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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2005/01/26 (Wed)
脳みそが痒いな
朝から痒いな
のこぎりでギリギリと開けて
痒いところを掻きたいな
掻いたら脳みそぐちゃぐちゃになっちゃうかな
ぐちゃぐちゃになった脳みそは味噌汁になるのかな
具は何にしようかな
痒いところは前頭葉かな
図鑑がないからわからないな
図鑑はとっくに捨ててしまったな
本屋にでも行こうかな
近所の本屋はつぶれてしまったな
つぶれた後は空地になったな
空地には綺麗な花が咲いていたな
花の名前は知らなかったな
図鑑がないからわからないな
図鑑はとっくに捨ててしまったな
捨てられた図鑑はどこに行くのかな
図鑑捨て場に行くのかな
それより脳みそが痒いな
痒という字はやまいだれに羊と書くのだな
病気の羊はかわいそうだな
かわいそうな羊は売られていくのだろうな
ドナドナ
それは仔牛だったかな
図鑑がないからわからないな
図鑑はとっくに捨ててしまったな
何故捨ててしまったのかな
綺麗だったな
いろいろな色があったな
形もいろいろあったな
たくさんの耳や爪や花弁とか
いろいろな部位があったな
知りたいことが山ほどあったのにな
知りたくないことはもっとあったかもしれないな
今となってはわからないな
図鑑がないからわからないな
脳みそが痒くなかったからかもしれないな
もうとっくに捨ててわからないな

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2005/01/24 (Mon)
道路の端っこに弟が寝ていた
こんなに寒いのに
と思いながらも弟らしい寝姿に
つい笑ってしまった
半身を起こし後ろから両脇を抱え
ズルズル引きずる
小さい頃はよくおぶったものだ
気づかないうちに随分重たくなった
そういえばさっきは久しぶりに弟の靴底を見た気がする
わが国の繊維業界は冬の時代をむかえています
と今朝ニュースでやっていたが
とりあえず俺にも弟にも関係なさそうで良かった
大通りに出ると
市街地の中心部にむかって既に渋滞が始まっている
信号のボタンを押し
横断歩道をズルズル渡る
2005/01/22 (Sat)
僕のエレベーターが機能しないのですが
機能というからには昨日からなのですが
頭の毛が抜け始めたのはもっと前からなんですが
床にだらしなく広がる乳液
それは僕の止まらないサーカス
細胞を一つなくしました
とても小さな細胞でした
かつてそのゴルジ体に腰かけ
恋を語らいもしたのですが
ここが最前線かよお
最前線なのかよお
しっ!皆様お静かに!
確かにそうでした

