プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
ブログ内検索
カテゴリー
月間アーカイブ
最新コメント
[09/10 GOKU]
[11/09 つねさん]
[09/20 sechanco]
[06/07 たもつ]
[06/07 宮尾節子]
最新トラックバック
カウンター


八分咲きの桜の下
和服姿の女は背を向けて立ち
振り向きかけた横顔に
光る涙がひとすじ
思わず息をのんでしまった僕は
その光景を丸めると
ポケットに入れて持ち帰り
4畳半の自室に飾った
花が満開となり
やがて散り
木漏れ日のなか
落葉を見ながら
冷たい雨に打たれても
女は樹の下で涙していた
酔っ払って帰ってきた夜も二日酔いで頭が痛い朝も味噌汁を飲んでいるときも新聞を読んでいる途中にふと見上げたときも遥か北方の空にあるオーロラを想っているときも自分の要領の悪さが嫌になったときもニュースを見ながらキャスターのすらりと伸びた脚にうっとりとしているときもどうせ真面目に読んでいる人もいないから僕の夢は世界制服だなんて言ったて誰も気づかないだろうしそうそう故郷から木箱に入ったみかんが送られてきたときも好きな人が出来たときも好きな人とお別れしたときもいつでも
女の横顔には涙が光っていた
夜は背後からやってくる 肩を叩かれ振り返れば いつも夕闇
そしてまた
桜が咲き
ある朝目を覚ますと
女はいなくなっていた
おそらく一年が経ち
涙もやっと
乾くことが出来たのだろう
ときおり髭を剃りながら
もしかしたらあの人は
父方の祖母だったのかもしれない
などと
和服姿の女は背を向けて立ち
振り向きかけた横顔に
光る涙がひとすじ
思わず息をのんでしまった僕は
その光景を丸めると
ポケットに入れて持ち帰り
4畳半の自室に飾った
花が満開となり
やがて散り
木漏れ日のなか
落葉を見ながら
冷たい雨に打たれても
女は樹の下で涙していた
酔っ払って帰ってきた夜も二日酔いで頭が痛い朝も味噌汁を飲んでいるときも新聞を読んでいる途中にふと見上げたときも遥か北方の空にあるオーロラを想っているときも自分の要領の悪さが嫌になったときもニュースを見ながらキャスターのすらりと伸びた脚にうっとりとしているときもどうせ真面目に読んでいる人もいないから僕の夢は世界制服だなんて言ったて誰も気づかないだろうしそうそう故郷から木箱に入ったみかんが送られてきたときも好きな人が出来たときも好きな人とお別れしたときもいつでも
女の横顔には涙が光っていた
夜は背後からやってくる 肩を叩かれ振り返れば いつも夕闇
そしてまた
桜が咲き
ある朝目を覚ますと
女はいなくなっていた
おそらく一年が経ち
涙もやっと
乾くことが出来たのだろう
ときおり髭を剃りながら
もしかしたらあの人は
父方の祖母だったのかもしれない
などと


ある日突然
夜空に輝く星がすべて
音符になってしまった
街中の人々は目を凝らし
よく見たが
空にあったのは
2分だの、4分だの、8分だの
そんな音符たちばかり
テレビでの専門家へのインタヴュー
天文観測者:オタマジャクシを見るために望遠鏡を覗くのではない
音楽家:あれでは不協和音だ
占星術師:今度から音符占いね
冒険家:北はどっちだ
宇宙飛行士:もう旗が立ってるじゃないか
総理大臣:早急に対策会議を設置します
ここでCM
ぱぱぱぱぱぱぱぱ ぱにっく☆は~と♪
いつでもどこでも ぱにっく☆は~と♪
あなたのそばに ぱにっく☆は~と♪
いつも元気に ぱにっ
CMのない国営放送でお楽しみください
街中が混乱し
専門家たちが当惑するなか
画面では一人の少女がアップになる
少女:お楽しみはこれからよ
テレビを見ていた人々から拍手が沸き起こる
今振り返って見ればそんな恋だった
むかし恋愛学者だったコック見習は
厨房で鍋を洗いながら
そう呟いた
夜空に輝く星がすべて
音符になってしまった
街中の人々は目を凝らし
よく見たが
空にあったのは
2分だの、4分だの、8分だの
そんな音符たちばかり
テレビでの専門家へのインタヴュー
天文観測者:オタマジャクシを見るために望遠鏡を覗くのではない
音楽家:あれでは不協和音だ
占星術師:今度から音符占いね
冒険家:北はどっちだ
宇宙飛行士:もう旗が立ってるじゃないか
総理大臣:早急に対策会議を設置します
ここでCM
ぱぱぱぱぱぱぱぱ ぱにっく☆は~と♪
いつでもどこでも ぱにっく☆は~と♪
あなたのそばに ぱにっく☆は~と♪
いつも元気に ぱにっ
CMのない国営放送でお楽しみください
街中が混乱し
専門家たちが当惑するなか
画面では一人の少女がアップになる
少女:お楽しみはこれからよ
テレビを見ていた人々から拍手が沸き起こる
今振り返って見ればそんな恋だった
むかし恋愛学者だったコック見習は
厨房で鍋を洗いながら
そう呟いた


