プロフィール
HN:
たもつ
年齢:
58
性別:
男性
誕生日:
1967/06/05
自己紹介:
こっそりと詩を書く男の人
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いつの間にか眠ってしまったようだ
古い木の匂いがする机に伏したまま
部屋の中はもう夜に染まり
カーテンを少し開けると
差し込むのは
月や
街灯や
家々の灯火
そんなものたちが混合した明かりで
照らされた書きかけの手紙には
拝啓と一言
眠っている間夢を見ていたのだろうけれど
その逃げ行く尻尾を掴み損ね
微かにつけていった傷が痕跡として
手紙って出すことがないから
たぶん手紙というんだね
投函するのはいつも
一番上の引き出し
差し込む明かりを空のグラスに入れ
少し振ってみる
どんな音がするのか知りたくて
耳を近づける
古い木の匂いがする机に伏したまま
部屋の中はもう夜に染まり
カーテンを少し開けると
差し込むのは
月や
街灯や
家々の灯火
そんなものたちが混合した明かりで
照らされた書きかけの手紙には
拝啓と一言
眠っている間夢を見ていたのだろうけれど
その逃げ行く尻尾を掴み損ね
微かにつけていった傷が痕跡として
手紙って出すことがないから
たぶん手紙というんだね
投函するのはいつも
一番上の引き出し
差し込む明かりを空のグラスに入れ
少し振ってみる
どんな音がするのか知りたくて
耳を近づける


街を歩いていたら
赤いのと
白いのと
2本のアイスを食べながら
歩く青年がいました
よっぽどアイスが好きなんでしょう
早く食べておしまいなさいな
暖かな春の日差しは
アイスにだけは優しくないようですよ
赤いのと
白いのと
2本のアイスを食べながら
歩く青年がいました
よっぽどアイスが好きなんでしょう
早く食べておしまいなさいな
暖かな春の日差しは
アイスにだけは優しくないようですよ


「何のために生まれてきたのか」という命題は
大いなるロマンチシズムであり
その裏返しとしてそう簡単に答えが出るものではない
「何のために生きているのか」これもまた
ほぼ同義語であるといえるだろう
これを「何のために生きていくのか」とすると
それは甚だ現実的な問題となり
これなら自分でも数行の世界の中で展開できるのではないか
などと考えるのだが
今日も冬の木枯しの冷たさに
コートの襟を立て
(追記)
親愛なる友人Sへ
2点ほど御指摘をいただいたので
1点目として
「何のために生まれてきたのか」と
「何のために生きているのか」が同義語であるとするのは
いささか強引ではないか、とのことだが
確かにおっしゃるとおり
「何のために生まれてきたのか」という回答の中には
「生きるため」という選択肢も含まれるだろう
したがって「生きるために生きる」という回答をフェアとしないのであれば
選択肢が一つ多いわけだから同義であるとは言えないかもしれない
しかしながら「生まれるために生きる」という回答も必ずしも無いわけではない
とするならば選択肢の数は同じとならないか
2点目として
「何のために生きているのか」と
「何のために生きていくのか」こそ同義ではないかとのことだが
「金のために生きていく」ことは一つの姿勢として評価できるとしても
「金のために生きている」のはなんとも寂しいことと言えはしないか
親愛なる友人Sよ
きみのバーバリーのコートもかなりくたびれてきたようだ
買いかえるなら良い店を紹介する
大いなるロマンチシズムであり
その裏返しとしてそう簡単に答えが出るものではない
「何のために生きているのか」これもまた
ほぼ同義語であるといえるだろう
これを「何のために生きていくのか」とすると
それは甚だ現実的な問題となり
これなら自分でも数行の世界の中で展開できるのではないか
などと考えるのだが
今日も冬の木枯しの冷たさに
コートの襟を立て
(追記)
親愛なる友人Sへ
2点ほど御指摘をいただいたので
1点目として
「何のために生まれてきたのか」と
「何のために生きているのか」が同義語であるとするのは
いささか強引ではないか、とのことだが
確かにおっしゃるとおり
「何のために生まれてきたのか」という回答の中には
「生きるため」という選択肢も含まれるだろう
したがって「生きるために生きる」という回答をフェアとしないのであれば
選択肢が一つ多いわけだから同義であるとは言えないかもしれない
しかしながら「生まれるために生きる」という回答も必ずしも無いわけではない
とするならば選択肢の数は同じとならないか
2点目として
「何のために生きているのか」と
「何のために生きていくのか」こそ同義ではないかとのことだが
「金のために生きていく」ことは一つの姿勢として評価できるとしても
「金のために生きている」のはなんとも寂しいことと言えはしないか
親愛なる友人Sよ
きみのバーバリーのコートもかなりくたびれてきたようだ
買いかえるなら良い店を紹介する