2004/12/19 (Sun)
*は空に飛び出すと
*は*であることがいつも不思議なようだ
僕は両腕を精一杯伸ばして
それから海を囲って
さざ波にブリキ色の半月を映してみる
*は丁寧に覗き込み
綺麗だねと言う
僕も少し綺麗だと思う
*が*をゆっくりと通過していくのを見ながら
僕はまだ僕を追い越せない
鮮やかに彩色されたいくつかの砂糖菓子を
僕は埋めた
上着の端が汚れている
2004/12/17 (Fri)
男は書店で物理の参考書を買った。大学を卒業し就職して既に十数年が経っている。文系出の男にとって物理など縁遠いものであったし、特段の興味があったわけでもない。それでも男は物理の参考書を買ってしまった。「~してしまった」という衝動はきっと誰にでもあることだろう。正確に言うと「~してしまった」というのは衝動ではなく何らかの衝動によりなされた行為について後悔をもって評価することであり、それではその衝動をどのように表現したら良いのかということを考えた時、言葉というものはいつも脆弱で危うい。
それはそれとして男はその参考書のありかを持て余している。男は小学生の頃、同級生たちが持ってくる色とりどりのいい匂いのする消しゴムが欲しくて町の小さな文房具店で万引きをしたことがある。まんまとその犯罪は成功したわけであるが、良心の呵責からだろうか、戦利品を学校に持っていくことも出来ず、かといって家の者に見つかることを考えるとごみ箱に捨てるわけにもいかず、机の引出しの一番奥に仕舞い込み、二度とその消しゴムを見ようとはしなかった。その時の途方もない持て余した感覚にどこか似ていた。ただ違っていたのは、しばらく迷った挙句、男は持て余したそれを頁を一度もめくることなくにコンビニエンスストアの店先にあるごみ箱に捨てたことだ。無論、可燃ごみの方に。
その夜、男は寝床の中でまだ見たことのない生物(それは恐らく深海、若しくは高い高い空の果てに住んでいる)の輪郭を指でなぞった。見たことのないその生物は実体を有しておらずいわば概念としてのみ男の想像の中で存在した。その生物の鳴き声はやはり概念でしかなくそれは耳には響くことは無かった。その見たことの無い生物と、例えば現在居間にあるであろうリビングチェアのシルエットとの差異が男にはよくわからなかった。いや、本当はわかっている。翌朝になればごみ箱に捨てた物理の参考書がゴミの収集業者によりしかるべき場所へと運ばれることも。
さて、と突然にこの物語は終了する。人々が「物語」と称するそのほとんどすべては事実の断片にすぎない。男は参考書を捨てたコンビニで缶コーヒーと握り飯を買い、家では何度か屁をし、別れた恋人に泣きながら未練がましい手紙を書いたかもしれない。しかし、その一分一秒のすべてを物語は語ることはしない。もっと早くこの物語を終わらせても逆にあと百行続けたとしても何を語ることができるというのだろう。あなたはいつでも席を立って良かったのである。
2004/12/16 (Thu)
夜が白々と明けると通勤が俺を捲くし立て俺は走り
俺は走るが走っているのは通勤快速だ
くそっ!通勤だ
くそっ!快速だ
身動き取れないそれでも走ろうとする俺の背中にボインちゃんのボインが
ポヨンポヨンと、俺のツボを刺激し、通勤魂を激しく揺さぶり
熱を発し、息を荒げ、
行け!通勤
進め!快速
少年時代、俺は知っている川の名をひたすらノートに書き続けた
知っている川の名を書き尽くしたとき、俺は地図帳を広げ
熱を発し、息を荒げ、
知らない川の名をノートに書き続けた
青春時代と一言で総称される時代
俺はその川の名を一つずつ消しゴムで消していった
通勤快速だ!
昼休み妻の作った弁当の飯粒を数え続け青い空に卒倒していく中堅社員だ!
駅に停車するごとに通勤快速は人を吐き出し人を吸い込み
呼吸、呼吸、呼吸のリズムで
俺ははぐれないように俺自身を点呼する
くそっ!ボインちゃん
貧しい者が乗り込む豊かな者が乗り込む
豊かな者は貧しい者に手を差し伸べない貧しいものはただ欲する
俺は貧しいものにも豊かなものにもなりたくはない
俺の口は言葉を回避し放棄しただ嘔吐するためだけの器官に成り下がる
口の中に広がるのは夕べ食った明太子のプチプチだ!
やがて通勤は波となりまくら木のひとつひとつに俺の名を刻む
俺は通勤快速を愛し通勤快速のために死んでいく
このままどこに行くのかなんて考えないことだ


2004/12/10 (Fri)
あなたが徐々にしなり
あなたの腕がしやかに湾曲し始め
それが良いことであり
あるかのようにあなたの腕の湾曲を
私のここから私は俯瞰する

キトキト、糸の車
からまりほつれ
てキトキト
湾曲し始めたあなたの一部が腕として
濡れたまま夏の始めそして
終わりへと小走りに過ぎていく
腕の発疹は昨晩私が潰しておいた

