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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
56
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2011/06/25 (Sat)
 
 
カバンを抱えて人を待っている
いつしかカバンから手足が生えてくる
カバンに抱えられる
私の手足は引っ込む
カバンが私のファスナーを開ける
あんなにあった体の中身がなくなっている
最初から何もなかったのかもしれない
カバンは自分の中身を
空っぽの私に移す
いろいろなものの角があたって
内側から痛い
雨が降り始める
濡れないようにしてくれたのだろうか
ぎゅっと抱きしめられる
 
  
 
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2011/06/23 (Thu)
 
 
粒の中に
粒、ずっと粒
惑星のように
ささやくと
平たくなる
蟹になる
蟹はハサミを見ている
ハサミの向こうに海
海からの風
でもハサミだけ見ている
ハサミに刻まれた
ぼんやりとした名前
生きた証にもならない
国語が得意だから
ノートは漢字だらけ
誉めてくれた先生も
今は知らないどこかの粒の中で
板書をしている、と聞いている
ウミネコを見ている、と聞いている
ウミネコの鳴き声に
蟹は穴へと入る
穴は産道に似ている
産道など蟹は通ったこともないのに
それでも惑星は蟹を包みこむ
街は今日もラブソングが溢れ
優しさに満ちている
そのことが少し恥ずかしい
杖をついたお年寄りが
小さく悪態をついて立ち去る
はずれの方に
夕べ呟いた独り言のような
虹がかかっている
  
  
 
2011/06/20 (Mon)
 
 
洗濯物を畳む
隣では母が洗濯機を畳んでいる
自分で洗濯物も畳めないほど
すっかり老いてしまった

母は工具等を手にしながら
ここはどうするの
と時々聞いてくる
面倒くさくて
聞こえない振りや
生返事をしたりする
昔から親子だった
そしてこれからも

夜になると一人で
畳まれた洗濯機を元に戻す
明日また、母が畳めるように
最初は三時間以上かかっていたのが
近頃は一時間位で済むようになった
  
 
2011/06/19 (Sun)
 
 
歯を磨いた
言い訳をした
良い年をして
どちらもまだ
得意ではない
食事をすれば
食べ物をこぼす
箸の持ち方は
三年前に直した
誰も傷つけることなく
誰から見ても正しいことを
一度で良いから
しておきたかった
 
 
2011/06/15 (Wed)
 
 
ノートの中で消えかけている
紫陽花の履歴
錆びた機器類は蓄電されることなく
表面積のすべてが風に接している
 
人の断面には形容詞が無い
優しさを語ることに対して
まだ臆病だから
 
停滞した前線による雨が
空へと墜落していく
肉厚の葉をもつ観葉植物の側で
七十九歳になった重雄くんが
お母さんに会いたい、
と泣いた
  
 
2011/06/09 (Thu)
 
 
先生、バナナはおやつに入りますか
バナナはおやつに入れますか
入ってもいいですか
構いませんか、そう思っても
皮はついていていいですか
それとも皮はむきますか
皮はむけますか
川は今日も流れていますか
いいえ、川の話はしていません
ガンジス川の水はもう飲みたくありません
インダス川の水はまだ飲んだことがありません
世界中の人々が川の水を汲んでいる間
世界中の牛は皮に加工されている
って本当ですか
先生、そんな話じゃありません
それを話、と人は呼びません
それともおやつはバナナに入りますか
入れますか、バナナの仲間に
もしくはバナナの奥深くへと
おやつは好きですか
おやつは嫌いですか
好き嫌いをしてはいけない、というなら
おやつは好きでも嫌いでもありません
だからおやつを持って行っていいですか
バナナもいいですか
それは遠足ですか
先生、遠足はいつですか
何時間後ですか
何ヵ月後ですか
遠足はあるのですか
もしあるのなら
そこに僕はいますか
いますか、誰か見つけてくれますか
みんな見つけるのに飽きて帰って行きますね
背中を忘れずに帰っていきますね
先生はバナナの絵を描いてください
僕は足の絵を描きます
この足で行きます
この足で遠足に行きます
蝉も捕まえていいですか
たくさん捕まえていいですか
そして目的地に着いたら
バナナを逃がしてもいいですか
命のあるうちに
  
 
2011/05/29 (Sun)
 
