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こっそりと詩を書く男の人
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たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
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こっそりと詩を書く男の人
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2025/06/17 (Tue)
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2004/06/10 (Thu)
君はただひたすらに自動券売機をつくっている
外、春はとっくに酸化してしまった
困るね、こんな雨の日は
花壇に水をあげることもできない
僕の手の中で冷たくなっている冷蔵庫
その扉を開けると中から
かつてモノだったモノたちが加速度もなく溢れ出してくる

あの日、乗り物は僕らを置いて発車した
工具売り場の細い路地で迷子になっている間に
たくさんの行列と行列と行列
走り抜けて息を切らし言葉をいくつか失ったのだ
両手で耳を塞ぐ
それくらいのことしか出来なかった

雨に含まれる使われなくなった生き物のネジが
コツコツと窓ガラスを鳴らしている
ただひたすらに自動券売機をつくっている君の額から
汗がまた落ちる
一生懸命な君の横顔とそれを見ている僕
多分、これからもそう
何か足りないものがあったので
僕らは買い物にでかける


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2004/05/31 (Mon)
クリームパンの中を
一頭の牛が西から東へと旅をしていやがる
おい、こら牛、牛よ
マカロニ・ウェスタン野郎の脚をへし折ってやれ
俺は国民年金未払いだったぜ
なあ、将軍様、好きな花の名前はなんだい?
テポドーン
チンポドーン
アイ・アム・ア・ジャパニーズ
心配いらぬ、みねうちじゃ
クリームパンの中を
一頭の牛が泳いでいる
泳いでいやがるんだよ、牛が
おい、こら牛
バスタオルをフライパンにいれちゃいけねえ
カエサルのものはカエサルにだよ
お前のせいで昼と夜とが熟れた果実さ
「かじつ」といっても鹿児島実業高校のことじゃねえぞ
聞いてるのか、マカロニ・ウェスタン野郎
俺は腐ったみかんじゃねえ!
でも眼が腐ってます
眼球の中で死んだ魚のように牛がゲップして
また地球温暖化が進んじまうけど
まあいいか、みねうちだし
それよりクリームパンの中に
ジャム入れたのは誰よ

2004/05/20 (Thu)
掌の木々が育ちすぎてしまったので
部屋はまた落ち葉で満たされていく
金属疲労した喜びのような朝焼け
台所の隅にある停留所で
君は名の知らぬ街へ行くバスを待っている
その靴は曇り空の下を流れるライン川の色を湛え
僕らの「さよなら」は反転する
落ち葉の裏
もしくはその辺りで


2004/05/16 (Sun)
県立文化会館の大ホール!大ホール!大ホール!と
すっかりはしゃぎ過ぎてしまったのです
誰かサイダーを持って来てください
僕は観客席で日めくりカレンダーをめくり続けています

県立文化会館の大ホールは音響が素晴らしいので
世界中から一級建築士が集まって来るのです
また一人、また一人と舞台に上がってはお得意のパントマイムを披露するのですが
サイダーはまだでしょうか
僕の指紋はすっかり擦り切れてしまったのです

舞台の上では散乱した見えない壁や椅子が腐乱を始めています
隣の席では若い女性が美味しそうに自分の耳をかじっています
早くサイダーを持って来てください
僕も試しに自分の耳をかじってみると口から音がこぼれそうになるのです