砂浜に一人立ち
海面近くを低く飛ぶ一羽の渡り鳥を見ている
お前もはぐれてしまったんだな
そう呟く男の後ろ姿を
私は学生時代に一遍の詩にした
十数年ぶりにノートを開くと
男はまだ一人で海を見ていた
次の頁では
男のかつての恋人が二児の母となり
幸せに暮らしている
時として若さは残酷な結末を渇望し
そしてもう一枚めくった空白を
私はまだ埋めることができない
海面近くを低く飛ぶ一羽の渡り鳥を見ている
お前もはぐれてしまったんだな
そう呟く男の後ろ姿を
私は学生時代に一遍の詩にした
十数年ぶりにノートを開くと
男はまだ一人で海を見ていた
次の頁では
男のかつての恋人が二児の母となり
幸せに暮らしている
時として若さは残酷な結末を渇望し
そしてもう一枚めくった空白を
私はまだ埋めることができない


君達がつくり上げる新しい家庭に
幸多からんことを願う
平成7年10月19日
すなわち君が産まれた日にこれを記す
平成8年3月末日
実家より娘を連れて戻ってきた妻に
この手紙を手渡す
娘の結婚式の時に自分がいない場合は
これを開封するようにと
呆れ顔で妻は笑ったが
私はその時、大層まじめだった
幸多からんことを願う
平成7年10月19日
すなわち君が産まれた日にこれを記す
平成8年3月末日
実家より娘を連れて戻ってきた妻に
この手紙を手渡す
娘の結婚式の時に自分がいない場合は
これを開封するようにと
呆れ顔で妻は笑ったが
私はその時、大層まじめだった


坂道を駆け上り
息を切らしながら
丘の上の公園に立てば
眼下に広がる海
遠くに見える港からは
外国に向かう貨物船が一艘
出航したところだった
自分もいつかは一人で旅立つ日が来る
子供心ながらに感じた
漠然と
その日初めて
「お父さん」
「お母さん」
そう呼んだ唇の動きがもたらす
微かな不安に
息を切らしながら
丘の上の公園に立てば
眼下に広がる海
遠くに見える港からは
外国に向かう貨物船が一艘
出航したところだった
自分もいつかは一人で旅立つ日が来る
子供心ながらに感じた
漠然と
その日初めて
「お父さん」
「お母さん」
そう呼んだ唇の動きがもたらす
微かな不安に


呼ぶ
名を呼ぶ
おまえの名を呼ぶ
何回呼んだ おまえの名前
朝起きて呼ぶ
朝飯を食いながら呼ぶ
味噌汁の味付けが濃いと
出掛けに呼ぶ
電話で呼ぶ
風呂の中で呼ぶ
石鹸が無いと
寝る前に呼ぶ
喧嘩しても呼ぶ
呼ぶのはいつもおまえの名前
朝まで抱きしめながら
呼ぶ
名を呼ぶ
おまえの名を呼ぶ
これから何回呼ぶんだ おまえの名前
そして、呼ぶ おまえの名前
多分、最後に
名を呼ぶ
おまえの名を呼ぶ
何回呼んだ おまえの名前
朝起きて呼ぶ
朝飯を食いながら呼ぶ
味噌汁の味付けが濃いと
出掛けに呼ぶ
電話で呼ぶ
風呂の中で呼ぶ
石鹸が無いと
寝る前に呼ぶ
喧嘩しても呼ぶ
呼ぶのはいつもおまえの名前
朝まで抱きしめながら
呼ぶ
名を呼ぶ
おまえの名を呼ぶ
これから何回呼ぶんだ おまえの名前
そして、呼ぶ おまえの名前
多分、最後に


