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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2001/10/28 (Sun)
テレビでは逆さまに泳ぐ
魚の特集をやっていたから
私は読みかけの詩集を
逆さまにしてみた

すると
縦書き上詰のその詩は
逆さまの字が積み上げられた
不揃いの
ビルヂングの集まりになった

そして
下方の空白部は
そのまま
広大な空になった

その造型の素晴らしさに
しばらく酔っていたが
何かが足りない

そこで
私はちびた4Bの鉛筆で
空の部分に大きな
三日月を書いてみた

うん、
これで良い
こうでなければならない

私は想わずにはいられなかった
自分が毎日書いているのは
こんなものなのだ、

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2001/10/27 (Sat)
去り行く君へ
私は留まる
私は留まり
留まることしかしない

国道に架かる歩道橋の上に
その下の電話ボックスに
雑踏のなか
深夜、喫茶店の片隅に
あちらこちら
そこかしこに

私は留まり
留まりつづける

二極化された分類のなかで
君が去り行く人間ならば
私は留まる人間

だから
私は留まり
留まることしか知らない

銀行のキャッシュコーナーに
1丁目の電信柱の影に
書類の山にうずもれ
親指の盲牌にまかせ
不完全な円周率を描きながら
舶来の煙草に咽びながら

私は留まり
留まることをやめようとしない

そして
去り行く君よ
私は留まることを日々とし
日々、留まることで
私は留まるのだ
2001/10/25 (Thu)
雨の粒たちが描く
池の波紋を見ながら
保育園からの帰り道
娘は赤い小さな傘をさして
唇をぎゅっと結んで

最近、娘の話題といえば
明日の遠足のことばかり
弁当のおかずの注文とか
当日の集合時間とか
加奈ちゃんと手をつないで行くことだとか

明日は雨のち晴れの天気予報
帰ったら照る照る坊主でも作ろうか
出かかった言葉は
そのまま飲み込み
雨かもしれないね、と

夕食の間
娘はひととおり今までのおさらいをし
私と女房はいい加減うんざりし
いつもより1時間早く寝かせると
女房は弁当の下準備を始め
私は娘のビー玉で
照る照る坊主を作っても
頭だけが小さくて

窓を開ければ
相変わらずの雨模様
それでも
若干、雨脚が弱まったように見えたのは
多分気のせい

2001/10/25 (Thu)
ママ、雪が降ってきたよ
その晩、子供は
雪だるまをつくる夢を見ました

くそっ、雪が降ってきやがった
その晩、八百屋のおじさんは
明日の売上が気になりました

ああ、雪が降ってきたなあ
降る雪を見ながら
俳人は筆をとりました

あら、雪だわ
恋人同士の二人は
そっと肩を寄せ合いました

雪とは、おあつらえ向きだ
心理学者は雪と人間心理の因果関係について
論文を書き進めました

雪が降ってきた、砲撃中止だ
指揮官は命令しました
だって、彼はロマンチストなんですよ

今夜は各地で大雪となるでしょう
天気予報士はいつものとおり
自分の仕事をこなしました
予報が的中したので少々得意げに

次の朝
平均すると
1秒間に257人が
雪で滑ったということです

ちなみに寒がりなうちの犬は
こたつに潜り込もうとするのですが
長い尻尾だけが隠れません

2001/10/23 (Tue)
彼女は悲しんでいた
彼女が頷きを繰り返すとき
僕は言葉が無力であることを知った

彼女は悲しんでいた
彼女がつくり笑いをするとき
僕は道化師の限界を知った

彼女は悲しんでいた
所詮、悲しみなんて分ち合うことはできない
そう気づいたとき
僕は恋人でなくなった

人は悲しみの前で何ができるだろう

ひとつの悲しみの前で
遥か異国のモスクにかかる月
そして満天の星々
そんなものたちを
僕は見上げていた
2001/10/22 (Mon)
時を刻まなくなった時計は

埃を被りつづけ

文字盤にひびをはしらせつづけ

金属部に錆びを附着しつづけ

部品を消失しつづける

こんなふうに
その様態を変質しつづけることで

時を刻むことを忘れようとしない

2001/10/21 (Sun)
日曜の朝刊はテレビ欄から読むのが習慣だから
新しい連続ドラマなどやっていないかどうか
いつものとおりA4サイズに畳まれた新聞をA2まで広げたとき
テレビ欄に挟まれていた1本の髪の毛を発見した

我が家で一番最初に新聞を広げたのは私だから
家族のものでないことは容易に推測できる
長さ15cmほどで色は茶
何かの拍子に自分の髪が落ちたわけではなさそうだ

そうすると、毎朝午前3時30分にスクーターで朝刊を運んでくる、
病気の母の世話をしながら、奨学金で学校に通っている
(と勝手に私が想像している)あの新聞配達員のものか
しかし、配達員の髪の毛がこんなところに入ることはないだろう

