プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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窓ガラスがケラケラ笑うので
つられて笑った拍子に
右手にコンパスを刺してしまった
ついでに半径5センチ程の円を描こうとしたが
うまく描けないものだから
窓ガラスはいっそう声を高くして笑う
さすがに今度はこっちも頭にきて
ミニカーを投げつけ割ってやった
破片はケラケラと日の光を反射して
二度と笑うことはなかった
友だちが一人やってきて
窓ガラスが割れているね、と
悲しそうに言う
その日は一日二人並んで
割れた窓から外を眺めて過ごした
つられて笑った拍子に
右手にコンパスを刺してしまった
ついでに半径5センチ程の円を描こうとしたが
うまく描けないものだから
窓ガラスはいっそう声を高くして笑う
さすがに今度はこっちも頭にきて
ミニカーを投げつけ割ってやった
破片はケラケラと日の光を反射して
二度と笑うことはなかった
友だちが一人やってきて
窓ガラスが割れているね、と
悲しそうに言う
その日は一日二人並んで
割れた窓から外を眺めて過ごした
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ポストになりたくて男は
ポストの隣に立ち大きく口を開けた
ご丁寧に首から
「本物のポストです」
と札もぶら下げてみた
けれど誰も手紙を入れてはくれない
華やかに装った初老の女性も
悲しげな顔をした中年男性も
みな素通りして隣のポストに手紙を入れる
それどころか数度来た集配人すら
中を確認しようとはしない
日が暮れかけたころ
手の届かない女の子から手紙を受け取り
男は偽物のポストに入れたあげた
女の子は小さな声でお礼を言った
男は言葉の意味がすっかりわからなくなっていた
その晩 男は夢の中で大きなクジラになり
ゆう然と泳ぎもしたが
海はどこにも続いてなかった
ポストの隣に立ち大きく口を開けた
ご丁寧に首から
「本物のポストです」
と札もぶら下げてみた
けれど誰も手紙を入れてはくれない
華やかに装った初老の女性も
悲しげな顔をした中年男性も
みな素通りして隣のポストに手紙を入れる
それどころか数度来た集配人すら
中を確認しようとはしない
日が暮れかけたころ
手の届かない女の子から手紙を受け取り
男は偽物のポストに入れたあげた
女の子は小さな声でお礼を言った
男は言葉の意味がすっかりわからなくなっていた
その晩 男は夢の中で大きなクジラになり
ゆう然と泳ぎもしたが
海はどこにも続いてなかった


玉ねぎが自分で自分の皮をむいている
オレハ ドコニイルノダロウ
いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける
オレハ イッタイ ドコニイルンダ
その間にも地では虫が低く鳴き
空ではいくつかの星が流れている
とうとう玉ねぎはすべての皮をむき終え
茫然と立ちつくした
オレガ ドコニモイナイノハ ワカッタ
ソレナラバ オレガ ドコニモイナト ワカッタ オレハ
イッタイ ドコニイルンダ
翌朝 台所でばらばらになっている玉ねぎを見ると
その家の女房は気味悪がってすべて捨てた
どうせ昨夜何かあったんだろう と夫は呑気に言った
いずれにせよ
メタファーなどなくても生きていけるという点において
二人とも共通して同じだった
オレハ ドコニイルノダロウ
いくらむいても自分は出てこない
それでも玉ねぎは自分をむき続ける
オレハ イッタイ ドコニイルンダ
その間にも地では虫が低く鳴き
空ではいくつかの星が流れている
とうとう玉ねぎはすべての皮をむき終え
茫然と立ちつくした
オレガ ドコニモイナイノハ ワカッタ
ソレナラバ オレガ ドコニモイナト ワカッタ オレハ
イッタイ ドコニイルンダ
翌朝 台所でばらばらになっている玉ねぎを見ると
その家の女房は気味悪がってすべて捨てた
どうせ昨夜何かあったんだろう と夫は呑気に言った
いずれにせよ
メタファーなどなくても生きていけるという点において
二人とも共通して同じだった


