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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
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57
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男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2010/03/07 (Sun)
 
 
交差点の真ん中に
ダチョウが一頭立っている
たくさんの車や騒音に驚きもせず
ただ悠然としている

身長二メートル数十センチ
人より背は高いけれど
人がつくった周りの建物はさらに高い
そでれもはるか遠くを見据えて
首をまっすぐにしている

私はそのようなダチョウが好きだ
そしてそのようなダチョウのいる交差点が好きだ
やがて日没が近づくと
ダチョウは翼を広げ
空へと飛びたっていく

夢とか希望とか
そんな言葉を
ありふれたもの、と嘲ることなく
今日は家まで持って帰る
  
  
 
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2010/03/06 (Sat)
 
 
僕の中で爆発する
バクとハツ
バクは奇蹄目バク科バク属に含まれる哺乳類の総称である
ハツは架空の人物、性別は女、推定年齢七十歳前後
幼少の頃、本家から分家に養女に出される
分家の苗字は本家に一文字追加されている
バクは燃えるゴミの収集日になると
どこからともなくゴミステーションに一頭でやってくる
そこにどこからともなくやってくるハツ
架空の人物なので輪郭がぼやけているが
白髪であることは辛うじて判別できる雰囲気
バクの形態は動物図鑑にはっきりとある
ただし図鑑のバクは側面から描かれた絵なので
ゴミステーションではいつも横を向いており
絵は実写に見えるように補正されている


  この時点ではまだバクもハツも爆発する予兆なし
  僕はひとり喫茶店で軽食を取っている


ハツの右手には市が指定した緑色の燃えるゴミ専用の袋
左手にはたくさんのパンの耳が入ったビニルの袋
カラス除けのネットを上げて先ずはゴミを捨てる
既に多数のゴミが捨てられている
もちろん地域の住民によって捨てられたものであるが
いつどのように持ち込まれたのかは
あくまで一般的なイメージを超えない
住宅街である
幹線道路が街を縦断しており、このステーションは
道路を挟んで右側の住民のみが利用することができる
右側、とは何に向かって右側であるのか
これもまた一般的なものの範囲内である
周辺の家はほぼすべてが二階建てで一区画およそ六十坪
窓がありドアがあり壁があり屋根がある
ある、ということだけがただあり、材質などは問わない


  この時点においてもまだバクもハツも爆発の兆しはない
  ただ、僕の中でバクもハツも爆発を待っている
  テーブルにケチャップが無いので店員を呼ぶ
  いつもと同じメーカーのケチャップが出てくる
  このメーカーが一番美味しい、とかではない
  ただケチャップがある
  その姿はイメージに似ている


ハツは左手に持っていたビニル袋を開け
パンの耳を事務的にバクに与える
その仕草に動物を愛するなどといった感傷的な様子はない
あくまで事務的にその動作は進められる
バクはハツの差し出すパンの耳を食べるが
バクの正面の姿は動物図鑑では確認できなかったので
食べるときも横向きである
正面のないバクと輪郭のぼやけたハツ
ハツの餌を与える動作は動作として見て取れるが
バクの餌を食べる行為は具体的ではない
家がある、ということだけがあるように
食べる、ということだけがある


  用事を済ませ喫茶店を出る
  先ほどの店員が「準備中」と書かれた札をノブにかける
  あの店員は山本さんだと思う
  僕は歩き出す
  もう一度山本さんだと思う
  行くあてもなく歩く、という言葉の便利さがある
  ここまできてもバクもハツも爆発しない
  僕はやや焦りだす
  景色やすれ違う人の詳細は割愛されている
  自分の手を見る
  しわがあり、青い静脈がはしり、所々に毛が生え
  複雑に枝分かれした手相がある
  ような気がする
  本当は誰が誰の中で爆発するのか
  見たことのある住宅街に出る
  ゴミステーションに横を向いたバクがいる
  間もなくハツも来るだろう


2010/03/04 (Thu)
 
 
ささやきが切符になる
私は列車に乗ることを許される
植物の蔓などでできた
自動の改札を抜ける
切符に自分が記録される
ホームへと続く階段を上る
一度も下ったことなどないのに
誰かのつくった列車が
ひとりでとことこと到着する
扉が開くと中には
海が広がっている
遠浅なのだろう
どこまでも海の中を歩く
服のほころびを見つけると
取り返しがつかなくなるまで
指でいじるのが好きな子だった
何となく春になるところまで
行きたかった
聞こえてくる波音が
身体の外に溢れないように
耳をふさぐ
  
 
2010/03/01 (Mon)
 
 
明日晴れたらさ
勝浦に行こうかな
仕事なんて休んじゃってさ
海が見えるよ
朝市だってあるよ
そんな時間には
着かないかもしれないけれど

外房線に乗るんだ
上総一ノ宮行きや大原行きじゃ行けない
安房鴨川行きか勝浦行きに乗らなきゃ
勝浦に行くのに勝浦行きに乗るなんて
とても平凡で素敵なことじゃないか
勝浦に行くには
長者町、三門、浪花、御宿なんて
由緒正しい感じのする駅を通過するんだ