次々と一級建築士が登場するのです
舞台から押し出された一級建築士が前列の観客と血生臭いことになっているのです
県立文化会館の大ホールは飲食禁止なのでありました!
見よう見まねのパントマイムで作ったサイダーのビンから溢れ出した泡が
熱帯性低気圧となって屋根を突き破り夜空の星を撃ち落とします
落ちた星は発芽して日めくりカレンダーをたわわに実らせるのです!
そしてまた僕は
県立文化会館の大ホール!大ホール!大ホール!と
はしゃぎながら皮膚をめくり続けます
2004/05/13 (Thu)
日曜日の午後六時三十分
サザエでございます、で始まる「サザエさん」
に新しいキャラクターが登場した
裏のおじいさんの家に下宿することとなった
私立大学生のスベスベマンジュウガニ
これから、どうそよろしくお願いします
故郷の名物である饅頭を持って磯野家に挨拶に来た
おいおい、スベスベマンジュウガニの饅頭なんて毒入りじゃねえか?
そう顔を見合わせる磯野家(一部フグタ家を含む)の人々
その沈黙を切り裂くかのように
わあ、美味しそうでしゅ
場の空気を読むことができないタラちゃんの発言に
顔をひきつらせながら、じゃあお茶でも、と立ち上がるフネ
我々がこの家族に出会えるのは日曜の午後六時三十分から七時までの僅か三十分だけであるが
彼らにも当然のことながら、一日があり、毎日があり、四季がある
波平のスベスベした頭の天辺に残った一本の毛
それはこの物語のシンボルとも言える
戦後、高度成長期、バブル、そしてその崩壊
そういった時代の荒波の中でも挫けることなく生きてきた魂である
サザエの誕生からカツオの誕生までの
おそらく十数年の間に果たして何があったのか
という疑問を抱きながらも、あの歳で二人の子作りに成功した波平、フネの夫婦に
誰もが涙し、拍手喝采を送る
この永遠に歳をとることがない家族の物語に終止符が打たれるとき
最後の一本の毛を自らの手で抜こう、と波平は決心している
そんな波平の心意気など知る由もなくスベスベマンジュウガニ氏は
ドウゾドウゾ、笑顔で饅頭を勧める
ええい、ままよ、波平は恐る恐る饅頭に手を伸ばす
家長である自分が家族を守らなければ!
その瞬間、タマにこっそりと饅頭を食べさせその安全を確認したカツオが電光石火でパクリ
2004/05/07 (Fri)
冷蔵庫の中には青空が広がっていたので
君は買ってきたゼリーを冷凍庫に入れるしかない
冷凍庫は満杯でゼリーをしまうスペースをつくるために
君は肉の塊を取り出す
いつ買った肉なのかすっかり忘れてしまっているけれど
それをレンジで解凍すると
いくつかの野菜を刻みいっしょにフライパンで炒めて
夕食の一品とする
君は冷凍庫の中でソルベ状になったゼリーの食感を空想
そして幸福感に包まれたまま冷凍庫の扉をスライドし
ゼリーを取り出す
蓋をはがすとゼリーは既に青空に侵食されている
君はシャリシャリ音をたてて青空を噛む
世界のどこかで青空が崩壊していることに気づいているのか
あるいは気づいていないのか
それはそれとして
君の薄い唇から「美味しい」という言葉がもれる

2004/04/24 (Sat)
新聞の文字列と文字列の間を地下鉄は走る
つり革につかまる僕の視界の一番隅で
ラララ、ライカは宇宙の展開図を描くことに夢中
僕たちの声は届くべきところに届いているか
ラララ、ライカ、誰かの小さな咳でその端が小さくロールしている
ラララ、ライカ、僕たちはどこに行くのだろう
地下鉄は走る、文字列と文字列の間を、ララララ、ララララ
こぼれ落ちる音符が躍り始めて
ラララ、ライカ、誰もその歌を歌いださない
ラララ、ライカ、窓の外はあの宇宙にとてもよく似ているのに
そうだよ、大好きな星がひとつも無い
僕たちの声は届くべきなのか
ラララ、ライカ、もう僕たちは宇宙には行けない
ほら、展開図はもう涙と涎でぐちゃぐちゃになって
僕の視界の一番隅で星のように光っている
だからライカ
ララララ、ララララ、早くおうちに帰ろう
2004/04/19 (Mon)
君の狐つきもすっかり板についた四月の日没さ
今日は良い天気だったんだね、ほら、宵の明星
という意味のケン、ケン、ケン、そしてJump!
君のJump!はいつもいい匂いがするね
だから僕の目はいつも君のJump!にくぎ付けだよ
そしてまたJump!

