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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2004/09/02 (Thu)
二時間待たされたあげく
僕はタクシーの助手席に通された
運転席の医者がちらりと僕のお腹を見ながら
おめでたですね、と言う
何か心あたりは?
そういえば確かに最近酸っぱいものの数ばかり数えているし
犬にもよく吠えられる
ついでに言うと隣ん家の関さんは関さんなのに関サバが嫌いだし
僕の奥さんは化粧ののりが悪いと一日中文句をたれる
ちょうど三ヶ月くらいですね、このまま空港に行きます
と医者は言う
そうか高飛びしなければいけないのだなあ
流れていく景色を見ながらぼんやり考える
高飛びの資金として医者はいくらか用立ててくれた
ついでに高飛びに美女はつきものだそうで
後部座席から一番豊満な看護婦も選んでくれた
豊満なはずだ、何しろ牛なのだから
牛の手綱を引いてタラップを上がると
牛はご遠慮いただいてます
搭乗員に注意される
そんなこと言われても牛との思い出などまだ全然ないのに
淋しさのあまり尻尾の毛を引っ張ってみる
牛は解れて巻き取ると大きな毛玉になった
それならいいですと搭乗員が言うので
毛玉になった牛を持って飛行機に乗り込む
レバーとかが美味しそうな牛ですね
皆から声をかけられる
これは乳牛ですからと言うと祝福の拍手が起こる
このままどこに飛んでいくのかわからないが
今日は勝負パンツを履いているから大丈夫かもしれない

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2004/08/27 (Fri)
あの人の好きな牛乳羹を持っていくことにしました
手作りを重宝するあの人のことですから
わたしの選択肢としては何よりも手作りが一番だったのですが
朝から冷蔵庫の調子が悪いようで程よく牛乳が手に入りません
それならばせめてもと歩いて数分のところにある老舗で用事をしました
老舗の女将は気難しいことでこの界隈でも有名な人です
私とは長い付き合いになるので姉妹のように良くしてくれます
それなのに、誰からも姉妹のようだと言われたことはありません
細かく見れば爪の形とか引き際の様子とか似ているところは多々あるのですが
老舗というのはそれだけでも大変なことなのです
簡単な挨拶だけして牛乳羹をひとつ買うと
やはりわたしの作るものよりやや緩めで
タプンタプンという言葉がぴったりでしょうか
いつもタプンタプンよねえ、と女将は歯を見せて笑います
それよりもわたしは店内の塗装の剥げたところが気になって仕方がないのです
実の姉にも言ったことがないので言わないことにしています
あの人は家で地図帳を開き
頁の上を指でなぞっていました
牛乳羹だけを置いて帰るつもりでしたが
あの人がいっしょに食べていけ、と言うものですから
地図帳を見ながら二人で食べました
途中、いつもよりタプンタプンだな、という言葉に頷いたのは
ほんの少しでも似ているところがあればいいと思ったからかもしれません
気が付くとすっかり日が暮れていて
もうそんな時間ではないな
と、あの人は地図帳を閉じました
2004/08/11 (Wed)
君がいなくなってから
ごみ箱の中で
目のようなものが繁殖している
一斉にこちらを見るので
ごみを捨てるのもためらわれてしまう
部屋が散らかる前に新しいのを買いたいが
交差点では遠くから信号機が戻って来ない
大雪が降りそうな曇り空
夏に降るのは結局雨なのだろう
待ちますか?と聞いても
目のようなものには頷くべき首がない
その様子を見て
やはり待つことに決める

2004/08/04 (Wed)
男がアーモンドを食べている
鳩が集まる
男は袋の底にたまっていたかけらをまく
その腕には引っかき傷のカサブタ
良く見ると顔は左右非対称で
鼻がやや右の方に傾いている
目の下にホクロのような模様のある鳩が
少し離れたところで他のものをついばんでいる
僕はその光景を二十階の展望台から眺めていた
まあ、これといってオチの無い話だが
と言って友人は鳩料理にナイフを入れる
外では月が綺麗なのかもしれない
ひどく喉が渇く
アーモンドを食べすぎたのだ
2004/08/01 (Sun)
鈍行列車で消火活動に行きましょう
なんて、いかしたメールが
彼女から届いた
僕といえば魂は確かにあるはずなのに
それを入れる器が見つからなくて
朝からオロオロしっぱなしだ
入道雲の見える窓が備えつけられた一室
いいですか?
が口癖の人が、また
いいですか?
と言った
その鼻の頭には汗が玉となって光っている
それから十数年後
僕は慌てて彼女に返信をした
2004/07/15 (Thu)
耳の奥にある大西洋のような広い海から波音が響く 
波は切り立った崖にぶつかり白く砕け きみは毎日の新陳代謝
そしてささやかな発熱を繰り返している
切り立った崖の上にある一軒のブック・ストア
きみは思い出せない鳥を図鑑で調べる
二階からは次男が広い海へと出勤
青い空の下 今朝もしめやかに溺死する
レジに座る長女の吐く、吐く、吐く、息
そのすべてが鱗の形をしていて
さて何の魚でしょうか
クイズが発せられた瞬間
世界中の眼鏡という眼鏡が一ミリずり落ちる
瞬間 眼鏡をかけてないきみは
そのことに気づかない
という瞬間
にも
新陳代謝
そして発熱
捲られたページからは次々と鳥が飛び立つので
きみは思い出せない鳥をまだ思い出せない
扉を開ける母親 その背中にも翼
けれど扉の外は空っぽに似ているから
母親は羽ばたきを聞くばかりだ
鳥たちは波となり切り立った崖を侵食し
ブック・ストアから崩落していく言葉たち
そのいくつかが唇に漂着して
またきみの熱となる
レジの奥
卓袱台の前では このまま朝であり続けるかのように
父親がまだ生まれてないきみの名前を考えている