床屋の大柄な女主人は
リズミカルなハサミ捌きで
髪を刈りそろえていく
店の奥の居宅からは
泣いている赤ん坊をあやす
姑の声が聞こえる
日曜日の昼下がり
店内には穏やかな冬の光が
差し込み
陽だまりの中
女主人はシャボンを泡立てる
私はふと想う
こうしている間にも
宇宙は膨張し続けているのだろうか、と
そして膨張しているその際と
その先にあるものについて
剃刀を顔にあてるとき
私はいつもまどろむ
赤ん坊は
泣き止んだか
泣き止んでいないか
リズミカルなハサミ捌きで
髪を刈りそろえていく
店の奥の居宅からは
泣いている赤ん坊をあやす
姑の声が聞こえる
日曜日の昼下がり
店内には穏やかな冬の光が
差し込み
陽だまりの中
女主人はシャボンを泡立てる
私はふと想う
こうしている間にも
宇宙は膨張し続けているのだろうか、と
そして膨張しているその際と
その先にあるものについて
剃刀を顔にあてるとき
私はいつもまどろむ
赤ん坊は
泣き止んだか
泣き止んでいないか


窓の外に桜が咲く頃
また会いに来ますという約束も
果たせぬまま
あなたは煙になりました
季節の移ろいとともに
桜は散るというのに
あの日の約束は散ることもせず
僕は嘘つきとして
生きています
また会いに来ますという約束も
果たせぬまま
あなたは煙になりました
季節の移ろいとともに
桜は散るというのに
あの日の約束は散ることもせず
僕は嘘つきとして
生きています


「ふ」を付けただけで
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない
「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし
「み」を付けただけで
来るのだろうか
未来は
僕の中に広がっている荒野
「こ」が「ぼ」になったら
冬の波止場で
抱きしめてあげる
不幸せになるのなら
最初から幸せなんていらない
「む」を付けただけで
秩序を失ってしまうような世界は
多分まぼろし
「み」を付けただけで
来るのだろうか
未来は
僕の中に広がっている荒野
「こ」が「ぼ」になったら
冬の波止場で
抱きしめてあげる


通勤電車の吊革につかまりながら
毎日午前3時に起床し
競馬の予想をしている
父のことを思う
書類を書く手をふと止めて
バイクで転倒し
右腕を骨折した
母のことを思う
遅い昼飯をとりながら
製薬会社の研究室で
しかめっ面をしている兄と
34で初めて身篭った
兄嫁のことを思う
故郷を思う時に浮かぶのはいつも
雨上がりの
濡れたアスファルト
毎日午前3時に起床し
競馬の予想をしている
父のことを思う
書類を書く手をふと止めて
バイクで転倒し
右腕を骨折した
母のことを思う
遅い昼飯をとりながら
製薬会社の研究室で
しかめっ面をしている兄と
34で初めて身篭った
兄嫁のことを思う
故郷を思う時に浮かぶのはいつも
雨上がりの
濡れたアスファルト


長い階段を降りて
一番深いところにある
3番線のプラットホームに立って
今日も僕は
列車に乗ることをしなかった
さっきの列車が
アメリカ行きだったら乗っていたのに
乗っていたのになあ
一番深いところにある
3番線のプラットホームに立って
今日も僕は
列車に乗ることをしなかった
さっきの列車が
アメリカ行きだったら乗っていたのに
乗っていたのになあ


矛盾した水槽の住人は
矛盾した椅子に腰掛け
矛盾したテーブルにクロスをかけ
矛盾したグラスで
矛盾したワインを飲む
矛盾した水槽の住人は
毎日が矛盾しているから
その矛盾した世界の中で
何が矛盾しているのかわからない
矛盾した水槽の外では
雪が降る
雪が降る
雪が雪として降る
こんなに雪の降る夜は
僕は矛盾した水槽の住人に
この白さを見せてあげたい
見せてあげたいのさ
あっ
あっ
あー
水槽に水を入れないで
入れないでください
魚がみんな溺れてしまいます
矛盾した椅子に腰掛け
矛盾したテーブルにクロスをかけ
矛盾したグラスで
矛盾したワインを飲む
矛盾した水槽の住人は
毎日が矛盾しているから
その矛盾した世界の中で
何が矛盾しているのかわからない
矛盾した水槽の外では
雪が降る
雪が降る
雪が雪として降る
こんなに雪の降る夜は
僕は矛盾した水槽の住人に
この白さを見せてあげたい
見せてあげたいのさ
あっ
あっ
あー
水槽に水を入れないで
入れないでください
魚がみんな溺れてしまいます