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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
57
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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2010/07/22 (Thu)
 
 
水で出来た線路の上を
指列車がやってくる
わたしは道路の言葉で話しかける
指列車は親指を振って応えてくれる

空から墜落しそうになっている空を
真夏の工場群が
かろうじて支えている

日焼けした子ども達が歓声をあげて
でたらめに走り回る
彼らにしかわからない
悩みや葛藤や計算の中を

自分が自分であることを
疑わなくなってどれくらい経つだろう
上り坂が抜け落ちて
指列車が急停車する
フナムシが数匹降りてきて
海を探している
 
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2010/07/19 (Mon)
 
 
三角定規が数ミリ単位でずれて
安アパートが崩れた
確かに昔、ぼくはその二階の
日当たりの悪い角部屋に住んでいたけれど
何度か前を通っても人の気配がなかったので
もしかしたらぼくが
最後の住人だったのかもしれない
あるいは何か他のことを考えていたのかもしれない
いずれにせよマジックで自分の名が書かれた三角定規を
瓦礫の中から掘り出してポケットにしまうと
幹線道路から何本か中に入った路地を歩く
昨日と同じところにタイヤの跡のついた
洗濯物のような男物のシャツがまだ落ちていた
昨日、その話をあなたにしたけれど
今日その話をしたところで
あなたはいないから
独り言にしかならない
 
 
2010/07/18 (Sun)
 
 
梅雨の湿った風に吹かれいると
いつの間にかぼくと妻は
古ぼけた感じがする列車の
最後尾の座席に並んで腰掛けている
列車はカタンカタンと
紙のイメージの中を
ゆっくりとしたリズムで走り続ける
「点滅する踏切の警告灯」も
「民家の網戸から見える襖」も
「数えたシラサギの数」も
すべて文字でしかないのに
妻の手を握ると
二人とも生きているのが当然のように
汗ばんでいる
やがて列車は紙の縁にたどり着き
先頭車両から真っ逆さまに落ちていく
落ちた先には
普通の形のビジネスホテルがある
フロントで予約していた名前を告げ
部屋番号のついたキーを受け取る
靴を脱いでベッドに倒れこむ
妻がぼくの靴も揃えてくれる
年を取ったらきみの故郷に帰って死のう
そう言うと必ず
嘘つき
と妻は言う
 
  
 
2010/07/17 (Sat)
 
 
試験管の中で農場が溶けた
後に残った僕らは、帰り道
アブラ菜の咲く側で
何かの小さな骨を三つ拾った

お互いにひとつずつ持ち
残りのひとつは
骨が欲しくて困っている人に
あげることに決めた

紙の上で文字が燃える
その様子を眺めながら
きれいだね、と言って
明方まで笑ったり
身体をまさぐったりして
楽しかった

その後、二人で
たくさんのクイズを出し合って遊んだ
けれど自分たちの理由については
何ひとつ答えられなかった
  
 
2010/07/14 (Wed)
 
 
最終バスの斜め前の席
緑色のハナムグリが一匹
青いシートにしがみついている
埠頭から乗車してきたのだろうか
もしかしたらずっと前から乗っていて
既に何往復かしているのかもしれない
窓の外、二十四時間営業のお店が白く発光して
数名の人が
買い物のようなことをしている
始まりが無ければ終りも無い
でもそれは永遠とは程遠い
花があるかわからないけれど
ハナムグリと私を乗せて
最終バスは
わたしの中へと帰っていく
  
 
2010/07/13 (Tue)
 
 
時計の断面が落ちている
側に誰かの置いた花束がある
初夏の陽射しは影をつくり
わたしはわたしの影を
地面に埋めていく
勝者などいない
敗者だけの戦いが終わったのだ
イワシの缶詰を買って
レシートとつり銭を受け取る
わたしの手は
壊死が始まっている
  
 
2010/07/04 (Sun)
 
 
道の記憶
識別された日常の中を
人は歩く
そして
人は脆い
ぐにゃりと背骨の曲がった自転車が
無灯火のまま夜の街を走る
やがて洋品店の前でひとつの海になる
街中の甲殻類が次々と入って行く
いつしか海は自身を閉じてしまう
本当に失われたものは
何の痕跡も残さない
あちこちに落ちていた名前を
ボイラー技師が拾い集めて帰宅する
昨日の惣菜を一口食べて
吐き出す
既に腐っていたのだ
  
  
 
2010/07/03 (Sat)
 
 
わたしが金魚の頭を
撫でているころ
ぼんやりとした扇風機は
薄暗がりの中で首を振り
幼い子どもが一人
どこかで帰る家を探している
ここだよ、と言っても
それはきっと
ただの声にしかならない
扇風機の風が当たる
と、わたしの身体は
人の形を思い出す
 
 
2010/06/30 (Wed)


手からファイルが滑り落ちる
その先に空がある
とめ具が外れて
出鱈目な順序で書類がばらばらに舞う
書類から
印刷された文字も手書きのメモも
剥がれていってしまう
牧場の真ん中に
一艘の廃船がある
今でも時々夢に出てくる
付着したまま死んだフジツボの側で
牛が草を食んでいる
満員電車の中
一人分だけぽっかりと空いた席に座る
今ごろ文字たちはどのあたりにいるのだろう
不思議なことに今日まで
ファイルの夢は見たことがない
 
2010/06/29 (Tue)
 
 
窓を開けて欲しい、と男は言った
壁しかない部屋だった
窓を開けた、とわたしは嘘をついた
男は両手を広げると
嘘の窓から青空へと飛び去った
ひとり残され
部屋を丁寧に折りたたみ
ポケットに入れる
歩行者専用の信号が青に変わり
スクランブル交差点の人ごみに
紛れ込んで行ったのは
たぶんわたしだったと思う
  
  
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* ILLUSTRATION BY nyao *