2004/07/10 (Sat)
今ここに熟した食べ頃のバナナがあると仮定する
しかし、そのバナナをあなたは食べることができない
何故なら
そのバナナは仮定の話の中でしか存在できないからだ
例えが悪かったかもしれない
ここに壊れてしまったピアノの玩具があったとする
いや、もうその話はやめにしよう
いずれにせよ
あなたには思い出したくないことなのだから
あなたは今日、何かに祈っただろうか
ありがとう
僕は朝からその言葉を三回ほど言った
2004/07/08 (Thu)
エレベーターに張り巡らされた毛細血管が
落下速度で波うっている
床の区画整理は大方終了し
換地では細胞がでろでろ
何故だろう
僕らはあんなにも愛し合ったというのに
上腕の発疹が赤らんでいるのは
掻きむしると雪が降った後のような匂いがして
君は北国の生まれだったね、とつぶやいてしまう
隅にあるレンガ造りの古い役場
月明かりの中で簿冊をめくる若い吏員の
指サックに刻まれている無数の暗号
キーワードはある日僕が捨てた
歩いて数分のところにある駅には深夜にもかかわらず
いつものように人々が群がり
そのすべての背中には汗が滲んでいる
どこに行くというの、落下し続けるエレベーターの中から
動物園の何も飼育されていない檻の中で携帯電話が鳴った
やがて分解されるという運命をそれは持っている
夜通しエレベーターは落下し続けるばかり
君の故郷では初雪が観測された頃だろう
眠たい眼球をこすりながら
僕らはもっと温かい場所へと落ちている
2004/06/20 (Sun)
妻と二人で梅干を漬ける
台風が近づいている
空はまだ晴れているけれど
窓から入る風は生暖かく蒸し暑い
梅の実の良い匂いがする
水洗いした梅の実をタオルで一つ一つ拭き
ヘタを楊枝でほじくるのが僕の役目だ
妻が塩梅を見ながら漬けていく
うっかり額の汗を素手でぬぐってしまい
手を洗いに行く
塩分を控えめにしたために
カビを生やして駄目にした年もあった
窓の外を見ると
日の当たる花壇では植物たちが光合成をしている
小さな虫が蜜を吸いにやってくる
その間にも僕らは
何故か生きることに多忙なのだ
2004/06/12 (Sat)
ビタミンが不足しているのは百科事典に住んでいる僕の妹
い、いえ、祖父だっただろうか、毎晩旅をするんです
一人残される僕の血糖値は急激に低下する
い、い、いいえ、血糖値が低下しているのは叔母の実の妹かもしれない
西暦1825年、ストックトンとダーリントン間に世界初の蒸気機関車鉄道が開通した
その名は「ロコモーション号」
い、い、い、いいえ、やっぱり僕の妹かもしれない、開通したのは
妹、走る、ビタミン不足のジョージ・スティーブンソンを乗せて
開かないでください、その頁は
男と女の生殖器が克明に描かれている
それを見ながら自慰をしているのはヨークシャーテリアのポチ
い、い、い、い、いいえ違います、アメリカンショートヘアのタマでした
アメリカンショートヘアのタマはいつも唇がカサカサなまま遺跡を発掘している
その唇には一頭の駱駝が昼寝をしていて、い、い、い、い、い、いいえそれは
ブロッコリー
緑に茹で上がっている
あまりに美味しそうだから父さんは賛美歌を歌いだす
履歴書を駅のベンチに忘れてきた僕の父さん、妹は毎晩旅をしています
ビタミン不足はお肌の天敵よ、が口癖の母さんは今日も北枕
その足の先にはJR内房線、そして線路を走る僕の妹、い、い、い、い、い、い、い、
いいえ、走っているのは「特急さざなみ号」だ
乗客は皆、目を瞑った等身大の埴輪、発掘者であるアメリカンショートヘアのタマは
自慰のし過ぎで存在が真っ赤に破裂してしまった
ビタミン剤を傷口に塗る僕の指先から百科事典の香り
妹よ、そろそろ帰っておいで
ブロッコリーを食べに

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* ILLUSTRATION BY nyao *