プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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カミキリムシに噛み切られている
僕は薄い紙になっていて
手も足も出せない
手足が出たところで
噛み切られるだけだけれども
昨日までの厚みは
どこに行ってしまったのだろう
できる限りの範囲で
いろいろ包みこんでいたのに
もう産まれるんじゃない
笑いながら君が突っついた
僕の大きなお腹も既に見当たらない
それなのにまったくの平面ではなく
薄い、という厚みが
確かに僕の存在としてある
その存在をかき消すかのように
カミキリムシは僕を
噛み切り続ける
土曜日は水族館に連れて行ってね
何も知らない娘が甘える
隣では君が僕の破片を
セロテープで繋ぎ合わせている
僕の身体がふやけないように
涙をこらえているのが
今ならわかる
僕は薄い紙になっていて
手も足も出せない
手足が出たところで
噛み切られるだけだけれども
昨日までの厚みは
どこに行ってしまったのだろう
できる限りの範囲で
いろいろ包みこんでいたのに
もう産まれるんじゃない
笑いながら君が突っついた
僕の大きなお腹も既に見当たらない
それなのにまったくの平面ではなく
薄い、という厚みが
確かに僕の存在としてある
その存在をかき消すかのように
カミキリムシは僕を
噛み切り続ける
土曜日は水族館に連れて行ってね
何も知らない娘が甘える
隣では君が僕の破片を
セロテープで繋ぎ合わせている
僕の身体がふやけないように
涙をこらえているのが
今ならわかる
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「私がおばさんになっても」と森高は歌った
ついこの間のことのようだけど
もう十二年も前の話だ
その年に僕らは結婚した
つまり、僕らが結婚して既に十二年たった
ということだ
僕は一度、交通事故で死にかけたことがある
娘が生まれて間もないころだった
救急隊員の通報を受けた君は何も知らないまま
僕の交通事故現場の前をタクシーで通りかかり
ああ、こんな事故じゃ誰か死んでるんだろうな
と思ったそうだね
他人事のように
そう、他人事のように生きてきて
多分、本当は違うのだろうけど
他人事のように僕らは
今ではすっかり
大層ご立派なオジサンとオバサンになった
これからもきっと他人事のように
ジジイとババアになっていくんだろう
どこが境目かわからぬまま
ある日ふと突然に
もし僕がジジイになったら
君はババアだ
もし君がババアになったら
「もし君がババアになったら」
もし君がババアになったら
名前をつけることにしよう
ヒマワリ
アップルパイ
冷たいオクラのスープ
国境を越えられない靴
気まぐれなテントウムシ
表彰台に繋がれた犬
九九を忘れてしまった数学者
ソフィア・ローレン
よしながさゆり
ジブラルタル
ジジイの僕が愛する
皺のひとつひとつに
ついこの間のことのようだけど
もう十二年も前の話だ
その年に僕らは結婚した
つまり、僕らが結婚して既に十二年たった
ということだ
僕は一度、交通事故で死にかけたことがある
娘が生まれて間もないころだった
救急隊員の通報を受けた君は何も知らないまま
僕の交通事故現場の前をタクシーで通りかかり
ああ、こんな事故じゃ誰か死んでるんだろうな
と思ったそうだね
他人事のように
そう、他人事のように生きてきて
多分、本当は違うのだろうけど
他人事のように僕らは
今ではすっかり
大層ご立派なオジサンとオバサンになった
これからもきっと他人事のように
ジジイとババアになっていくんだろう
どこが境目かわからぬまま
ある日ふと突然に
もし僕がジジイになったら
君はババアだ
もし君がババアになったら
「もし君がババアになったら」
もし君がババアになったら
名前をつけることにしよう
ヒマワリ
アップルパイ
冷たいオクラのスープ
国境を越えられない靴
気まぐれなテントウムシ
表彰台に繋がれた犬
九九を忘れてしまった数学者
ソフィア・ローレン
よしながさゆり
ジブラルタル
ジジイの僕が愛する
皺のひとつひとつに


