プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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ここでもういいよね
本当は家まで送りたいけど
もう
ここでいいよね
君はこの国道沿いを
あのトラックが走る方に歩いてごらん
僕は反対方向に歩いて行くから
君はこの空にある半月の
あの明るい方を持ってお行き
僕は薄っすらと輪郭をつくる
もう片ほうを持って行くから
歩き出したら決して振り返らない
それを最後の
二人の約束ごとにしよう
もう君を好きな僕はいない
もう僕を好きな君はいない
サイショニ ヤクソクヲ ヤブルノハ
キット ボク
僕の好きな君はいない
君の好きな僕はいない
本当は家まで送りたいけど
もう
ここでいいよね
君はこの国道沿いを
あのトラックが走る方に歩いてごらん
僕は反対方向に歩いて行くから
君はこの空にある半月の
あの明るい方を持ってお行き
僕は薄っすらと輪郭をつくる
もう片ほうを持って行くから
歩き出したら決して振り返らない
それを最後の
二人の約束ごとにしよう
もう君を好きな僕はいない
もう僕を好きな君はいない
サイショニ ヤクソクヲ ヤブルノハ
キット ボク
僕の好きな君はいない
君の好きな僕はいない
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川は淀み
こんなに光のない夜に
その色がわかるほど
淀み
プールから溢れたタクシーは
橋の上に停留し
「空車」の赤い文字を灯し
停留し
僕は交差点の赤信号で
立ち止まり
車など通らぬのに
立ち止まり
淀む川
停留するタクシー
立ち止まる僕
コンマ単位で夜は進むのに
僕だけが進めない
夜も川も
あのタクシーたちも
そして
交差点を渡る僕も
進んでいくというのに
淀み
停留し
立ち止まる僕だけが
日付変更線を
こえられない
こんなに光のない夜に
その色がわかるほど
淀み
プールから溢れたタクシーは
橋の上に停留し
「空車」の赤い文字を灯し
停留し
僕は交差点の赤信号で
立ち止まり
車など通らぬのに
立ち止まり
淀む川
停留するタクシー
立ち止まる僕
コンマ単位で夜は進むのに
僕だけが進めない
夜も川も
あのタクシーたちも
そして
交差点を渡る僕も
進んでいくというのに
淀み
停留し
立ち止まる僕だけが
日付変更線を
こえられない


髭を剃ろうと鏡を覗くと
白髪を一本発見した
台所と洗面所を兼ねる狭い社宅
妻は僕が髭を剃り終わるまで
朝食の準備はお預け
この部屋早く出たいね、と妻が言う
娘も来年入学だしね、と僕が答える
昨日食べたものたちは
朝一番でとっとと排出してしまった
日々消滅し増殖していく細胞たちのために
今朝もせっせと栄養を与える
僕は毎日をこなす
その事実だけは
昨日も、今日も、明日も
多分変わらない
いつもは右足から履く靴を
今日は左足から履いた
いってきます、と僕が言う
いってらっしゃい、と妻が答える
ドアを開ければ風は昨日より冷たい
そろそろコートでも出そうか、出すまいか
この季節はいつも悩む
白髪を一本発見した
台所と洗面所を兼ねる狭い社宅
妻は僕が髭を剃り終わるまで
朝食の準備はお預け
この部屋早く出たいね、と妻が言う
娘も来年入学だしね、と僕が答える
昨日食べたものたちは
朝一番でとっとと排出してしまった
日々消滅し増殖していく細胞たちのために
今朝もせっせと栄養を与える
僕は毎日をこなす
その事実だけは
昨日も、今日も、明日も
多分変わらない
いつもは右足から履く靴を
今日は左足から履いた
いってきます、と僕が言う
いってらっしゃい、と妻が答える
ドアを開ければ風は昨日より冷たい
そろそろコートでも出そうか、出すまいか
この季節はいつも悩む


今日も西日が
本の背表紙を焼き
私は一人
サイダーを飲んでいます
サイダーの
炭酸の
その口の
中で奏でられる
シュワシュワシュワ
というのを聴きながら
チェアに一人
腰掛けているのです
チェアに腰掛けながら思うのは
今日のこと
昨日のこと
ちょっと前のこと
かなり前のこと
ああ、ずっと前のこと
思い出して
どうということは無いのですが
ただただ
ペラペラペラ
と捲るものを捲って
赤く染まる手をみながら
コップの中の泡
そして泡を見ながら
ペラペラペラと
やっているのです
思い出せる一番古いのは
薄暗い部屋で
家族と夕食を食べながら
泣いている私
一番新しいのは
西日のあたる部屋で
チェアに腰掛けながら
赤く染まる手や泡や本を見ている私
思い出すのは
今日のこと
昨日のこと
ちょっと前のこと
かなり前のこと
ああ、ずっと前のこと
そんなふうにひととおり
掻い摘んで思い出すと
私は閉じるものを閉じて
最後の一口を飲み干すのです
西日の中では
舞い立つ埃たちが
キラキラキラと
舞い立っているのです
もう一本持ってきてくれないか
そうか、誰もいないのですね
サイダーを飲みましょう
サイダーを
新しいのを飲みながら
もう私は捲らないので
もう閉じることもせずに
今日一日の残りの時間を
ユルユルユルと
過ごすのです
深く深く深く進行して行く
夜を
そして夜を
ユルユルユルと
過ごすのです
本の背表紙を焼き
私は一人
サイダーを飲んでいます
サイダーの
炭酸の
その口の
中で奏でられる
シュワシュワシュワ
というのを聴きながら
チェアに一人
腰掛けているのです
チェアに腰掛けながら思うのは
今日のこと
昨日のこと
ちょっと前のこと
かなり前のこと
ああ、ずっと前のこと
思い出して
どうということは無いのですが
ただただ
ペラペラペラ
と捲るものを捲って
赤く染まる手をみながら
コップの中の泡
そして泡を見ながら
ペラペラペラと
やっているのです
思い出せる一番古いのは
薄暗い部屋で
家族と夕食を食べながら
泣いている私
一番新しいのは
西日のあたる部屋で
チェアに腰掛けながら
赤く染まる手や泡や本を見ている私
思い出すのは
今日のこと
昨日のこと
ちょっと前のこと
かなり前のこと
ああ、ずっと前のこと
そんなふうにひととおり
掻い摘んで思い出すと
私は閉じるものを閉じて
最後の一口を飲み干すのです
西日の中では
舞い立つ埃たちが
キラキラキラと
舞い立っているのです
もう一本持ってきてくれないか
そうか、誰もいないのですね
サイダーを飲みましょう
サイダーを
新しいのを飲みながら
もう私は捲らないので
もう閉じることもせずに
今日一日の残りの時間を
ユルユルユルと
過ごすのです
深く深く深く進行して行く
夜を
そして夜を
ユルユルユルと
過ごすのです