それでは、高校生の一人娘が最近妙に色気づいて困ると嘆いている
恐妻家で高所恐怖症で痛風もち
(と勝手に私が想像している)のあの配送所のおやじか
でも、あのおやじは禿げている
(町内会の会合で見たから間違いない)
従業員なら有り得る、有り得るな

いや、待て、印刷所ということはないか
朝が早くて、あーこんな仕事とっととやめたい、なんて
毎日毎日思ってたけど、あと1週間で定年退職となるとなんだか淋しいな、
まんざら悪い人生じゃなかったかもしれない、そんなふうに
印刷所のおじさんが考え深げに帽子を脱いだときにスルリと入ったのか
だめだ、だめだ、印刷の様子がわからないので具体的なイメージがわかない
だいたい、機械化が進んでいるなか、
印刷所で髪の毛が入るなんて有り得るのか

そうか、機械、機械化が進んでいるなら当然メンテが必要だろう
3年間交際した彼女に、これから私たちどうなるの、
夏の海で涙ながらにそう訴えられ、
そろそろ、俺もしおどきか、来週辺り北海道に住む彼女の両親に
「お嬢さんをください」と
挨拶に行こうか行くまいか苦悩している茶髪のエンジニアのものか

そもそも、男のものだと決めつけるのが間違いかもしれないな
最近は女性だって髪の毛が短い人もいないことは無いだろうに

とにもかくにも、目の前にある新聞を新聞として
ただ漫然と読む毎日だったが
この朝、私は新聞を新聞として読むためには
沢山の人の手から手へ渡ってくるものだということに気づき、
そして、新聞という商品の供給者側と消費者側との位置関係について
意識せざるを得なくなったのだ

よく焼けたトーストの耳をカリカリカリとかじりながら
そんな感慨にふけっているわきで
妻はその髪の毛をつまみ上げると
ティッシュぺーパーで丁寧につつんで
クマのイラストが入ったゴミ箱に捨てる
少々潔癖症の気がある彼女は
当然のごとく手を洗いに洗面所に向かった

2001/10/19 (Fri)
久しぶりに手をつないだら
きみの手はゴツゴツしています
いつもは二人の真ん中にもう一人いるから

手をつなぐ恋人たちは楽しそうなのに
僕たちはなんだかぎこちなくて
指を1本はずしてみたりとか
手首の角度をかえたりとか
掌に汗をかくのは相変わらずなんですね

僕といえば相変わらずこの不器用な手で
毎日書類をかいてます
そういえば、結婚指輪していませんね
僕がしないと怒るくせに
きみの指、太くなりすぎですよ

街角のディスプレーなんかみてると
もうすぐきみの嫌いな冬が来ます
きみへのクリスマスプレゼント、
あそこに陳列してある手袋に決めました

それと大きな花束

小さな花束

やっぱり手袋だけにしときます
2001/10/18 (Thu)
夕焼けがあまりに穏やか過ぎて
僕らは帰るべき時間だということを
忘れてしまったみたい

秋の匂いがするこの季節の風は
前日より冷気を含んでいるから
ティッシュもハンカチもない僕は
いつも垂れてくる鼻水をズーっと吸って

この町はすっかり生活圏外で
偶然二十年振りに立ち寄ってみれば
おおむね町並みも変わらず
夕暮れに吹くこの風は
微かにあの頃の匂いがしました

この夕暮れの町で
僕らは何をして遊んだのだろう
ベンチが壊れた公園
角っこの駄菓子屋
点在する田んぼや畑
走りまわった当時の影を追うのですが
網膜はとららえきれなくて

友人宅の表札はそのままでした
かちゃかちゃと食器の音が聞こえます
声はかけないで行きますね
夕げの邪魔はしたくないし
何より
どんな顔で何を話したらいいか
わからないもの

2001/10/18 (Thu)
平日のハンバーガーショップは
徐々に空席が埋まっていくというのに
目の前の原稿用紙は罫線ばかり

食欲旺盛、品行方正な女子高生を見ながら
いまだに彼女たちは
「アウグスティヌス」
なんて授業で習ってるのか、と
ふと思ったりする

学校での勉強を否定する気はないが
おかげで脳みそは
極上のフォアグラのように肥大化し
新しい言葉も知識も入りやしないから
新しい表現も出てきやしないな
フライドポテトは冷えてしなしな

ぬるくなったコーラを飲み干し
「アウグスティヌス」
と目一杯書かれた原稿用紙を丸めて
くずかごに捨てると
近くの県立図書館で
文字だらけの百科事典を枕に
昼寝する

夢の中では
「アウグスティヌス」

「アウトラロピテクス」

尽きることのない
あっちむいてホイに興じていた
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* ILLUSTRATION BY nyao *