君はなんて素敵な夜行性なんだろう
二人で過ごすこの時間帯が僕は一番好きなんだ、ハニー
そんなセリフは照れくさくて口がモゾモゾするよ、そして僕のJump!
君のJump!のようにいい匂いはしないけど、僕だって跳び上がりたいさ

こうしていると時間が止まっているような気がする、その間にも
どこかで生命が誕生して、生命が消えていく、四月の日没さ
Jump!二人でJump!そんな感傷はどこかに捨ててしまえばいい、って
宵の明星にJump!

これからいっしょにご飯を食べて
(君が雑食性で良かった)
いっしょにお風呂に入って
(グルーミングの真似をすると私は猿じゃないのよ、という意味のケン、ケン、ケン)
いっしょに「恋のから騒ぎ」を見ちゃうんだろうね、僕たちは!
(幸せってなんだっけ?って昔さんまちゃんが歌ってたね)

そして、おやすみなさいのチュ!鼻が冷たくてブルブルするよ
僕が寝ている間、深夜放送を見る君!
僕がこっそりと隠しているアダルトビデオを見る君!(一人でエッチなことするの?)
お皿がうまく食器棚に入らないよ、という意味のケン、ケン、ケン、と君!
どうか君が狩りに出て怪我をしませんように、と僕はお祈りをするのさ
そして君のJump!
ほら、また、いい匂いがどこかへ運ばれていく
2004/04/15 (Thu)
春の電撃作戦。開始。
街のいたるところで僕らは耳に手をあてる
どかん
それは小さな破裂
作戦が始まった合図だ、ほら
そしてまた、どかん
コンビニで働くあの娘、最近きれいになったね
という噂はすでに街外れにある喫茶店のマスターにまで広まった
春だからさ?
けれどまだ僕らはコートを手放せない季節にいる
そしてまた、どかん

コートといえば、わたし小学生の頃、露出狂を見たことがあるの
まだ寒かったわ、下校途中にね
合唱部だったのよ、市のコンクールがちかくて、夜遅くまで練習して
街灯の下に男の人がいたの、おじさん、コートはねずみ色だったかな
いいえ、黒だったかも、いきなりそのコートをわっと開いて
何だったと思う?
菜の花だったの、一面の。一面の菜の花畑
きれいだなあ、って
でもきちんと見ることができなくて
その時初めて、男の人って卑怯だと思った
そう言いながら男のモノをティッシュで拭く手の温もりに、どかん

「裁判長!それは間違っている!」
「静粛に。傍聴人の発言は認められていません」
「あなたは何で人を裁く!人に人が裁けるのか!」
「人が裁くのではありません。法が裁くのです」
「その法をつくったのは誰だ!神か?人だろう!」
「そうです、人です。欠陥だらけの人です。人は欠陥だらけです。
だからこそ人は正しく生きなければなりません」
裁判長はニコリと微笑んで続ける
「耳に手をあててごらんなさい。春の電撃作戦はもう始まっているのですよ。
どかん」

春の電撃作戦。開始。
雪が再び空に帰る準備をしているころ
虫たちは複眼を覆うまぶたの一つ一つを開ける
花は花であることの意味を思い出し
その側から僕らは生まれていく、作戦を開始するために!
今朝、ベルトの穴を二つ間違えました。どかん
「希望」という字をかみ締めると歯ぐきから血のようなものが出ます。どかん
失いそうなものを備忘録に書き留めていく夕暮れは。どかん

どかん
そしてまた新しい恋をしよう、と誰かが言った


2004/04/09 (Fri)
肉体を支えるものが骨であるならば
空を支えている骨は人の想念である
人が空を想うかぎり空は空であり続け
けして空は空から落ちてくることはない
つまりそれは
人が人であり続けることと同じなのである
諸君!我々は自由だ!
自由のもと我々は人であるという選択をしたにすぎないのだ
さて、課題は掲示板に貼っておくので各自確認しておくように

そうして午後の講義は終わる
学生たちは皆、散り散りの風になり
どこかへ消えていった
広い春の野原にはもう誰もいない
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* ILLUSTRATION BY nyao *