野生のスープは養殖ものよりうまい
そう言って男たちは森に入っていった
そしてたくさんのスープを摘んで帰ってくると
順番に三枚におろして
色々な調味料で味付けをし
煮て、焼いて、蒸して
こねくり回して、素揚げにしていく
でもどうせスープなんだから最後は飲むのだと
知っている妻たちは
黙って海を見たり
靴を揃えたりしている
そう言って男たちは森に入っていった
そしてたくさんのスープを摘んで帰ってくると
順番に三枚におろして
色々な調味料で味付けをし
煮て、焼いて、蒸して
こねくり回して、素揚げにしていく
でもどうせスープなんだから最後は飲むのだと
知っている妻たちは
黙って海を見たり
靴を揃えたりしている


一限目 数学
ただ何事も無かったかのように
男は黒板に数式を書き足していく
黒板がすべて埋まると消して
再び数式を書き始める
数人の未成年がノートに書き写していくが
誰も男の背中を思い出さない
その間にも校庭の隅に百葉箱はあって
やはり何事も無い
近くにはどこまで行っても交わらない直線のように
幾つかの影が平行に並んでいる
二限目 現代文
教えるべき男は膨張する宇宙に足をとられて遅刻
教室の中央では蟻が行列を作っていて
日直の一人が涙を流しながら順番に潰している
部屋には潰された蟻の臭いが充満し
誰かが息を止めれば皆窒息してしまうから
誰もが呼吸を止めない
もう一人の日直が
昨日転校してきた人を保健室へと運ぶ
三限目 英語
ぬる
ぬるぬるだねえ
国際化の波がここまで押し寄せてきた好例だねえ
この国際化はぬるぬるだねえ
教卓がぬるぬるだねえ
リピートアフタアミーがぬるぬるだねえ
どこまで行っても救いが波みたいに続いている
確かにぬるぬるで
ぬるぬるでした
四限目 我が国における雇用の実態について
大きな木の下で女と男が出会う
二人は熱く抱擁し全裸になると
隅々までお互いの体を舐め回す
坂道を
自動車の無いタイヤが転がっていく
女も男もやがていなくなるまで
生きた
昼休みそして五限目以降
風を追いかけていく小人の足跡のように
あっ気なく省略されて
既に跡形もない
酋 長「そうかもしれない」
中年A「そうかもしれません」
ゆう子「気安く触らないでください」
まだ教室にたどり着けない現代文の男が
赤く錆び付いたまま小さく言葉を発した
ただ何事も無かったかのように
男は黒板に数式を書き足していく
黒板がすべて埋まると消して
再び数式を書き始める
数人の未成年がノートに書き写していくが
誰も男の背中を思い出さない
その間にも校庭の隅に百葉箱はあって
やはり何事も無い
近くにはどこまで行っても交わらない直線のように
幾つかの影が平行に並んでいる
二限目 現代文
教えるべき男は膨張する宇宙に足をとられて遅刻
教室の中央では蟻が行列を作っていて
日直の一人が涙を流しながら順番に潰している
部屋には潰された蟻の臭いが充満し
誰かが息を止めれば皆窒息してしまうから
誰もが呼吸を止めない
もう一人の日直が
昨日転校してきた人を保健室へと運ぶ
三限目 英語
ぬる
ぬるぬるだねえ
国際化の波がここまで押し寄せてきた好例だねえ
この国際化はぬるぬるだねえ
教卓がぬるぬるだねえ
リピートアフタアミーがぬるぬるだねえ
どこまで行っても救いが波みたいに続いている
確かにぬるぬるで
ぬるぬるでした
四限目 我が国における雇用の実態について
大きな木の下で女と男が出会う
二人は熱く抱擁し全裸になると
隅々までお互いの体を舐め回す
坂道を
自動車の無いタイヤが転がっていく
女も男もやがていなくなるまで
生きた
昼休みそして五限目以降
風を追いかけていく小人の足跡のように
あっ気なく省略されて
既に跡形もない
酋 長「そうかもしれない」
中年A「そうかもしれません」
ゆう子「気安く触らないでください」
まだ教室にたどり着けない現代文の男が
赤く錆び付いたまま小さく言葉を発した