ところで由緒正しいと言えば
僕の苗字は「武田」なんだけど
よく武田信玄の子孫?って聞かれる
そんな時は僕の父は福島県出身なんですよ
って答えるけど
武田氏の中には東北まで逃げた人たちもいるらしいよ
なんて真面目な顔で言う人もいる
よしてくれよ、僕のご先祖様は百姓で、
あっ、百姓って今は差別用語だっけ
農民、そう農民でさ
明治になって何でか知らないけど武田姓を名乗ったんだ
江戸時代、農民は姓を名乗れなかったけれど
実は農民にも姓はあったという説も、まあ、あるそうだ
出典は「ウィキペディア」ね

武田の一族の中には
開拓のために北海道に渡った人たちもいる
もう武田は名乗ってないけどね
その子孫のうちの一人は時々千葉まで遊びに来たりした
僕と遊ぶのが上手なお兄さんだったよ

それはそれとして
明日晴れたら、の話だったね、なんて
僕はいったい誰に話しかけてるんだろう
もちろん、これを読んでくれている人にだけど
そんな人いないかもしれないけれど
いずれにしろこんな馴れ馴れしい文体は
「ライ麦畑でつかまえて」
のくそったれの主人公みたいで
いい年したおっさんの使う言葉じゃないね
だから真面目に書くよ
最後くらいは真面目に

ここ最近、朝起きると
何かを失ってしまった気持ちになる
毎日、毎日
何かをひとつずつ

失われたものは
いつも優しくて
名乗らないから
何を失ったのかも
わからないけれど

明日晴れても
勝浦には行かないだろう
もしくはそうでなければ
明日晴れないことを
知ってて言ってる
 
  
 
2010/02/28 (Sun)
 
 
深海魚の朝
濃くなる陽射しが
少年とベッドとの境界線を
徐々に明確にしていく
窓を開けると
雨上がりの観覧車と
同じ匂いがする
生まれてくる場所を
間違えたわけではないと思う
ただ、時々
少年は何の変哲もない自分の背中を
恥ずかしく感じてしまう
 
 
 
2010/02/27 (Sat)
 
 
回ることをやめた
ライン
過程と工程の
限りない
狭間で
先端で

血小板の
ひとつひとつまでもが
記憶している
置き去りにされた
メモ書きの表面がたてる
微かな音を

風に聞きそびれたことのいくつかを
口の中で転がせば
ライン
安い酒の臭いがする海岸に
うちあげられた深海魚の
口から出ている
私の内臓

自動扉が開く
空から落ちる水を
雨、と呼ぶようになってから
何年生きたことか
生乾きのまま
ライン
足跡に消える
 
 
 
2010/02/27 (Sat)
 
 
身体が温かくなる
身体が柔らかくなる
私は自覚する、
私の挨拶を
葉の裏をスカイ
色をした特急列車は走り
指からの分泌物で
私は窓ガラスに
ひとつだけの
さよなら、を描く
そして走る
やめて、
走る
自らの中を自らの中で
真っ直ぐに直線
街がまた夕暮れに満たされ
夕暮れが身体に満たされる
頃になると
葉は不在の言葉となる
役割を終えたステイションが
安らかにざわめき始める
指先の中へと
先へと
   
 
 
2010/02/24 (Wed)
 
 
横隔膜、という膜がある
橋の上を歩いているときに
初めて知った

何かの香料の良い匂いがしていた
早く帰りたかった
知っていることが増えて
もっと上手に嘘がつけると思った

上手でも下手でも
嘘は嘘でしかない
なんて気づかなくても
生きていけるはずだった
  
  
 
2010/02/22 (Mon)
 
 
雨が魚の中に入る
滑らかな質感でバスが流れていく
タクシープールの人たちが性器まで濡らして
蝶番のついたドアの開閉に忙しい
窓に沿って座り
ベッドがあれば眠ってしまう
私はぴたぴたとした足音で
何軒かのお得意様をまわり
湿った手で印鑑を押してもらった
そのうちの数人は私が生まれたときには既に
生まれたことのある人たちで
名前を思い出せない人とは
いっしょになって名前を考えてあげた
側溝の近くで知らない女の人が
知らない犬を、ナナ、と呼んで
可愛がっている
よせばいいのにひっそりとその後を
物流会社の倉庫も流れていく
魚は煮つけに限る、と思い
何度も思ったけれど
そんな台詞
今までたったの一度も
言ったことがない気がする
鞄に入りきらない水が溢れ出してる
私も流れていく
  
 
2010/02/21 (Sun)
 
 
夏の正午に駅が沈む
誰かが思い出さなければ
なくなってしまうかのように

向日葵が咲く、その近くで
若い駅員が打ち水をしている
息づかいは聞こえなくても
肩を見れば呼吸をしているのがわかる

反対側のホームに列車が到着する
誰も降りず、誰も乗らず
海のある町に向かって出発する
あと六分、列車は来ない
あと六分私はここにいて
あと二十数分後には
ここよりも賑やかな人ごみの中にいる

ほんの一瞬、建物と建物の間から
向日葵が見える場所がある
私だけの秘密のはずなのに
みな足早に歩いていても
そのことを知っている様子で
一瞥すると
再び呼吸を始める
  
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *