み切りを通過する
誰が辛い、とか
そういう話ではなく
見届ける、
それがその時の
僕の責務だった
唐突に
「西インド諸島!」
そう叫びたい衝動に駆られ
「夕焼け!」
と叫ぶ
最後尾の人が同じ口の形をして
手を振ってくれた
数年前に友だちの一人が出した
なぞなぞの答がわかったのだ
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* ILLUSTRATION BY nyao *