心臓破りの坂
に破られる心臓
そして
けたましく鳴り響く電話機
に似た形のビニール袋
に梱包された
けたましく鳴り響く電話機
の絵
も
範囲内の限りにおいては
どうにでもなる
僕が風邪をひいた時
看病してくれた君が風邪をひいた
あのまま永久に
風邪をうつしあってれば良かった
そうでなければ
誰にも看病されること無く
二人とも死んじゃえば良かった
首都高をいくら走っても
首都高にはなれなかった
あの日
という名の
その日
に破られる心臓
そして
けたましく鳴り響く電話機
に似た形のビニール袋
に梱包された
けたましく鳴り響く電話機
の絵
も
範囲内の限りにおいては
どうにでもなる
僕が風邪をひいた時
看病してくれた君が風邪をひいた
あのまま永久に
風邪をうつしあってれば良かった
そうでなければ
誰にも看病されること無く
二人とも死んじゃえば良かった
首都高をいくら走っても
首都高にはなれなかった
あの日
という名の
その日


横断歩道の真中で
持ち主を失った目覚し時計が鳴っている
この世のどこかにはそんな交差点があって
生きている人間は普通に呼吸しながら
もう生きていけない人間に
静かな止めを刺しているんだろう
人は人の悲しみを背負うことなどできない
一足の靴にまつわる幸せな嘘が書き連ねられた
紙ナプキンをたたみ
富沢さんは
国際空港から発つ
持ち主を失った目覚し時計が鳴っている
この世のどこかにはそんな交差点があって
生きている人間は普通に呼吸しながら
もう生きていけない人間に
静かな止めを刺しているんだろう
人は人の悲しみを背負うことなどできない
一足の靴にまつわる幸せな嘘が書き連ねられた
紙ナプキンをたたみ
富沢さんは
国際空港から発つ


僕らはいつまで子供でいるというのか
100メートル競争に出場したままゴールから帰って来ない少年
給食を食べ続けたまま昼休みの教室から帰って来ない少女
草原では僕の生家が新たな生家産み続けているから
交差点では君の両親が入水の準備をしているから
辞書の中では世界の模倣が始まっているから
恐くて
僕らはまだ出会うことができない
恐いから子供でいるのは嫌だよ
もうこんな子供でいるのは嫌だよ
あの犬や猫のように早く大人になりたいよ
「なれません」
そして早く君と出会いたい
「無理です」
ミイラを取りに行ってミイラになれないまま僕は帰宅
君は優しく「おかえりなさい」を言ってくれるけど
二人はまだ出会ってないから君のお鍋の中はいつも空っぽ
いつ出会うことができるんだろうね、という風の口癖を真似ると
手をつないだ僕らはアンモニアのプールで青焼きの設計図になる
むしろその前に美しい溺死体になる
本当はまだ子供でいたいよ
僕は君の何も知りたくないよ
僕は僕の何も知りたくないよ
「知ってください」
人気の無い陸橋の上
人気の無い車の屋根や人気の無い人を見送りながら
ファースト・キスで僕らは確定される
そして静かに君の精通が始まり
僕は初潮をむかえる
100メートル競争に出場したままゴールから帰って来ない少年
給食を食べ続けたまま昼休みの教室から帰って来ない少女
草原では僕の生家が新たな生家産み続けているから
交差点では君の両親が入水の準備をしているから
辞書の中では世界の模倣が始まっているから
恐くて
僕らはまだ出会うことができない
恐いから子供でいるのは嫌だよ
もうこんな子供でいるのは嫌だよ
あの犬や猫のように早く大人になりたいよ
「なれません」
そして早く君と出会いたい
「無理です」
ミイラを取りに行ってミイラになれないまま僕は帰宅
君は優しく「おかえりなさい」を言ってくれるけど
二人はまだ出会ってないから君のお鍋の中はいつも空っぽ
いつ出会うことができるんだろうね、という風の口癖を真似ると
手をつないだ僕らはアンモニアのプールで青焼きの設計図になる
むしろその前に美しい溺死体になる
本当はまだ子供でいたいよ
僕は君の何も知りたくないよ
僕は僕の何も知りたくないよ
「知ってください」
人気の無い陸橋の上
人気の無い車の屋根や人気の無い人を見送りながら
ファースト・キスで僕らは確定される
そして静かに君の精通が始まり
僕は初潮をむかえる