インディアン・パークに行こう
インディアン・パーク、インディアン・パーク
老若男女みんなが大好きな
インディアン・パークに行こう
手に口をあてて
アワワワとインディアンの真似をしよう
インディアン・パークに行こう
おまえと
お弁当を持って行こう
おにぎりは俺が握って行こう
卵とウィンナーはおまえが焼いて行こう
それらすべてを綺麗な色の
プラッチックのお弁当箱に詰めて行こう
歩いて行こう
走っても行こう
小さな花は見つけてもとらないで行こう
インディアン・パークに行こう
おまえと
二人で羽飾りをつけよう
俺とおまえが酋長になろう
たくさんのものを乗り越えて行こう
乗り越えられないものは踏んで行こう
何かを傷つけて行こう
何かに傷つけられながら行こう
すべてのものに平等になろう
すべてのものに感謝をしよう
そして行こうインディアン・パークへ
おまえと
インディアンって嘘つかないの?
いっぱいついたさ
そしてこれからも
おまえも嘘をついたことがあるのか?
うん
インディアン・パーク、インディアン・パーク
老若男女みんなが大好きな
インディアン・パークに行こう
手に口をあてて
アワワワとインディアンの真似をしよう
インディアン・パークに行こう
おまえと
お弁当を持って行こう
おにぎりは俺が握って行こう
卵とウィンナーはおまえが焼いて行こう
それらすべてを綺麗な色の
プラッチックのお弁当箱に詰めて行こう
歩いて行こう
走っても行こう
小さな花は見つけてもとらないで行こう
インディアン・パークに行こう
おまえと
二人で羽飾りをつけよう
俺とおまえが酋長になろう
たくさんのものを乗り越えて行こう
乗り越えられないものは踏んで行こう
何かを傷つけて行こう
何かに傷つけられながら行こう
すべてのものに平等になろう
すべてのものに感謝をしよう
そして行こうインディアン・パークへ
おまえと
インディアンって嘘つかないの?
いっぱいついたさ
そしてこれからも
おまえも嘘をついたことがあるのか?
うん


大きな口を開けたワニが
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる
魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない
沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解でしょうか
そう言い残したまま
僕を育てた人は
どこかに行ってしまった
脊椎動物
と呼ばれることで
負わなければならない責任
そのために
僕らの涙はある
今朝から気配がたわわに実って
背筋だけが
静かにしんなりとしている
天気の真似をして
すっかり晴れわたってる
魚の数匹は遠ざかり続け
それでもまだ
誰の指にも泳ぎつかない
沢山の羊を乱雑に並べて
さて、どれが正解でしょうか
そう言い残したまま
僕を育てた人は
どこかに行ってしまった
脊椎動物
と呼ばれることで
負わなければならない責任
そのために
僕らの涙はある
今朝から気配がたわわに実って
背筋だけが
静かにしんなりとしている


君が煮びたしをつくっている
キッチンは包まれている
昨日僕が割った皿は
既に片付けられてる
君の右手と
黒子のある左手によって
どこかから漏れてきた西日が
ステンレスに反射している
後姿しかない人のように
君は煮びたしをつくり続け
煮びたしは鍋の中で
少しずつ煮びたされている
やがて夕食の時間になれば
僕らはいつものように
幸せについて語らなければならない
わずかばかりの気恥ずかしさと
罪の意識を
口元に浮かべながら
君の指先に貼られた絆創膏から
血が滲んで
僕らの日々、その一部が
煮びたしの匂いや音と
混ざり合ってる
キッチンは包まれている
昨日僕が割った皿は
既に片付けられてる
君の右手と
黒子のある左手によって
どこかから漏れてきた西日が
ステンレスに反射している
後姿しかない人のように
君は煮びたしをつくり続け
煮びたしは鍋の中で
少しずつ煮びたされている
やがて夕食の時間になれば
僕らはいつものように
幸せについて語らなければならない
わずかばかりの気恥ずかしさと
罪の意識を
口元に浮かべながら
君の指先に貼られた絆創膏から
血が滲んで
僕らの日々、その一部が
煮びたしの匂いや音と
混ざり合ってる