少年は空を想った
空のその青さを
その高さを
広さを
浮いている入道雲や
飛んでいる雲雀
吹いている風の秒速を
少年が想わないところに空は無く
少年が想うと空はいつもあるのだ
少年の右手には
若くして死んだ母の
形見のペンダントが握られている
空のその青さを
その高さを
広さを
浮いている入道雲や
飛んでいる雲雀
吹いている風の秒速を
少年が想わないところに空は無く
少年が想うと空はいつもあるのだ
少年の右手には
若くして死んだ母の
形見のペンダントが握られている


遥か西の国から旅を続けているマジシャンは
旅の途中で
マジックに使う鳩たちに逃げられてしまいました
それならば鳩を使わなければ良いのでしょうが
そのマジックは彼の最大の見せ場であり
鳩無くして公演は成立しないのです
公演が始まるまであと十分
マジシャンは方策を考えに考え
そしてついに
常人の想像もつかない方法で
鳩を舞台に出現させることに成功したのです
もちろんその方法については申し上げられません
何しろ彼はマジシャンですから
それはそれとして
新たなパートナーとなった鳩は全部で十羽
彼はその一羽一羽に宝石の名前をつけることにしました
ダイヤ
ルビー
エメラルド
サファイア
ガーネット
ムーンストーン
ペリドット
アメジスト
アクアマリン
ところが彼はそれ以上宝石の名前を知らないので
どうしても最後の一羽だけ名前が決まりません
考えた挙句、つけた名前は
コロク
目の下に小さなほくろのような模様がある鳩でした
こうしてマジシャンと十羽の鳩は旅を続けることになりました
ある日、突然コロクが震え始めました
コロクはマジシャンの手の中でぐったりとしています
看病の甲斐も無くコロクは翌日死んでしまいました
広い草原の真ん中にコロクの骸を埋めると
彼らは再び旅路につきました
ここはコロクが埋められた草原
コロクはゆっくりと土に返りました
その過程で胃袋に入っていた一粒の種子が発芽し
芽はぐんぐんと成長し
そして数十年の歳月を経て大きな木になったのです
その間マジシャンは旅先で土に返りました
訃報を聞いた彼の息子は父の遺志を継ぎ
今、マジシャンとして旅を続けています
夏の暑い日のこと
草原の中に一本だけ立っている木を見つけた彼は
その木陰で二時間昼寝をしました
それはコロクの木でした
彼の父はマジシャンとしてその生涯を閉じました
恐らくその息子である彼も
そしてコロクの木は生き続けるのです
旅の途中で
マジックに使う鳩たちに逃げられてしまいました
それならば鳩を使わなければ良いのでしょうが
そのマジックは彼の最大の見せ場であり
鳩無くして公演は成立しないのです
公演が始まるまであと十分
マジシャンは方策を考えに考え
そしてついに
常人の想像もつかない方法で
鳩を舞台に出現させることに成功したのです
もちろんその方法については申し上げられません
何しろ彼はマジシャンですから
それはそれとして
新たなパートナーとなった鳩は全部で十羽
彼はその一羽一羽に宝石の名前をつけることにしました
ダイヤ
ルビー
エメラルド
サファイア
ガーネット
ムーンストーン
ペリドット
アメジスト
アクアマリン
ところが彼はそれ以上宝石の名前を知らないので
どうしても最後の一羽だけ名前が決まりません
考えた挙句、つけた名前は
コロク
目の下に小さなほくろのような模様がある鳩でした
こうしてマジシャンと十羽の鳩は旅を続けることになりました
ある日、突然コロクが震え始めました
コロクはマジシャンの手の中でぐったりとしています
看病の甲斐も無くコロクは翌日死んでしまいました
広い草原の真ん中にコロクの骸を埋めると
彼らは再び旅路につきました
ここはコロクが埋められた草原
コロクはゆっくりと土に返りました
その過程で胃袋に入っていた一粒の種子が発芽し
芽はぐんぐんと成長し
そして数十年の歳月を経て大きな木になったのです
その間マジシャンは旅先で土に返りました
訃報を聞いた彼の息子は父の遺志を継ぎ
今、マジシャンとして旅を続けています
夏の暑い日のこと
草原の中に一本だけ立っている木を見つけた彼は
その木陰で二時間昼寝をしました
それはコロクの木でした
彼の父はマジシャンとしてその生涯を閉じました
恐らくその息子である彼も
そしてコロクの木は生き続けるのです