あの夜
たしかに家出は決行された
両親が寝静まるのを待ち
四つ離れた兄は大学生で
もう家にはおらなかった
荷物は何も持たず
ズボンのポケットに
ありったけの小銭と札
そして中也の詩集をしのばせたあの夜
たしかに家出は決行された
目指したのは夜汽車
その硬いシートにもたれながら
車内に客はまばら
窓に映る自分の顔は青白く
カタコトカタコトと揺られ
寝る
眠る
結局、この未成熟な詩人気取りは
町内を歩き回り
公園のベンチで
薄暗い街灯の下で
折り目と手垢だらけの詩集を読んで
帰宅した
以来、夜になると時折
心は徘徊し
彷徨し
乗ることの出来なかった夜汽車に
乗り込む
結婚し
子供が産まれ
そろそろ家でも建てるかと算段し始めた今でも
それは
変わらない
たしかに家出は決行された
両親が寝静まるのを待ち
四つ離れた兄は大学生で
もう家にはおらなかった
荷物は何も持たず
ズボンのポケットに
ありったけの小銭と札
そして中也の詩集をしのばせたあの夜
たしかに家出は決行された
目指したのは夜汽車
その硬いシートにもたれながら
車内に客はまばら
窓に映る自分の顔は青白く
カタコトカタコトと揺られ
寝る
眠る
結局、この未成熟な詩人気取りは
町内を歩き回り
公園のベンチで
薄暗い街灯の下で
折り目と手垢だらけの詩集を読んで
帰宅した
以来、夜になると時折
心は徘徊し
彷徨し
乗ることの出来なかった夜汽車に
乗り込む
結婚し
子供が産まれ
そろそろ家でも建てるかと算段し始めた今でも
それは
変わらない


カツレツは
ベジタリアンが食べてくれないのが悲しくて
もやしは
野菜嫌いの子供が食べてくれないのが悲しくて
二人は一つになって
「もやしカツレツ」になりました
二人はとても意味のあることをしたのだ、と
喜んだのですが
結局、ベジタリアンも
野菜嫌いの子供も
食べてくれなくて
なんて意味の無いことをしてしまったのか、と
たいそう嘆きました
こうして生ごみになった二人は
ごみ焼却場で灰になりました
灰になった二人は
リサイクルされてスラグになり
道路として使われました
二人はこれはやはり意味のあることだったのだ、と
たいそう喜びました
道路を使うドライバーにしてみれば
リサイクルスラグかどうかなんて
さして意味のあることではないのですが
それは二人の知らぬこととしておきましょう
ベジタリアンが食べてくれないのが悲しくて
もやしは
野菜嫌いの子供が食べてくれないのが悲しくて
二人は一つになって
「もやしカツレツ」になりました
二人はとても意味のあることをしたのだ、と
喜んだのですが
結局、ベジタリアンも
野菜嫌いの子供も
食べてくれなくて
なんて意味の無いことをしてしまったのか、と
たいそう嘆きました
こうして生ごみになった二人は
ごみ焼却場で灰になりました
灰になった二人は
リサイクルされてスラグになり
道路として使われました
二人はこれはやはり意味のあることだったのだ、と
たいそう喜びました
道路を使うドライバーにしてみれば
リサイクルスラグかどうかなんて
さして意味のあることではないのですが
それは二人の知らぬこととしておきましょう


総てのものに意味は無い
一方で
意味の無いものはこの世に無い
そんな二律背反について考えながら
金曜日の正午すぎ
古本屋に行った
いま食ったカツレツが
末端の細胞まで届くのに
どれくらいの時間を要するのか
知りたくて
一方で
意味の無いものはこの世に無い
そんな二律背反について考えながら
金曜日の正午すぎ
古本屋に行った
いま食ったカツレツが
末端の細胞まで届くのに
どれくらいの時間を要するのか
知りたくて


誰が悪いわけでもなく
何が悪いわけでもない
こんな、どうでもいいことは
あえていうなら
沈む夕日のせい
昇る朝日のせい
青い空のせい
その下で寄せて返す
白い波のせい
昨日読んだ
「月と6ペンス」のせい
隣のおやじの
歯槽膿漏のせい
その程度のことなんだ
こんな、どうでもいいことは
だから、気にしない
何が悪いわけでもない
こんな、どうでもいいことは
あえていうなら
沈む夕日のせい
昇る朝日のせい
青い空のせい
その下で寄せて返す
白い波のせい
昨日読んだ
「月と6ペンス」のせい
隣のおやじの
歯槽膿漏のせい
その程度のことなんだ
こんな、どうでもいいことは
だから、気にしない