ワールドアパート
酢酸
失われたハサミの片方のもう片方
イチローの背番号51のように
音も無く降る雨の形
ワールドアパート
共通しない扉で
耳を傾けるスパイス・ガール
俺の掌の中で
握りつぶされて米は
風のある握り飯になった
ワールドワールドアパート
とある瞬間にすべての言葉がら抜きになる
電卓の1がすべて砂漠になる
コートの襟をたてて歩く
たくさんの荒川静香
建築途中のビルディングで
行方不明になった俺の静香
すべてが可視で良かった
ワールドアパートそしてワールド
Q熱リケッチア
出口をすべてふさがれた
かわいそうな入口
毛沢東に手を振ったホタテ男
俺は昨日からドライヤーを探している
ドライヤーを探す俺を探している
急げワールドアパートへ!
名札を教室に忘れたまま
春がやってきたので
慌てて大人になった合唱部員
その母親はかつて俺の母親だった
右の鼻の穴に傷ができて
それからのことは誰も知らない
ワールドアパート
珍しい質問に答えられない
ワールドアパート
一輪の花をあげたい
酢酸
失われたハサミの片方のもう片方
イチローの背番号51のように
音も無く降る雨の形
ワールドアパート
共通しない扉で
耳を傾けるスパイス・ガール
俺の掌の中で
握りつぶされて米は
風のある握り飯になった
ワールドワールドアパート
とある瞬間にすべての言葉がら抜きになる
電卓の1がすべて砂漠になる
コートの襟をたてて歩く
たくさんの荒川静香
建築途中のビルディングで
行方不明になった俺の静香
すべてが可視で良かった
ワールドアパートそしてワールド
Q熱リケッチア
出口をすべてふさがれた
かわいそうな入口
毛沢東に手を振ったホタテ男
俺は昨日からドライヤーを探している
ドライヤーを探す俺を探している
急げワールドアパートへ!
名札を教室に忘れたまま
春がやってきたので
慌てて大人になった合唱部員
その母親はかつて俺の母親だった
右の鼻の穴に傷ができて
それからのことは誰も知らない
ワールドアパート
珍しい質問に答えられない
ワールドアパート
一輪の花をあげたい


男は静かな眼差しだった
椅子に腰掛けていた
眼鏡の中を覗き込むと
男には目が無かった
代わりに水槽があった
水面は微かに波打っていた
魚が数匹泳いでいた
楽しそうではなかった
知る必要の無い日常だった
男は両手を広げ
小さな咆哮とともに
水槽に飛び込んだ
飛沫、そして
水の弾ける音
私は見届けたのだ
後に残された眼鏡をかけて
鏡の前に立ってみる
先程の男がいた
ずぶ濡れていた
椅子に腰掛けていた
眼鏡の中を覗き込むと
男には目が無かった
代わりに水槽があった
水面は微かに波打っていた
魚が数匹泳いでいた
楽しそうではなかった
知る必要の無い日常だった
男は両手を広げ
小さな咆哮とともに
水槽に飛び込んだ
飛沫、そして
水の弾ける音
私は見届けたのだ
後に残された眼鏡をかけて
鏡の前に立ってみる
先程の男がいた
ずぶ濡れていた