羽化したばかりのゆすりか
色を思い出せずにまたしなり湾曲する
裏表紙の近くあなたの
キトキト
私はやがて位置を持たない
2004/12/01 (Wed)
国籍不明の輸送船がファミリーレストランの奥まった席で座礁した頃
辰巳台東三丁目のバス停に漂着した流れ星は音もなく発光し
あなたはまだ客室乗務員になりたての綺麗な夢の中
僕は無菌室の白いシーツの上 クリーンなサラダを食べる
おまえらも食べろ

おはようございます 出発の朝です おまえらも僕も
厳選されたクリーンな素材は朝一番の悲しみに似た喜び
終着すべきところはあやふやな形状のままイメージ
おまえらが首からぶら下げた三千円のネクタイには幾千の鞭毛や産毛びっしり
あなたを起こそうとするな その三千円のネクタイで どうかおまえら

出発の妨げとなる派手なシャツはお控えください
クリーンに あくまでもクリーンにひとつお願いします おまえら いや 僕も
料金所に停車する度に名前を失っていく僕 いや おまえらと僕と
ファースト・ネームたちはまだ眠っているあなたのミドル・ネームとなってしまった
僕は身代わりです 身代わりとして食べます クリーンに あくまでもクリーンに
それでも何と人は簡単に笑うことができるんだろう と 僕
いやいや おまえらも僕もおまえらも

目を覚ましたあなたは遮光カーテンを開ける
光が溢れたテーブルの上にはサラダ
サラダのために作られたサラダを見て少し微笑むかもしれない
ドレッシングを取りにキッチンへと行く
あなたの一日はクリーンであることが約束されている

2004/11/11 (Thu)
イエーイ! 家 
俺らのため息というため息 体毛という体毛 のすべて
には窓が取り付けられている 家
窓という窓には俺らの手形
という手形にも窓
ところどころは出窓として取り繕っております
イエーイ!

お涙頂戴 俺らが生きていくために必要な涙をくださいませんか
柱の一本一本 床板の一枚一枚が涙で出来ている
築ニ年の木造住宅なのです
通勤靴に踏まれながらも 靴下を履き続けようとする 家
バスの圧力に屈しそうになりながら なおもその存在 家
階段を降りる階段 クローゼットで待つクローゼット
家を出る家 家に入る家
イエーイ!

床屋のサインポールに朝から話しかけていたばあさん
見せたかった 家
ある日突然に星屑となった
きっと俺らはある日突然に家となる
もっと窓を作っておけば良かった
サインポールをたくさん用意しておけば良かった
抱きしめると 遺影 俺らの 遺影 俺らは 遺影
風と像の見分けがつかない

イエイ イエーイ! 家
足元に咲く花を見れば空の小ささが良くわかる
俺らはこんな小さいもののためには生きていけないねえ と 家
玄関に立ち止まれば向こう側でこっち側と鉢合わせをする 家
俺らが朝食の準備をしている間にも
今日という今日に窓を取り付けている家がある

2004/11/07 (Sun)
バス 食いてえ
ツートン・カラーとか たっぷりの水分を含んだ 薄皮に包まれて
タイヤは曲がったゴムの匂い うは やっぱり
バス 食いてえ 
運転手が禁忌する交差点の手旗信号
それはかつて僕が書きなぐった遺書の類 薄皮に包まれている
びっくり どっきり 天然素材のバス 食いてえ
おねしょが直らない俺に母親は苦い薬を飲ませ続けた
丁度その頃 浅野ゆう子の太ももに初めて勃起した 少年の魂よ
バスは食ったか
バスがバスガス爆発 したバスの 平和的有効利用を考えてくれ
バスガイドよ その悲しく澄んだ右手で薄皮を剥いてくれ
ぷるん つるん そしてその果肉を食わせてくれ
遠い砂漠で死んでいった俺の兄弟のために泣けない俺に代わって泣いてくれ
母さん 俺はもう薬なんか飲みたくねえよ 
うは バス 食いてえ
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* ILLUSTRATION BY nyao *