自転車にひょっとこ
荷台ボロボロ
俺、激しくペダル
自転車にひょっとこ
走れ
俺号
うおーっ、うおーっと雄叫び
おまえの背中が春に似ていて、俺
自転車にひょっとこ
泣けるねえ、泣けるよ
口笛は吸っても音が出ますよ、と
シソーノーローのひょっとこ
つまるところ俺のフットは
ペダルの上
自転車にひょっとこ
湿布貼っとこ
自転車にひょっとこ
愛は突然かもしれねえが
突然は愛なんかじゃない
って本当?ひょっとこ?
おまえ本物じゃねえだろ
自転車にひょっとこ
時には歯切れの悪さも必要です
確かに必要で
自転車にひょっとこ
した
自転車にひょっとこ
何だかウキウキしてきたぞー
目は血走ってるけどねー
(鏡で見たらねー)
自転車にひょっと
こ
で、話の続きですが
俺、泣いてる、激しく夏の炎天下
右手にこん棒を持たずに
左手にパンタグラフを持たずに
気がつくといつも何も無じゃあないか
気がつくと口が
ニュウって突き出してるじゃないか
うおーっ、うおーっという雄叫びも
軽やかに俺の発語でした
自転車にひょっとこ
あるものはある
ないものはない
そんなつまらないことを確認するために
俺たちは生まれてきたのでしょうか
ねえ、Myひょっとこちゃん
荷台ボロボロ
俺、激しくペダル
自転車にひょっとこ
走れ
俺号
うおーっ、うおーっと雄叫び
おまえの背中が春に似ていて、俺
自転車にひょっとこ
泣けるねえ、泣けるよ
口笛は吸っても音が出ますよ、と
シソーノーローのひょっとこ
つまるところ俺のフットは
ペダルの上
自転車にひょっとこ
湿布貼っとこ
自転車にひょっとこ
愛は突然かもしれねえが
突然は愛なんかじゃない
って本当?ひょっとこ?
おまえ本物じゃねえだろ
自転車にひょっとこ
時には歯切れの悪さも必要です
確かに必要で
自転車にひょっとこ
した
自転車にひょっとこ
何だかウキウキしてきたぞー
目は血走ってるけどねー
(鏡で見たらねー)
自転車にひょっと
こ
で、話の続きですが
俺、泣いてる、激しく夏の炎天下
右手にこん棒を持たずに
左手にパンタグラフを持たずに
気がつくといつも何も無じゃあないか
気がつくと口が
ニュウって突き出してるじゃないか
うおーっ、うおーっという雄叫びも
軽やかに俺の発語でした
自転車にひょっとこ
あるものはある
ないものはない
そんなつまらないことを確認するために
俺たちは生まれてきたのでしょうか
ねえ、Myひょっとこちゃん


春の偏西風が吹いて反芻は加速度を増す
牧場は世界との境界線を更に曖昧にする
牛飼いは牛の記憶を朗読している
元牛飼いはふと乗り換えるべき駅を間違えている
世界で最も模範的な牛に関する解答が
牛を知らない採点官によって焼却されている
その向こうの小高い丘の上では
僕の大切な人が両手を広げて空を見失う
僕は傷のない右手で美しい千摺りに明け暮れたまま
いったい何頭の牛とやっちまったというのか
牛の絶叫が僕の口の中で柔らかな繊維質となる
存在しない牛が存在しない草を食んでいる
そんな存在しない寓話を存在しない僕が書き続けている
もう牛のために
これ以上僕を探すな
牧場は世界との境界線を更に曖昧にする
牛飼いは牛の記憶を朗読している
元牛飼いはふと乗り換えるべき駅を間違えている
世界で最も模範的な牛に関する解答が
牛を知らない採点官によって焼却されている
その向こうの小高い丘の上では
僕の大切な人が両手を広げて空を見失う
僕は傷のない右手で美しい千摺りに明け暮れたまま
いったい何頭の牛とやっちまったというのか
牛の絶叫が僕の口の中で柔らかな繊維質となる
存在しない牛が存在しない草を食んでいる
そんな存在しない寓話を存在しない僕が書き続けている
もう牛のために
これ以上僕を探すな