無駄口を叩いている君の側で
僕は電卓を叩いている
端数がうまく積み上がらない
けれど僕の電卓は旧式だから
いつも君の指を叩こうとしてしまう
時計は見たこともない時計回り
僕は長針をかじり
君は短針をかじろうとする
秒針は無いので
それはそのまま
けれど時計は旧式だから
いつも僕らを時間と間違えてしまう
野原の真ん中近くで名義の無い自転車の車輪は曲がった
炎天下、ピアノはさぶいぼだらけのピアニカになった
ヘビのぬいぐるみはある日唐突にお母さんと呼ばれた
でも実は悲しいお父さんだった
旧式に過ごされる毎日の中で
君が失い、僕が忘れてしまった
いくつかのことと
すべてのこと
僕らの
鶏肉は旧式だから
香ばしい香りをたてて発情してしまう
椅子は旧式だから
背もたれと脚はたくさんの人型の型になってしまう
窓という窓は旧式だから
窓の外と外はどこまでも繋がっている
缶切りは旧式だから
切断面は虹色の天気予報士となる
さて、その天気予報士といえば旧式だから
何も予報することなく海底から浮上してこない
ねえ、僕は誰よりも嘘をつくのが得意な子供だった
でもやっぱり旧式だから
まだ生まれてこない君を思い出してしまう
僕は電卓を叩いている
端数がうまく積み上がらない
けれど僕の電卓は旧式だから
いつも君の指を叩こうとしてしまう
時計は見たこともない時計回り
僕は長針をかじり
君は短針をかじろうとする
秒針は無いので
それはそのまま
けれど時計は旧式だから
いつも僕らを時間と間違えてしまう
野原の真ん中近くで名義の無い自転車の車輪は曲がった
炎天下、ピアノはさぶいぼだらけのピアニカになった
ヘビのぬいぐるみはある日唐突にお母さんと呼ばれた
でも実は悲しいお父さんだった
旧式に過ごされる毎日の中で
君が失い、僕が忘れてしまった
いくつかのことと
すべてのこと
僕らの
鶏肉は旧式だから
香ばしい香りをたてて発情してしまう
椅子は旧式だから
背もたれと脚はたくさんの人型の型になってしまう
窓という窓は旧式だから
窓の外と外はどこまでも繋がっている
缶切りは旧式だから
切断面は虹色の天気予報士となる
さて、その天気予報士といえば旧式だから
何も予報することなく海底から浮上してこない
ねえ、僕は誰よりも嘘をつくのが得意な子供だった
でもやっぱり旧式だから
まだ生まれてこない君を思い出してしまう


濁った色の運河を
僕の手が流れていく
腫れ物に触るように
どこか遠慮がちな様子は
やはり僕の手らしかった
妻を抱き
娘を抱き
椅子の背もたれを掴み
いろいろな手続きをしてきた手
けれどその手は
誰も傷つけたことはない
何故ならいつも必ず
言葉で傷つけてきたから
手を見送りながら
振るべき手も
祈るために合わせるべき手も
持たずに立ち尽くす僕は
遠くから見えた
一本のとげだった
僕の手が流れていく
腫れ物に触るように
どこか遠慮がちな様子は
やはり僕の手らしかった
妻を抱き
娘を抱き
椅子の背もたれを掴み
いろいろな手続きをしてきた手
けれどその手は
誰も傷つけたことはない
何故ならいつも必ず
言葉で傷つけてきたから
手を見送りながら
振るべき手も
祈るために合わせるべき手も
持たずに立ち尽くす僕は
遠くから見えた
一本のとげだった


とげ屋に行った
店には色彩のきれいなとげや
いい匂いのするとげが並べられていた
地味目で自分によく似たものを買うことにしたが
名前はどこか似てない感じだった
店を出ると
空は漫然と晴れていて
少しも当たり所がなかった
夜、家の者が寝静まってから
とげを刺してみる
わずかばかり痛みがあったけれど
それで何かを語ることも
違う気がした
店には色彩のきれいなとげや
いい匂いのするとげが並べられていた
地味目で自分によく似たものを買うことにしたが
名前はどこか似てない感じだった
店を出ると
空は漫然と晴れていて
少しも当たり所がなかった
夜、家の者が寝静まってから
とげを刺してみる
わずかばかり痛みがあったけれど
それで何かを語ることも
違う気がした