 
カブトムシのような角を頭につけたい
と、ネコが駄々をこねる
説き伏せてミニカーの助手席に押し込む
おもちゃだからエンジンはないけど
ぼくはハンドルを握り
海岸沿いのフラワーラインを走る
ねえ、ネコを飼うってどんな気持ち?
ネコは何度も聞いてくる
難しい質問だね
と頭をひねっているうちに
ネコはすっかり飽きてしまったようで
カーステレオもないけど
音楽をかける
いい歌だね
いい歌だね
ふたりで笑う
ミニカーをとめて砂浜に降りる
ネコは助手席で丸くなって眠っている
小さなカニを両手ですくって
離す
また捕まえて、離す
何回か繰り返す
そんな些細なことでも
死ぬ前にやっておきたいことが
たくさんある
 
 
2011/05/26 (Thu)
 
 
リンカーン・ヘアのきみが
動物園に忘れ物をして
糸電話で通信している
ノルウェーの森
パジャマに縫いつけられた
イカの一夜干しを
かじりながら
 
地元の英雄に
さい銭を投げつける子どもたち
買ってきたナメクジの専門書に
付箋を付けるのに飽きて
きみはただクッキーの空箱を
壊し続けた
 
プライバシーをはぎ落された犬が
エッフェル塔を背負って
岬を走る
影踏み遊びできみに回ってくるのは
いつも桜の木の役目ばかり
ミジンコが顕微鏡で
自分の手相を覗き込んでいる
涼しい午後
 
きみは夜遅くまで仕事をする
残業をする
夕食はとらない、集中力が切れるから
一人、また一人と帰宅していく
最終列車が発車する合図が鳴り響く
もちろん、きみのところには届かない
自席で仮眠をとる
おやすみ
ぼくらは疲れている
  
 
2011/05/24 (Tue)
 
 
家族が寝静まった頃
ぼくらはそれぞれの家を出た
ぼくはミルクチョコレートを持って
きみは水筒に氷と麦茶を詰めて
二人で村田川の護岸に膝を抱えて座った
今日は手を握ろう、と思ってきたのに
次から次へと言葉がでるばかりで
そんなことも忘れてしまった
話したいことがたくさんあった
自分のことをしゃべり続けた、初恋

ドブの臭いがした
暗闇は優しく周囲を包み
川の汚さを見せなかった
聞いているきみの顔も
しゃべり続けて泣きそうなぼくの顔も
麦茶はよく冷えていた
冷えた口に放り込んだチョコレートは
うまく溶けなかった
話したいことがたくさんあった
きみも話したいことがたくさんあったはずなのに
自分のことをしゃべり続けた、初恋

きみが何で来たのか考えもしなかった
自分の弱さを正しいものと思い
きみが時折見せる弱さにうろたえるだけだった
最後まで手もつなぐことなく終わった
最後まで何も包み込むことなく終わった
すべて、初恋
もう思い出すこともなくなってきた、初恋
  
  
 
2011/05/22 (Sun)


犬も歩けば棒に当たるそうです
眠ることが下手な人が
こっそりと教えてくれました
でも、僕は何もしてあげられません
犬が棒に当たる様子を黙って見ているか
背後にその音を聞くくらいのことしか
僕にはできません
できないのです
それでもせめて前もって
棒を抜いておいてあげれば良いのですが
すべての棒を抜いておくことは不可能ですし
すべての棒が抜いて良いものとも限りません
その棒がなければ困る人もいるでしょう
その棒がなければ困る犬もいるでしょう
犬が棒に当たれば棒だって多少は傷つくでしょう
もし犬と同じように命などがあれば
痛みだって感じるでしょう
だからせめて僕は願います
犬が棒に当たらないことを
この話が嘘である、
ということを本当は願いたいのですが
それではこの話を教えてくれた人が
嘘つきになってしまいます
僕は嘘つきは嫌いではありません
嘘をつくにはやむを得ない理由があるからです
あえて僕は断言します
理由のない嘘などこの世にはない、と
根拠も無く言います
理由のない嘘などこの世にはない、と
僕は願い
僕は願いません
近所から新聞受けを開ける音が聞こえてくる
まだ薄暗い、そんな明方です
どうか、犬が歩いても棒に当たりませんように
走っても棒に当たりませんように
もし当たったとしても
その何倍もの良いことが犬や棒にありますように
どうか、これからの時間
ほんの少しでも上手に眠れますように
 
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* ILLUSTRATION BY nyao *